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第1セッション・第2講演「広大な海洋環境をいかに把握するか」


講演者(功刀正行)による回答
>>講演者発表資料

Q: 固相吸着剤(ポリウレタンフォーム)に関して、その選択の妥当性、検出限界、精度、採水位置を教えてください。

A: 固相吸着剤として、ポリウレタンフォーム、イオン交換樹脂、エムポアフィルターを検討し、回収率、取り扱い易さ、コストを考慮し、ポリウレタンフォームを選択しました。回収率は、本カラム濃縮システムの場合、各物質で95%前後です。実際には、様々な要因がありますので、若干低下する場合もあると思われますが、その場合でも90%以上の回収率であると考えています。検出限界は、1pg/Lです。観測結果が検出限界の10倍、すなわち10pg/L以下の場合は議論の対象にしていません。
モデル実験およびシミュレーションの結果、舳先の表層海水がこの位置まで回り込んで来ています。従いまして、波や走行による乱流により、表層から数mまでの海水がある程度混合した形で採水されていると考えられます。夏場風が非常に弱い場合には鉛直混合が起きにくく、水深による濃度差が考えられますが、数千トンの船が走行状態での採水は上記の結果からも、その観測区間をある程度代表していると考えています。


Q: 海洋における化学物質の長距離移動について教えてください。底質中に存在する化学物質、降雨に由来する化学物質、またそれらの分解性についても教えてください。

A: 瀬戸内海における底質中の有害化学物質は、環境省の化学物質調査(報告書:化学物質と環境)で毎年調査が実施されています。HCHsの内、α体およびγ体は、すでにかなり前から(1980年代末)検出限界以下となっています。一方、β体は減少しつつありますがまだ検出されています。
 北極圏の大気からもHCHsが検出されていますが、β体は検出されていません。これは蒸気圧が低く大気中に少ないこと、また欧米ではγ体のみが使用されたことが原因と思われます。しかしながら、データがとても少ない状況で詳細な動態はわかりません。今後実施予定の私たちの観測を期待しています。
 海洋上降雨と陸上降雨の河川から海洋への負荷を分離することは不可能です。ただし、土壌からの寄与は、土壌中の残存量を調べることであるていど把握できます。我が国の土壌からも微量のHCHが検出されますが、これは日本国内で使用されたものの残存ではないと考えています。既に、使用禁止から20年以上経過しており、α体およびγ体は揮散や分解し、β体の多くは分解されたり、洗い流されていると考えています。


Q: BHCの環境ホルモン作用について教えてください。また、観測項目としてBHCを選定した理由も教えてください。

A: β-, γ-HCHは内分泌攪乱作用が疑われています。
 観測対象物質は、過去および現在の使用状況と検出の可能性を考慮し決めました。化学物質の種類は膨大であり、その全てを対象とすることは現実的でありません。従って、当面はこれらの観測結果から、性質が類似している物質は似通った挙動をしているとの判断などが妥当ではないかと考えています。
 海水中(沖合から外洋)のPCBおよびダイオキシンはきわめて低濃度と予想されます。現在、50〜100Lの海水中から濃縮捕集していますが、ダイオキシン類を観測するためには、この10〜100倍の海水を処理する必要があり、現在の観測装置では対応できません。大量の海水を高速で処理する必要があり、得られる結果とコストを考えると現実的ではないと判断しました。しかし、観測船などによる調査によりデータの数は少なくても対応する必要があると考えます(他の研究機関、大学などで検討や研究を実施しています)。
 私どもが全ての海洋と全ての物質を対象にする事はできませんので、内外の研究機関、大学などと連携して対応することが必要と考えます。


Q: 家庭排水による閉鎖海域・内湾などの汚染実態は調査していますか?

A: 今回発表しました研究は、地球環境研究グループで地球規模の海洋汚染の動態を把握することを目的に開始しました。閉鎖系海域、内湾などにおける海洋汚染は、他の研究グループが対応しております。国立環境研究所パンフレットおよび公開シンポジウム要旨集の研究者一覧をご参考にしていただければと思います。


Q: 今後の研究の予定を教えてください。また、それらの調査データの配布は予定していますか?

A: 現在、発表しました研究を論文にまとめていますので、完成次第、ご提供可能です。ご請求ください。
 新たな外洋観測として、日本−オーストラリア間に就航しています石炭運搬船などで本年度末から観測開始予定です。これらの船舶は、30〜40日で日本と各ポートを往復しています。観測頻度は、当面年2〜4回程度を予定していますが、センサーなどを利用した連続観測も可能な限り実施したいと考えています。
 外洋のデータは非常に少ないので、どの程度のデータが集まれば海洋汚染の実態把握と解析が可能か判断できないところがありますが、当面5,6年をひとつの目処としています。


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