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ホームページを使った身近な環境情報の提供 −UVインデックスと熱中症予防情報−

【研究ノート】

小野 雅司

【はじめに】

ホームページ(HP)は現在では重要な広報ツールとなっています。国立環境研究所でも,研究所・研究成果の紹介を始め,幅広く利用されています。その中には,様々な環境情報の提供も含まれており,観測結果がリアルタイムで提供されているものもあります。代表的なものとして,昨年度まで国立環境研究所HPから発信されていた大気汚染物質観測情報(そらまめくん*)や花粉情報(はなこさん*)があります。ここでは,大気汚染や花粉と並ぶ身近な環境情報として,紫外線情報と熱中症予防情報について,情報提供の意義を中心に紹介します。(*現在は,環境省より情報提供しております。)

【UVインデックス】

 国立環境研究所では,地球環境研究センターが中心となって国内の様々な機関と共同で紫外線の観測を行っています(有害紫外線モニタリングネットワーク)。1998年に国立環境研究所が呼びかけて始まったもので,現在,国立環境研究所の5観測局を含め,22機関26観測局で紫外線の観測を行っています。それぞれの観測局では,B領域紫外線(UV-B)と併せて,A領域紫外線(UV-A)と全天日射量を連続測定しています。紫外線は波長によって3つに分類されます。波長の長いほうから,UV-A(315~400nm),UV-B(280~315nm),UV-C(280nm以下)となります。ここで,nm(ナノメートル)というのは1mmの100万分の1の長さです。UV-Cは大気中のオゾンや空気などによって吸収されて地表には届きません。一方,UV-Aは大気中ではほとんど吸収されず大気圏外の紫外線がそのまま地表に届きます。ところが,UV-Bは大気中のオゾンや空気などによってその多くが吸収されますが,一部が地表に届くため,現在問題となっているオゾン層破壊が進んだ場合に影響を受けることになるのです。つまり,オゾン層破壊が進行してオゾン量が減少するとUV-Bが増えることになります。1990年代の初めから気象庁が国内4ヵ所(札幌,つくば,鹿児島,那覇)でUV-Bを観測していますが,それは,オゾン量とその影響を受けると考えられる紫外線を監視するためです。

 しかし,オゾン層破壊に伴う紫外線(UV-B)の増加だけが問題ではありません。現状のレベルであっても,紫外線の浴びすぎは私たちの健康に様々な悪影響を引き起こします。その代表的なものとして,皮膚に対する影響(日焼け,皮膚の老化-しみ,しわ-,皮膚がん,など)や眼に対する影響(雪眼,翼状片,白内障,など),そして免疫機能を低下させ病気にかかりやすくする,などといったものがあげられます。

 紫外線の強さを決める主な要因としては,オゾン量のほかに太陽高度や気象条件があげられます。つまり,紫外線は, 1) オゾン量の少ない地域,少ない季節に, 2) 太陽高度が高い(頭上に近い)時に, 3) 晴れた日に,強くなります。日本についていえば南に行くほど,また一年の内では夏に,一日の内では正午前後に,紫外線が強くなるのはこのような要因が組み合わさった結果なのです。

 それぞれの地域,季節の紫外線はこのように決まりますが,ここで重要なことは,これはあくまでも地表に降り注ぐ紫外線の強さを表しているということです。先に紹介したような紫外線の悪影響は紫外線の“浴びすぎ”によるものです。私たちが実施した調査結果の一つを紹介します。調査は,全国5ヵ所から小学校1校ずつを選び,5年生(~6年生)1クラスずつ,合計およそ200名を対象に,冬春夏秋の各1週間,バッヂ式の紫外線測定装置を使って,一人一人の毎日の紫外線曝露量を測定しました。その結果によると,実際に小学生が浴びている紫外線量はその地域の紫外線の強さとは必ずしも一致しないという結果になりました(図1)。

図1 小学生の紫外線曝露量
図1 小学生の紫外線曝露量

 那覇を例にとると,一年の内で紫外線の最も強い夏の紫外線曝露量は他の季節と比べて決して多くはありません。また,札幌の夏の曝露量は東京や宮崎と同じで,那覇よりも多くなっています。これは,紫外線の曝露量はそれぞれの地域の紫外線の強さだけではなく,一人一人のライフスタイル,特に戸外での過ごし方によって決まることを示しています。那覇の子供たちの夏の紫外線曝露量が少ないのは,長い歴史の中で身に付いた生活の知恵だと考えられます。

 ここに,紫外線を浴びすぎないようにするヒントがあります。つまり,私たちが,常に生活環境中での紫外線の強さを知って,上手につきあっていく(紫外線を浴びすぎないようにする)ことが重要なのです。事実,私たちが国内外で実施した住民検診で,同じ地域でもたくさん紫外線を浴びている(と考えられる)人々の方が翼状片や白内障に罹りやすいといった結果も得られています。

 このようなことから,私たちは,有害紫外線モニタリングネットワークで観測された紫外線情報をいち早く一般の方々に提供することが重要と考えました。それが,UV速報(UVインデックス)です。現在,22機関26観測局のうち,14観測局のデータがオンラインで国立環境研究所に集められ,UVインデックスとして国立環境研究所HPから毎時発信されています(図2)。

図2 UVインデックス  -現在の紫外線,茨城県つくば市(国立環境研究所)-
図2 UVインデックス
-現在の紫外線,茨城県つくば市(国立環境研究所)- (拡大表示)

 ここで,UVインデックスとは,皮膚の紅斑(うっすらと赤くなる症状)を目安とした,国際的に広く使われている標準的な指標です。国立環境研究所では,実際に観測されたUV-BやUV-Aをもとに独自の方式でUVインデックスを計算しています。HPでは,毎時のUVインデックスを提供するだけでなく,UVインデックスの大きさに応じた注意を呼びかけています。

【熱中症予防情報】

 地球温暖化やヒートアイランド現象が進むに従って,夏季に特に都市部で高温の日が多発するようになり,それに伴って熱中症で多くの人々が倒れるといったことが起きています。全国主要都市の消防局より提供された,救急車により病院に運ばれる熱中症患者のデータでみると,5月頃から少しずつ熱中症患者が発生し,7月,8月には暑い日を中心に多くの患者が発生しています。一例として平成17年の東京都23区のデータを図3に示します。これを,日最高気温別の熱中症患者発生率にしたのが図4です。日最高気温が高くなるに従って熱中症患者の発生が増えていくことがわかります。

図3 日別最高気温と熱中症患者発生数(東京都23区)
図3 日別最高気温と熱中症患者発生数(東京都23区) (拡大表示)
図4 日別最高気温別・熱中症患者発生数(東京都23区)
図4 日別最高気温別・熱中症患者発生数(東京都23区)

 では,熱中症の発生を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。第一に,“熱中症とはどのようなものか,どのような時に起きやすいのか,また予防するにはどうしたらよいのか”,といった熱中症の基本的な知識を一般の人々に知ってもらうことが重要だと考えました。その一つが環境省の作成した熱中症予防のための啓発書「熱中症保健指導マニュアル」で,このようなことがわかりやすく紹介されており,全国の保健所等に配布されて保健指導に使われています。これは環境省のHPにも掲載されており誰でも自由にダウンロードして利用することができます。さらに,国立環境研究所独自の取り組みとして,前述の全国主要都市の救急搬送データを利用して,熱中症患者発生状況や解析結果をHP上に掲載しています。身近な熱中症患者情報を紹介することにより,熱中症に対する意識を高めてもらおうという狙いです。

 もう一つ,“熱中症の起きやすさ”を天気予報のようなわかりやすい形で一般の人々に知らせることを,環境省の受託事業の一環として始めました。国立環境研究所のHP・熱中症予防情報サイトの中で,“今日・明日の暑さ指数”として情報発信しています(図5)。具体的には,気象庁の数値予報情報(いわゆる天気予報の元となるデータ)を使って,WBGT温度を計算し,“暑さ指数”として,当日と翌日の3時間ごとの予報を行っています。なお,WBGT温度とはWet-bulb globe temperature(湿球黒球温度)といって,気温だけでなく,湿度や日射等を勘案した,体感温度に近い熱中症発症の目安となる指標です。

図5 熱中症予防情報サイト  -今日・明日の暑さ指数-
図5 熱中症予防情報サイト -今日・明日の暑さ指数- (拡大表示)

おわりに

 以上,身近な環境情報の一例として,紫外線と熱中症について紹介しました。紫外線による悪影響も熱中症も一人一人が気をつけることで防ぐことができます。外出する時,運動する時,暑い場所で作業をする時など,このような情報を事前に調べ,予定を立てることが重要です。

 幸い,二つのHP(UVインデックス,熱中症予防情報サイト)とも,非常に好評で多くの方々にアクセスして頂いています。また,昨年からは,屋外活動中に利用してもらえるよう携帯サイトも開設しました。今後とも,ますます多くの方に利用していただけることを期待して終わりとします。

 最後に,ここに紹介したHPのURLを示しておきます。

(おの まさじ,
環境健康研究領域
総合影響評価研究室長)

執筆者プロフィール

 研究所に入ってそろそろ30年になる。ということで,研究所を去る日もそう遠くなく,ニュースに原稿を載せるのもこれが最後だと思っています。
研究所での仕事の中心は,入所と同時に始めた大気汚染の健康影響で,こちらは,起伏はあるものの息長く続けており,現在も環境省のプロジェクトに参加しています。今回ニュースで紹介したのは,地球環境問題が喧しくなった1990年頃から関係している仕事の一端です。