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夜の地球表面に描かれた
アジア地域の経済活動

地球環境研究センター

1. はじめに

 途上国アジアにおいては地域別各種統計データの整備が遅れている。とりわけ開発の進行に伴う都市環境の悪化など、その時系列変化を追いかけられるデータは皆無に近い。また、既存の統計資料には信憑性のないものも多い。このような事情に鑑み、場所を問わずアジア(あるいは世界)の各都市に適用可能な都市の発展段階の定量化手法の開発を目指している。リモートセンシングから得られる情報をGIS上で行政界単位に集計し、既存統計資料の代替とする手法である。

2. DMSP/OLS

 米国の軍事気象衛星により撮影された夜の地球表面の光強度画像データ(DMSP/OLS: Defensive Meteorological Satellite Program / Operational Linescan System)は、東西冷戦後の軍事技術の民需転用の流れの中、ナショナルジオグラフィックマガジン等で紹介され、その存在が有吊になりつつある。このデータは既に都市域の拡大、人口、エネルギー消費量の推定に用いられてきた。このデータは、夜間における可視〜近赤外領域の弱い放射(VNIR; 0.4-1.1μm)を、30秒の解像度でカバーしている。ここで捉えられる放射は、月光を反射する雲、都市や工業地帯の照明、ガス田の炎、山火事、雷光を反射する雲などである。
 本研究では、経済活動の活発な地域ほど夜間の光強度が強いとの仮定のもとに、光強度とマクロ経済指標との整合性を検証した。アジアの20ヶ国を対象とした解析の結果、両者の関係は対数曲線で表現された。この関係を用いれば地域別経済統計データの有無にかかわらず、シームレスに地球表面上の経済活動の分布を捉えることが可能であると思われる。

3. DMSPデータの時系列解析

 現在各方面で引用されているDMSPデータは、1994年中旬〜1995年中旬に撮影された256シーンのうち、光が存在したところと存在しなかったところをパーセンテージで示したもの(256シーンすべてに光が撮影されていた場合は100)のみである。このデータを時系列データとして入手することが可能となれば、経済活動強度分布の時系列変化を捉えることができるのではないかという仮説にもとづき、世界に先駆けて、アジア地域における3時点(1992〜1993,1996,1998)のデータセットを構築した。その結果、アジア通貨危機(1997)の影響や、インド・パキスタン国境の緊張度、日本海における漁船の分布の変化等が確認され、DMSPデータ時系列解析の有用性が示された。
図1 アジア地域における
陸上の夜間光強度分布(1992-93年)
図2 アジア地域における
陸上の夜間光強度分布(1996年)
図3 アジア地域における
陸上の夜間光強度分布(1998年)

バンコクに見る1997年経済危機の影響

 1992-93年から1996年にかけて弱い光強度、つまり開発途上にあったとみられる地域の多くでは、1998年にはその光が見られなくなっている。1993年から1996年にかけて光強度・面積とも明らかに増加しているが、その増加した地域で光強度の減少が著しく見られる。もともと市街地であった地域の光量の変化は小さい。つまり、近年になって開発された地域が、経済危機の影響を強く受けたものと推定される。
図4 タイの吊目GDP
(1996年から1997、1998年にかけて落ち込んでいる。)
図5 アジア地域における3時点の変化
図6 バンコク周辺における夜間光強度分布(1992-93年) 図7 バンコク周辺における夜間光強度分布(1996年) 図8 バンコク周辺における夜間光強度分布(1998年)
※なお本研究は、京都大学農学部、立命館大学文学部、東京大学生産技術研究所、NOAA(米国海洋大気庁)との共同研究である。
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