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第1セッション・第1講演「人工衛星から地球大気環境の変動を探る」

講演者(笹野泰弘)による回答
>>講演者発表資料


Q: 太陽掩蔽法について、もう少し詳しく説明してください。

A: Webサイト(http://www-ilas.nies.go.jp/DHF/Manual/ILAS_Manuals.euc.html)から、ILASセンサーや観測原理である太陽掩蔽法の概要についての説明が記載された「ILASプロジェクト報告」をダウンロードできますので、参考になさって下さい。


Q: オゾン層の数万年スケールでの変化はどこまで分かっていますか?
 
A: 分析する試料がありませんので、推測の域を出ていません。


Q: オゾンホールが極地域で発生するのは気流によるものなのでしょうか?(もし、そうであるとすれば、中緯度地域でも濃度の低下が見られるということはそれだけ事態が深刻であることを意味すると思いますが。)

A: オゾンホールの「発生原因」をお尋ねだとすると、気流によるというよりは、第一にはフロン等のオゾン層破壊物質の増大によるというのが、答えになります。なぜ「極地域」にオゾンホールが発生するのかというご質問だとすると、極地域の成層圏に極渦と呼ばれる寒冷な低気圧性の渦ができることが、オゾンホールの発生に密接に関係しているからだと言えます。中緯度でのオゾン濃度の減少は、極渦の発生とは直接の関係を持っているとは考えられていませんので、そのことが深刻な事態というわけではありません。しかし、中緯度成層圏でオゾン濃度の減少はこれまで実際に観測されており、その第一の要因として、やはりフロン等のオゾン層破壊物質濃度の増大が挙げられます。


Q: フロンの被害はなぜ極地に出現しやすいのですか?

A: オゾン破壊はなぜ極地に出現しやすいかというご質問だと思いますが、極地の成層圏では冬に寒冷な低気圧性の渦(極渦)が形成され、そこでは極成層圏雲(硝酸や水が凍った粒子)が発生し、オゾン破壊をもたらす元凶である塩素原子を放出しやすい塩素化合物がそれらの粒子の表面反応により蓄積する、という機構が働くからです。


Q: 極地方でのオゾン層破壊メカニズムは分かっていますが、中緯度地方でのオゾン層破壊のメカニズムは同じなのでしょうか? 別なら、どのようなメカニズムでしょうか?
 
A: オゾンの減少傾向をもたらすオゾン破壊メカニズムに関するご質問としますと、塩素化合物が関与する連鎖反応がオゾンを壊すという言う意味では、極域成層圏も中緯度域成層圏でも同じです。しかしながら、どんな連鎖反応が起こっているかと言う点では極域と中緯度では異なっています。極域では塩素化合物が中心的に活躍する連鎖反応が起こっているのに対し、中緯度では塩素化合物が水素系の化合物や窒素酸化物と協力し合う連鎖反応が進行しています。また、その塩素化合物がどのようなメカニズムで蓄積されるかという点では、極域では極成層圏雲(硝酸や水が凍った粒子)が中心的役割を果たすのに対し、中緯度域では成層圏エアロゾル(硫酸液滴)が関係すると考えられています。


Q: 対流圏での温暖化が進んだ場合、成層圏が冷え込んだ結果として、極域成層圏内での冷え込みがオゾン層破壊を助長するのでしょうか?(NHKブックス“オゾン層を守る”では温暖化はオゾン層破壊をくい止めると書いてあります。)また、水蒸気(成層圏での)増加は同様にオゾン層破壊にどのように影響するのでしょうか?

A: 温暖化ガス濃度の増加に伴い成層圏の冷却が予想されます。単に気温が下がるだけであれば、オゾン破壊を抑える方向に働きます。しかし、極域では極成層圏雲(硝酸や水が凍った粒子)の発生頻度が増大するなど、低温化はオゾン破壊を促進する方向に寄与すると考えられます。また、極域成層圏で水蒸気が増加すると、極域成層圏雲の生成を促す方向に働き、その発生頻度が増大するなど、オゾン破壊の促進に寄与すると考える研究者もいます。しかし、温暖化ガス濃度の増加に伴って成層圏で水蒸気が増加するかどうかは自明のことではなく、研究が進められています。


Q: なぜ南極にオゾンホールができるのでしょうか? 北半球にフロン排出国が集中しそうに思いますが、北極にまだオゾンが厚い理由は何でしょうか?

A: 地表面付近から放出されたフロン等の気体は、大気中を拡散・輸送され、成層圏にまで達します。成層圏に達するまでに年のオーダーの時間がかかり、そのころには多少の差はありますが、南北両半球にほぼ均一に分布します。それにも関わらず、南北両極域で成層圏オゾン濃度の減少傾向に差があるのは、オゾン破壊に大きく関与する極渦の発生状況やその動態が南北で異なるためです。特に南極上空の成層圏に形成される極渦は、北極上空のそれに比べて力学的に安定で、また低温になりやすいという特徴をもっているために、オゾンホールが発生しやすくなっています。


Q: 近年フロンは減少傾向にありますが、どうしてフロンは消滅したのでしょうか?

A: 「なぜ、大気中のフロンが減少しているのか」というご質問だと解釈しますと、国際的な取り決め(モントリオール議定書)に従って、各国がフロンの生産・使用を削減する努力を続けてきたからです。


Q: 日本でのフロン生産はゼロなのに対して、世界レベルではまだ生産が続いていると思われますが、なぜ世界レベルでゼロにできないのですか?

A: 国際的な取り決め(モントリオール議定書)に従って、先進国、発展途上国それぞれが段階的にフロンの生産・使用を削減することになっています。


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