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第2セッション・第2講演「人と環境にやさしい新世紀の交通・物流を考える」


講演者(森口祐一)による回答

>>講演者発表資料


Q: 運輸部門から燃焼起源のN2Oが出ているが、触媒、燃料等によって差が大きいことが報告されています。現状と将来予測の数字(世界地域別)はあるでしょうか?

A: 国立環境研究所自身では自動車からのN2O排出について、これまで実測を行っていませんが、他機関による報告では、触媒装着車のほうが、N2Oの排出量が多いとされています。また、触媒の劣化に伴う排出増加や、冷始動(コールドスタート)時の排出増加等も指摘されていますが、まだ実測例の蓄積が十分でない状況です。日本の温室効果ガス排出量の算定における推定法と現状値は、環境省ホームページに掲載された下記資料に掲載されています。日本以外の国でも、気候変動枠組条約に基づく報告の中で、現状値を推計している場合があります。
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/santeiho/13.pdf (要旨, PDF125KB)
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/santeiho/14.pdf (全文, PDF569KB)


Q: 利用者の少ない鉄道よりも、定員数乗った自動車の方が効率が良いイメージがあります。LCAの計算に当たっては、そうした運航効率をどのようにシミュレートしているのでしょうか?

A: 一般に、輸送人キロあたりのエネルギー消費量は、鉄道のほうが自動車より少ないとされていますが、ご指摘のとおり、これには定員に対する乗車率が大きく影響しており、人口密度が小さい地域など、鉄道輸送に適さない場合には、利用者の少ない鉄道よりも定員数乗った自動車のほうが効率がよい場合があります。講演で例示した路面電車と自動車とのLCAによる比較では、路面電車は全国平均の乗車人員、自動車は全国パーソントリップ調査による平日の平均乗車人員を設定して計算しています。


Q: 首都圏では公共交通システムがかなり発達していますが、地方、郡部が問題です。1家族に3台のマイカー所有をやめさせる、などの対策が必要ではないでしょうか?

A: 一つ前の質問への回答で述べたとおり、地方、郡部では、鉄道などの公共交通を整備しても利用者が見込めない場合が多く(すなわち環境面でも効率が悪い)、マイカーに頼らざるを得ない場合が多いのが現状です。複数、多数保有を制限するような制度(例えば2台目以降の保有税を重くする)の導入の合意は困難であると予想され、低燃費車、低排ガス車の税の軽減といった誘導策によって、1台あたりの環境負荷を下げることが現実的な対策だと考えます。また、マイカーに頼らざるをえないような、密度の低い宅地化についても、考え直していく必要があるのではないでしょうか。


Q: 講演の中でのグラフ(0・15モード燃費vs実用燃費)では、残念ながら水平のグラフ線が描かれていました。10・15モード燃費は概ね小さい車は良く、大きな車は悪いものとすると、このグラフは、カタログはともかく「現実には小さい車も大きい車も燃費はほぼ同じ」ことを示していると思います。一方、1990年をピークに燃費が落ちていることを示したグラフでは、3ナンバー車とRV等の大きい車が増えたため、と説明されていました。2つのグラフに矛盾があるのではないでしょうか?

A: 講演で示した10・15モード燃費vs実用燃費のグラフは、すべて2000ccオートマチック車についてのものです。時間が限られていたためお示しできませんでしたが、小型車と大型車とを同様に1枚のグラフにプロットすると、傾きは45度よりは小さいものの右上がりの相関がみられ、カタログでも実用でも、小型車が大型車よりも燃費がよい結果になります。すなわち、2000cc車では、カタログ燃費が良い車でも、そのサイズ相応の実用燃費にしかなっていない事実を指摘しようとしたものです。したがって、大きい車が増えたことが(仮にカタログ上はそれほど燃費が悪化していないとしても)最近の自家用車によるエネルギー消費が急増していることの大きな要因とする説明とは矛盾していないと考えます。


Q: 10・15モードのメーカーカタログ値とユーザーの実際値の乖離を指摘されていましたが、私もこの問題に非常な関心を持っています。できれば当データ及び関連データを教えていただきたい。

A:  講演時に用いた図はホームページに掲載されています。また、その元データは下記サイトのものを利用させていただきました。
http://auto.ascii24.com/auto24/e-nenpi/


Q: 合意形成を支援するために〜情報の活用〜の図をもう一度できれば見せて下さい。

A: 講演時に用いたスライドをホームページ上で公開していますのでご覧下さい。


Q: 道路特定財源の話もありましたが、研究官としては口が過ぎる面があったのではないでしょうか? 車単体が悪いのではなく、メーカーも努力しているのではないでしょうか? インフラ整備が重要で、小田急の初台の立体交差も道路特定財源からなされていることを承知の上での発言でしょうか?(インフラを中心とした総合対策が重要と考えます。ムダな道路を作ってはダメですが、渋滞対策の立体交差等、まだまだ必要です。)

A: 車単体についてのメーカーのご努力については十分理解しております。モード燃費と実用燃費の関係を敢えて提示したのは、メーカーの折角の技術力・努力を、カタログ上・現行試験法上の数値ではなく、真の環境改善により効果的に結びつけていただきたいとの思いからです。道路特定財源を鉄道との立体交差化などの事業に充てる(融資する)制度については存じ上げておりますが、欧州ではさらに、自動車関係税を自動車以外の交通網整備に充てることも行なわれていると聞いています。渋滞は確かに燃費の悪化、排ガスの増加にとって問題ですし、立体交差化等によってボトルネックを解消することで短期的には問題を改善しうる(とくに局地大気汚染対策としては有効)と考えますが、そのことが交通量の増大を招き、別の場所で新たなボトルネック・渋滞を生起する恐れがあることが交通工学の専門家からも指摘されています。英国など欧州諸国ではこのような悪循環の懸念から、インフラ整備よりも需要管理が重視される方向にあります。確かに我が国ではインフラ整備の遅れが環境悪化を招いているケースも依然としてあると考えますが、インフラ整備と同時に需要管理を行わなければ、悪循環の懸念は捨てられません。
 講演の最後にも触れたとおり、研究者はとかく実社会から距離をおきがちですが、こうした問題では、実社会を研究対象とせざるを得ません。研究者が実社会の問題に対してどこまで発言すべきかについては、さまざまなご意見があろうかと思いますが、もっと積極的に発言しろとのお叱りをうけることも多々あることをご理解下さい。むろん、科学的事実と、個人の意見とを混同することは慎むべきであり、この点については今回の講演でも留意したつもりですが、今後とも十分に注意するよう心がけたいと思います。


Q: 交通問題について、車に対する個人の好き嫌い、あるいは便利さなどのファクターが考慮されていないのではないでしょうか? (鉄道が良いのはわかっているが、実現の話となるとすぐ経済性から難しさが指摘されます。車社会のモラルと義務などの社会的側面も研究してほしいと思います。)

A: ご指摘のとおり、便利さ、快適さといった側面や、個人の選好は、異なる移動手段を比較する上で重要な点だと考えます。「社会的側面」についてはまだ緒についたばかりですが、少しずつ研究に取り組んでいきたいと考えています。


Q: 最近、モーダルシフトの必要性が言われています。国内のトラック輸送が減少すれば、都市や沿道の排ガスが減り、健康被害リスクは減るでしょうが、地球規模からみると、CO2の排出など、モーダルシフトの効果はどのくらいあるのでしょうか? 経済面では首都圏−北海道あるいは九州など長距離でないと効果がないといわれますが、環境面では首都圏−関西など中距離でもモーダルシフト効果はありますか? また、港湾周辺ではトラックが集まってくることにより、健康被害リスクはどの位高くなるのでしょう?

A: テクノスーパーライナーを想定したモーダルシフトについて詳細に研究していないため、正確にはお答えできませんが、ご質問の中で述べられた懸念は、少なくとも定性的には正しいと考えます。発着地の組み合わせ、要求されるスピード、ロットの大きさがある条件に適う場合には、効果が見込める場合もあると考えますが、条件に適合するような物流の需要がどの程度あるかは、慎重に見極める必要があると考えます。


Q: これから物流の環境改善活動に取り組む場合、指標となるものが必要となりますが、どのような指標(環境パフォーマンスデータ)がいいでしょうか?

A: 「効率」の指標としては、CO2/トンキロやNOx/トンキロといった指標が考えられますが、効率向上が輸送量の伸びに追いつかなければ、環境負荷の総量は増えてしまいますので、CO2やNOx の総量も見ていく必要があります。また、売上高や収益といった経営指標あたりの環境負荷量や、環境負荷削減のための投資額(低公害車の購入費など)、投資額あたりの負荷削減量といった指標も有効と考えます。環境パフォーマンス指標については、環境省からも資料が公表されていますので、ご参照ください。
http://www.env.go.jp/policy/report/h12-01/index.html


Q: アイドリングストップの効果(車の大きさ、ガソリン車かディーゼル車か、一般道の混み具合などを含めて差異も)を公表して欲しい。また外国との貿易に伴う物流の環境負荷についてもデータを示して欲しい。自由貿易は是でしょうか? (環境保全、資源保護、健康リスク低減などのために、まずアイドリングストップのようなすぐに実行できる取組みが大切だと思います。それらを広めつつ、グローバルな施策を採ることが考えられなければならないように思います。)

A: アイドリングストップの効果については、これまで当研究所自身では独自の測定は行っていませんが、今年度から車載型計測機器を利用した研究に着手する予定であり、その一環としてデータが得られれば公表したいと考えています。燃料消費削減(CO2削減)については、短い時間でも効果があるが、大気汚染物質削減については、始動時の過剰排出のために、ある時間以上停止しないと、効果が相殺される場合があるという報告があります。外国との貿易に伴う物流の環境負荷については、ごく一部ですが、事例研究を発表しています。(森口・近藤:資源輸入に伴う環境負荷の定量化と負荷の配分方法がLCIに与える影響の分析、日本エネルギー学会誌、77(11)、1062-1069(1998)) 貿易と環境問題との関係は複雑であり、一言で自由貿易の是非を論じることは困難ですが、物流による環境負荷だけでなく、自由貿易による環境悪化を懸念する声があることは事実だと考えます。こうした問題を考えるための資料として、貿易による日本と世界各地域との物流データを納めたデータブックを刊行していますので、ご興味があればご請求ください。
http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/d022/mateflow.html


Q: 航空機から出るCO2量について知りたいと思います。年間1千万人以上の海外旅行で発生するCO2量はどのくらいですか?

A: 国際航空、国際海運で消費される燃料から生じるCO2について、どこの国に帰属させるかの国際ルールが決まっていないため、正確な数字の把握がやや困難ですが、概数として、日本発着の国際航空機が発着地との間の飛行中に排出するCO2量は、日本の全CO2排出量の数%と見積もっています。世界全体では、航空機の排ガスによる温室効果への影響は、人為的な温室効果の3.5%(1992年時点)であることが、IPCCの「航空と大気に関する特別報告書」で報告されています。


Q: 「排ガスのリサイクル」のアイデアはいかがでしょうか? (CO2は簡単にメタノールになります。)

A: 排ガスからCO2を分離し、水素を添加してメタノールを製造するプロセスなどが提案されており、CO2からメタノールを製造することは確かに技術的には可能です。しかし、水素はどうやって作るのでしょうか? この水素を得るために、またエネルギー資源を消費し、CO2を出したのでは元の木阿弥です。こうしたプロセスが温暖化対策として意味をもつかどうかは、系に出入りする物質とエネルギーの収支全体を見て評価しなければなりません。廃棄物問題にもあてはまることですが、「リサイクル」よりも「発生抑制」のほうを優先させる、つまりなるべく「元を断つ」方法を考えることが、対策の基本的な姿勢だと考えます。


Q: エネルギー多消費型の自動車から、環境配慮型の公共交通機関の利用を促進するための具体的方法論は、どのようなものを検討されていますか? (ドイツなどでは運賃を安く抑えてうまくやっているようですが、今の日本では、自家用車を利用する際のコストよりも公共交通機関の運賃が高くなってしまう(特に別社路線を乗り継ぐ場合)状況で、環境に配慮した人が報われないために、実現には障壁があるように思われます。)

A: ご指摘のとおりです。自家用車の利用コストは、車両の購入費、保険料、取得・保有の税、整備・車検などの経費を加味すれば決して安いものではないのですが、これら「乗っても乗らなくてもかかる経費」が、燃料費など「乗った分に比例してかかる経費」と比較して相対的に高いため、保有している車は「たくさん乗ったほうが得」という状況が生まれています。欧州で広く普及しつつあるカーシェアリング(自動車の共同利用)は、「乗った分に比例してかかる経費」が相対的に大きく、利用者の総走行台キロが約半分に減少したとの事例が報告されていることから、自家用車の適正利用に役立つ手段であると考えられます。交通機関の選択に限らず、環境負荷の高いものに税を課し、その税収を環境負荷の低いものの利用・普及促進にあてる目的税型の環境税が「環境に配慮した人が報われる」ための有効な手段と考えられますが、導入のための社会的合意が得られていないのが現状です。自家用車の利用を前提とした商業開発や住宅開発がその背景にあることが指摘されていることから、都市計画面での対策についても検討しています。また、ご質問のように、ドイツでは、異なる事業主体による公共交通機関間の共通運賃制度が導入されており、運賃制度の柔軟性を高めることによる利用促進効果についても、今後の研究の中で考えてみたいと思います。


Q: 乗用車の燃費が悪くなっていることを車の大型化で説明していたが、それ以上に車の使い方、一台あたりの乗車人数、渋滞の方が大きな要因ではないでしょうか?

A: 一台あたりの乗車人数は人キロあたりの燃費には影響しますし、1台あたりの乗車人数を増やすことは確かに重要ですが、最近の情勢では台キロあたりでみても燃費は悪化しています。また、渋滞も燃費悪化の重要な要因ですが、同じ道路を共有しているはずの貨物車の燃料消費量はそれほど増加しておらず、乗用車のみがこれほど大きな燃料消費増を示していることと辻褄があいません。渋滞の少ない地方部でも燃料消費量が増加していることからみても、大型化が主因であることは否定できないと考えます。


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