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ホーム > 刊行物 > 国立環境研究所ニュース > 14巻 > 5号 (1995年12月発行) > 音環境と眠り〜不眠症の疫学からのアプローチ

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研究ノート
音環境と眠り〜不眠症の疫学からのアプローチ
影山  隆之

大都市では騒音エネルギーの90%が自動車から発生するという。しかも,日中の交通量は飽和しているため,夜間交通量が増えつつある。だが,交通量が多く環境基準が達成されていない幹線道路の沿道にも多くの人々が住んでおり,そこでは自動車騒音のため寝室内の夜間騒音レベルも高くなっている。良好な睡眠は健康の基本条件なので,騒音の程度と睡眠への影響との関係は,重要な研究課題といえる。ここでは,特別研究として行ったフィールド調査について紹介する。

暑さ,心配事,歯痛,明日の遠足などのために眠れぬ夜を過ごした経験は,誰しもあるだろう。これらと比べた場合,自動車騒音による不眠は,どれくらい頻繁に起こっているのだろうか。そこで,不眠症の疫学調査を行う中で,自動車騒音による影響の程度を検討することを考えた。ただし,不眠症の定義は国際的な診断基準に準じ,「寝つかれない」などの"不眠症状"が最近1カ月に週2,3回以上あるために生活上の支障があって本人が困っている場合,と定義する。質問紙調査の結果,都市域の成人女性の約5%が不眠症に該当していた。治療中の疾患がある人などでは,もう少し多い。しかし,この種の個人要因の影響を考慮に入れてもなお,夜間交通量がきわめて多い幹線道路の沿道20m以内では,不眠症が数%多いらしいことも分かってきた。不眠と騒音との関連を確認するため,不眠症群と対照群(不眠症でない人々の中から,各不眠症例と性・年齢などが等しい人を同数選んだ)の寝室で騒音レベルを測ると,確かに不眠症群の方が高い騒音レベルの中で睡眠をとっていた(図)。現在,調査地域を拡げるなどして,詳しい解析を行いつつある。なお,静か過ぎると眠れないという人もいるが,それはたいてい,静かだからではなく睡眠環境が変わったためである。

自動車公害は,騒音だけでなく振動や大気汚染にも及ぶ。文明の利器には違いないが,これほど多くの車を必要とする社会でよいのだろうか。宅配便で届いた産地直送メロンの箱を開けながら,考えたりしている。

図  不眠群と対照群の睡眠時騒音レベルの比較

(かげやま  たかゆき,地域環境研究グループ都市環境影響評価研究チーム)

執筆者プロフィール: 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了,保健学博士
〈趣味〉音楽(クラリネット)


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