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2016年7月7日

道路沿いの遺伝子組換えナタネの分布調査
—生き残りに道路の排水管理が関与?—

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付)

平成28年7月7日(木)
国立研究開発法人国立環境研究所
 生物・生態系環境研究センター
 環境ゲノム科学研究推進室 室長
 中嶋 信美

 国立環境研究所は国道23号線沿いの除草剤耐性遺伝子組換えセイヨウナタネ(GMセイヨウナタネ)の分布について3年間にわたり詳細な調査をおこないました。その結果、(1)国道23号線沿いに生育しているセイヨウナタネのうち75~78%がGMセイヨウナタネであること、(2)詰まった排水枡の数が多い年はセイヨウナタネの数が増加していることを明らかにしました。
 本研究成果は、日本時間2016年6月28日付けで、学術誌「GM Crops & Foods」のオンライン版に掲載されました。
 

1.背景

 セイヨウナタネは発芽可能な種子の状態で毎年200万t以上日本へ輸入されていますが、その約80%程度は、除草剤耐性遺伝子組換え(GM)セイヨウナタネであると推定されています1,2)。これまでの農水省、環境省、国立環境研究所の調査により、セイヨウナタネ種子陸揚げ港周辺および輸送道路沿いに、こぼれ落ちたとみられるGMセイヨウナタネが生育していることが確認されています3-7)。これらが急速に分布を拡大して、在来種の生育場所を奪うなどの影響を与えることが懸念されています。国立環境研究所ではGMセイヨウナタネの生育が確認されていた、国道51号線と国道23号線について長期的な調査をおこなっており、国道51号線についてはGMセイヨウナタネも含めた、セイヨウナタネの個体数が減少していることを以前に報告しました5)。このたびの論文では、国道23号線のGMセイヨウナタネも含めた、セイヨウナタネの個体数の増減とその原因について調査した結果を報告しました。

2.方法

 三重県四日市港から松阪方面へセイヨウナタネ種子を輸送する主なルートである国道23号線沿いに5カ所(北から塩浜大橋、鈴鹿大橋、白子、豊津上野、雲出大橋)の1~2kmの調査区を設定しました。2009年10月から2013年1月まで1ヶ月に1~2回の割合で道路沿いに生育しているセイヨウナタネの個体数を、下り車線(四日市から松阪へ向かう車線)と上り車線(松阪から四日市へ向かう車線)に分けて計数しました。また、個体数が最大となる時期に、すべての個体から葉の一部を切り取って研究所へ持ち帰り、除草剤耐性タンパク質の有無を免疫クロマトグラフ試験紙により調べました。さらに、除草剤耐性タンパク質が検出された個体からDNAを精製し、除草剤耐性遺伝子の有無をPCR法により増幅して確認しました。

図1 国道23号線と調査区の位置
図1 国道23号線と調査区の位置四日市港から陸揚げされたナタネ種子は国道23号線を通って松阪方面へ輸送される。

3.主な成果

国道23号線沿いのセイヨウナタネ個体数の変動

 セイヨウナタネの個体数は3月下旬から5月上旬にかけて急速に増加し、6月に入ると除草作業や道路清掃などの人為的な影響で激減し、翌年の3月頃から回復するというサイクルを繰り返していました。
 上り車線と下り車線の個体数を比較したところ、北側の4調査区では常に下り車線側の個体数が多く、一方で、最も南側の調査区(雲出大橋)では逆の傾向がみられました。また、雲出大橋では他の調査区の約10倍の個体数のセイヨウナタネが生育していました。

国道23号線沿いのGMセイヨウナタネの割合

 採取した葉を用いて、GMセイヨウナタネの割合を調べたところ、全体の75~78%がGMセイヨウナタネでした。その内訳は、グリホサート耐性ナタネが30~36%、38~48%がグルホシネート耐性ナタネ、両剤耐性のナタネも1~2%みつかりました。国内に輸入されているセイヨウナタネの80%程度がGMセイヨウナタネであると推定されていることから、この値は推定値と良く一致しており、生育していたセイヨウナタネの多くが陸揚げ港からの輸送途中でこぼれ落ちた輸入種子に由来すると考えられました。

雲出における排水枡管理とセイヨウナタネ個体数の関係

 雲出大橋の調査区には泥が堆積して詰まった排水枡があり、その中にセイヨウナタネの実生が多数生育していました。また、詰まった排水枡の数は上り車線側で多くみつかりました。詰まった排水枡の数とセイヨウナタネ個体数を調査した結果、詰まった排水枡の数の変動と、セイヨウナタネの個体数の変動のパターンが同調していました。上り車線側の排水枡が清掃されると、他の4調査区と同様に、下り車線側で個体数が増加していました。以上のことから、詰まった排水枡がこぼれ落ちたセイヨウナタネ種子の生育を助長していると考えられました。

図2 詰まった排水枡の数とセイヨウナタネ個体数との関係
図3 排水枡に生育するセイヨウナタネ

4. まとめ

 国道51号線沿いにおける先行研究では、道路清掃や除草作業、道路の補修などが道路沿いのセイヨウナタネの個体数を減少させる大きな要因であることを示しました。本研究では、GMセイヨウナタネが多数生育している国道23号線について3年間の集中調査をおこなった結果、道路の排水枡管理がセイヨウナタネの個体数に影響を与えている可能性を示しました。

5.課題と展望

 国道23号線のセイヨウナタネの個体数調査は2013年度以降も継続しています。2014年度までは減少傾向が続き、個体数が大幅に減少しましたが、2015年度に急激な個体数の回復が見られました。今後も調査を継続して10年程度の長期的動向を把握し、陸揚げ港からの輸送途中でこぼれ落ちたセイヨウナタネが一般環境でどのような消長をたどるのかを明らかにしたいと考えています。

6.問い合わせ先

国立研究開発法人 国立環境研究所 
生物・生態系環境研究センター 環境ゲノム科学研究推進室長
 中嶋信美(なかじま のぶよし)
 電話:029-850-2490
 e-mail: naka-320(末尾に@nies.go.jpをつけてください)

7.発表論文

Toru Nishizawa, Nobuyoshi Nakajima, Masanori Tamaoki, Mitsuko Aono, Akihiro Kubo & Hikaru Saji
Fixed-route monitoring and a comparative study of the occurrence of herbicide-resistant oilseed rape (Brassica napus L.) along a Japanese roadside. GM Crops & Foods 7(1) (ID: 1138196 DOI:10.1080/21645698.2016.1138196)

8:参考文献

  • 2) Canola Council of Canada. Estimated percentage of HT and conventional canola.
    Canola Council of Canada, Winnipeg, Manitoba, Canada 2014
    http://www.canolacouncil.org/
  • 3) Saji H, Nakajima N, Aono M, Tamaoki M, Kubo A, Wakiyama S, Hatase Y, Nagatsu M.
    Monitoring the escape of transgenic oilseed rape around Japanese ports and roadsides. Environ Biosafety Res 2005; 4:217-222.
  • 4) Aono M, Wakiyama S, Nagatsu M, Nakajima N, Tamaoki M, Kubo A, Saji H. Detection of feral transgenic oilseed rape with multiple-herbicide resistance in Japan. Environ Biosafety Res 2006; 5:77-87.
  • 5) Nishizawa T, Nakajima N, Aono M, Tamaoki M, Kubo A, Saji H. Monitoring the occurrence of genetically modified oilseed rape growing along a Japanese roadside: 3-year observations. Environ Biosafety Res 2009; 8:33-44.
  • 6) Nishizawa T, Tamaoki M, Aono M, Kubo A, Saji H, Nakajima N.
    Rapeseed species and environmental concerns related to loss of seeds of genetically modified oilseed rape in Japan. GM Crops 2010; 1:1-14.
  • 7) Aono M, Wakiyama S, Nagatsu M, Kaneko Y, Nishizawa T, Nakajima N, Tamaoki, M, Kubo A, Saji H.
    Seeds of a possible natural hybrid between herbicide-resistant Brassica napus and Brassica rapa detected on a riverbank in Japan. GM Crops 14 2011; 2:201-210.

9.共同研究者

国立研究開発法人国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター
 青野光子(主任研究員)、玉置雅紀(主任研究員)、佐治 光(室長)、久保明弘(主任研究員)

国立大学法人福井大学 教育地域科学部
 西沢 徹(准教授)

10.研究助成

 この研究は国立環境研究所の交付金による研究(平成21~平成26年度奨励研究)「遺伝子組換えセイヨウアブラナのこぼれ落ちおよび拡散に関するモニタリング」によって実施されました。