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国立環境研究所に対する期待

巻頭言

全国公害研協議会会長代行 土屋隆夫 (東京都環境科学研究所長)

 私たち地方自治体に所属する全国公害研協議会の68研究機関では,各地域社会の要求に応えるべく,地域の環境問題の解明・解決のための調査・研究に取り組んでいる。

 かつて,産業に起因した局所的かつ激甚な公害が主体であった時代には,当該地域の研究機関ではそれらの解決に取り組み,多くの公害問題の解決に努めてきた。

 しかし最近では,内分泌撹乱化学物質やダイオキシン等の各種化学物質による環境汚染や,生態系における種の保全の問題など,科学技術の発展や現代文明のあり方そのものが新たな環境問題をもたらすと考えられる例も多い。加えて,自動車に起因する大気汚染や騒音問題など,古典的ともいえる公害問題が大都市周辺には未だ未解決の課題として残されているのが現状で,各地域の実情に応じてこれらの課題の解明・解決に努めるのが,私たち地方自治体の研究機関に課せられた責務といえる。

 ところで,最近の世の中の動きで,大変気になる現象がある。原子力産業における臨界事故や,乳製品工場における衛生上の事故等である。これらの現場に,かつての日本の技を支えていた,愚直なほどに基礎を大切にし,その道ひとすじに務めていた人々が働いていたならば,あるいは起こり得ない事故ではなかったのかとの思いが強い。

 バブルが華やかであった当時,ある電気産業のトップが,製造業はその本業に努めるべきで,本業以外で利益を上げるようなことをすべきではないと発言していたことが思い出される。現在も同社は健全であるが,このトップも愚直なほどに基礎を大切にし,本業ひとすじに生きる人であったのではないかと思われる。私たちの仕事も同様で,基礎を大切にし,その道ひとすじに努めることが良い成果をもたらすものと考えられる。

 私たち地方公害研究所等では,従来から国立環境研究所との共同研究を進めており,平成12年4月時点で22機関が37課題について共同研究を行っている。基礎を大切にしている専門家の多い国立環境研究所との共同研究を通じて,良い研究成果を得るとともに,良き研究者の育成を図りたいとの考えによるものである。今後とも国立環境研究所に対する期待は大きく,よろしくお願いする次第である。

執筆者プロフィール:

横浜国立大学工学部卒,東京都公害研究所主任研究員,都環境保全局水質規制課長,同水質保全部長を経て平成4年から現職。平成5~6年度全国公害研協議会会長。