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MRI画像解析と同位体解析による栄養塩や温室効果ガスの底泥からのフラックス予測(平成 26年度)
Flux estimation from sediment in nutrients and global warming gas by MRI and stable isotope analysis

予算区分
AO 分野横断
研究課題コード
1214AO002
開始/終了年度
2012~2014年
キーワード(日本語)
酸化還元境界,MRI画像解析,CT画像解析,同位体解析
キーワード(英語)
redox boundary, MRI scan, CT scan, stable isotope analysis

研究概要

背景・目的:近年の指定湖沼の水質モニタリング結果は、流域からの流入負荷が減ったにもかかわらず、COD、TN、TPといった湖沼環境基準の達成率が一向に改善されない現状を示している。その理由としては長期間にわたり有機物の堆積した底泥表層が嫌気的になることでリン酸イオンやアンモニウムイオンといった栄養塩類が底泥から放出され、藻類の異常繁殖が繰り返されるためと言われている。こうした湖沼の水質の現状を踏まえ、新たな環境基準として底泥直上1mの溶存酸素濃度が導入されようとしている。底泥表層では有機物の分解が活発で、大量の酸素が消費されている。また底泥表層付近に蓄積しやすいメタンや硫化水素といった還元性ガスは底泥表層で酸化される際に多量の酸素を消費する。底泥が嫌気的になるとメタンやN2Oといった温室効果ガスが放出される。栄養塩や温室効果ガスの底泥からの放出を抑えるためには底泥表層を酸化的に維持することが重要であるが、その効果的・持続的な施策方法は未だ見つかっていない。
 栄養塩や温室効果ガスの底泥からの放出をコントロールしていると考えられる酸化還元境界層の深さ(RBD: Redox Boundary Depth)の推定はある程度測定可能であるが、何によってそれが決定されるかは底泥表層の物理構造の把握が困難であり、RBDに影響する環境因子が多様であることから仮説の域にとどまっていた。本申請研究ではこうした底泥研究にとって大きなブレークスルーとなる2つの達成目標を掲げることで、精度の高い底泥からの栄養塩や温室効果ガスのフラックス予測に結び付けたいと考える。
 達成目標:有機質主体の物理構造を明瞭に描き出すことのできるMRI画像解析は水のシグナルを非破壊で検出でき、水で満たされた底生動物の巣穴とガス泡といった空隙を区別することが可能である。そこで、達成目標の(1)として、底泥をより酸化的にする底生動物の巣穴の分布様式と還元性ガスで満たされていると考えられるガス泡の分布様式をMRI画像解析によって明らかにする。ただし、この達成目標だけでは底泥の酸素消費やRBDの決定プロセスとして重要なメタン酸化や硫黄酸化、硝化活性や有機物の分解活性などとの関係を明らかにすることができない。そこで達成目標(2)としては、酸化還元境界での生物地球化学反応に伴う同位体分別現象を利用することで、どの深さでRBDと関連する生物地球化学反応の活性が高いか底泥間隙のガスの同位体組成から明らかにする。さらに底泥から抽出したDNA解析によりこうした反応プロセスを担う微生物群の有無の確認と酵素活性解析による有機物分解の活性把握を同時に行い、底泥の酸素消費に関わる生物学的側面も解析する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

全体計画:栄養塩や温室効果ガスの底泥からの放出を抑えるための酸化的底泥表層がどのような条件で実現されるかは解明されていない。その理由としてはRBDの決定因子である底泥表層の物理構造の把握が困難であることが挙げられる。そこで、本申請研究で先に掲げた2つの達成目標を底泥の酸素消費に影響する各種環境条件を人為的に変化させた操作実験(サブテーマ1)と酸素環境の多様な湖沼での底泥コア(サブテーマ2)を対象に実施することで底泥表層の酸化的環境を持続的に維持していく条件を明らかにする。
 サブテーマ1(プロセス研究的視点)の計画:底泥の嫌気化を引き起こす環境条件としては、(1)易分解性有機物の底泥表層への堆積、(2)底生生物による生物撹乱の減少、(3)泥温の上昇、(4)波浪による底泥直上の撹乱の減少、などがあると考えられるが、それぞれがRBDに与える影響の強さおよび複数の環境条件が重なった時のRBDの反応などはほとんど分かっていない。そこで、霞ヶ浦湖心の底泥コアに、5種類の人為的操作(アオコ付加、ベントス付加、泥温上昇、底泥直上水の攪拌、底泥表層の削除)を単独もしくは組み合わせて与え、MRI画像解析と同位体・DNA・酵素活性解析から操作前後での底泥の物理・化学・生物構造の変化を明らかする。
 サブテーマ2(マクロ的視点)の計画:国内各地に点在する多様な自然湖沼やダム湖を対象に底泥コアの採取を行い、RBDが大きく異なる多様な底泥コアを対象にMRI画像解析と同位体・DNA・酵素活性解析を行う。

今年度の研究概要

霞ヶ浦湖心の底泥コアを使ってのCTおよびMRI画像解析の測定及び撮影条件の最適化を行い、高解像度の3D画像を構築する段階は終了した。今後は得られた画像からガス泡やベントスの巣穴構造を抽出するための画像処理を進め、ガス泡や巣穴密度の深度プロファイルの情報を蓄積する。
 また、泥温を変化させた操作実験に加え、ユスリカを加えることで巣穴密度を操作した実験などの結果を整理し、泥温や巣穴密度が底泥の酸化還元環境に与える影響評価を行う。
 霞ヶ浦を中心に一年目と二年目で蓄積されたガス泡や巣穴密度の深度プロファイルの情報とガス泡中のメタンや炭酸ガスの炭素安定同位体比、各深度ごとの間隙水の水質、酸化還元電位、DNA・酵素活性の解析結果を合わせて解析する。
 ベントスの巣穴やガス泡といった底泥表層の物理構造が底泥の酸化還元状態を規定し、それが底泥からの栄養塩の溶出フラックスをどのように決めているかを詳細に明らかにし、研究成果としてまとめあげる。

関連する研究課題

課題代表者

高津 文人

  • 地域環境研究センター
    湖沼・河川環境研究室
  • 室長
  • 理学博士
  • 生物学,農学,林学
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担当者