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遺伝子組み換え酵母を用いて
内分泌かく乱物質を探る

環境ホルモン・ダイオキシン研究プロジェクト 計測・生物検定・動態研究チーム

 内分泌かく乱物質(環境ホルモン)は生体内に入ると細胞内のホルモン受容体と結合することにより、二つの相反する作用をすることが知られています。一つは体内ホルモンと同じように、結合すると細胞を活性化するように指令をだすアゴニスト作用です。もう一つは受容体に先に結合することにより、体内ホルモンが結合することを妨げて、細胞の活性を抑えるアンタゴニスト作用です。私たちは、女性ホルモンや男性ホルモンなどのホルモン受容体遺伝子を組み込んだ酵母を用いて、ホルモン受容体と結合することによりアゴニスト作用やアンタゴニスト作用を示す内分泌かく乱化学物質を探す研究を行っています。

酵母アッセイで調べることのできるホルモン作用

酵母に酵母Two-Hybrid 法を用いてホルモン受容体を組み込み、化学物質や環境試料中の
(1)女性ホルモン(エストロゲン)作用
(2)男性ホルモン(アンドロゲン)作用
(3)甲状腺ホルモン作用
を測定できる酵母アッセイ系を開発しています。
*エストロゲン活性を示す内分泌かく乱物質が注目されており、化学物質のスクリーニングや環境試料のモニタリングを優先して試みております。

酵母による内分泌かく乱物質の検出のしくみ

(1) 遺伝子組み換え酵母を培養して増やします。

(2) 環境ホルモンの入った培地に酵母を加えて4時間培養します。

(3) 環境ホルモンは酵母の細胞壁を通ってホルモン受容体に結合します。

(4) 受容体に結合した情報は共役因子を介してレポーター遺伝子に伝わります。

(5) 活性化されたレポーター遺伝子はβ−ガラクトシダーゼを作るように指令を出します。

(6) 作られたβ−ガラクトシダーゼを測定することで内分泌かく乱物質のアゴニスト活性を検出します。

アゴニスト作用とアンタゴニスト作用

ホルモンとそれらが結合する受容体は鍵と鍵穴の関係にたとえられます。鍵が鍵穴に差し込まれただけでは鍵は開きません。同じようにホルモンが受容体に接触・結合しただけでは、細胞内でタンパク質が合成されることはありません。鍵を回すことで開けるというような操作のように、化学物質が受容体に十分に結合し情報が次の遺伝子に送られることでタンパク質の合成が始まります。
 化学物質が受容体に結合し、タンパク質を合成させる作用をアゴニスト(Agonist)作用といいます。体内ホルモンの多くは強烈なアゴニスト作用を持つと言えます。一方、化学物質が受容体に接触あるいは結合して、鍵穴をふさぎ、正常な働きをする体内ホルモンの活性を妨げる作用をアンタゴニスト(Antagonist)作用といいます。乳ガンの抗ガン剤であるタモキシフェンは女性ホルモン(エストロゲン)のアンタゴニスト陽性対照物質として知られています。

-S9 test と +S9 test

 生体内に取り込まれた化学物質の多くは肝臓で代謝されて、活性化されたり、不活化(解毒)されたりします。その役割をしているのが薬物代謝酵素といわれる酵素です。薬物代謝酵素は肝臓をすりつぶした後、9,000gという遠心力で遠心した上清に含まれることから、その上清液をS9と呼んでいます。
 化学物質をS9で処理(37℃、1時間)して酵母アッセイ試験で行うことを +S9 test と言います。化学物質が生体内で代謝された場合を想定した実験と言えます。一方、化学物質をそのままで酵母アッセイ試験で行うことを -S9 test と言います。化学物質が生体内で代謝されない場合、あるいは代謝機能が弱い幼弱な動物を想定した実験と言えます。

スチレン・ダイマーのエストロゲン活性

エストロゲン活性試験(説明)
 ポリスチレン製品から溶出し、環境ホルモン作用が危惧されているスチレン・ダイマーについて、酵母アッセイ法によりエストロゲン活性を調べた例です。
 右のグラフはアゴニスト試験で、ブランク値の10倍の活性を示す濃度(ECx10)は -S9test では18,000nM 、+S9 test では11,000nMでした。代謝により活性が強まりことを示しています。左のグラフはアンタゴニスト試験で、-S9 test では活性は認められませんが、+S9 test では競合させたエストラジオール(女性ホルモン)のアゴニスト活性を50%抑制する濃度(EC50)は 550nMでした。この濃度は、抗ガン剤でエストロゲン・アンタゴニストとして知られているタモキシフェンの740nMと同程度でした。
 環境ホルモン作用の検出はアゴニスト作用、アンタゴニスト作用について-S9 test 、+S9 test の両面から検討する必要が示唆されました。

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