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故 木村 強 主任研究員を偲んで

慶弔記事

 平成7年4月21日午後3時46分頃,水土壌圏環境部の木村強主任研究員は,まだ39才の若さで,惜しまれつつ,私たちとは別の世界へ旅立たれてしまいました。2月中旬まで元気にジョギングをされ,昼夜を惜しんで研究を続けられていました。2月28日に検査のため病院に行かれたところ,膵臓がおかしいと診断され,3月にはときどき検査入院をされました。4月の始めから筑波大学付属病院に入院をされ,それからわずか3週間足らずで亡くなられてしまいました。亡くなられる前日に病院へお見舞いに参りました折りには,元気な御様子で自分の病気のこと,研究のこと,少し前にお子様と病院内を散歩されたことなどを話されておりました。今夏の国際会議で研究発表を行うため,海外へ行くことを楽しみにし,その手続きを行っている矢先のことでした。余りにもあっけないことで,今さらながら人生のはかなさを見る思いです。あとには和子夫人と小学校6年生の太郎君,小学校4年生の花菜ちゃん,そして小学校2年生の裕君の可愛い3人のお子様が残されました。御遺族の御悲しみと将来の並々ならぬ御苦労は察するに余りあるものがあります。

 木村強君は,昭和53年九州大学工学部採鉱学科を御卒業され,昭和58年同大学大学院工学研究科鉱山工学専攻博士後期課程を単位修得退学なされ,同年6月に九州大学工学部の助手,平成2年3月に国立公害研究所水質土壌環境部地盤沈下研究室(現,国立環境研究所水土壌圏環境部地下環境研究室)の主任研究員になられました。昭和61年には九州大学から工学博士号を授与されるなど多くの研究成果を挙げられました。

 国立環境研究所における研究は,岩盤内に生じた割れ目が周辺地盤環境に及ぼす影響についての基礎的な実験的研究を続けられていました。割れ目を有する岩盤の接触状況を調べる方法を開発したり,それらの弾性波特性・せん断特性に関する実験を行ったり,外的環境の変化による割れ目内の水分変化に関する実験を精力的に行ったりして,多くの研究論文を相次いで発表しておりました。

 開発が次第に地下深部まで及ぶようになり,将来様々な環境問題が発生することが懸念されている昨今,21世紀あるいは22世紀の地下環境問題に向けて地道な研究を行っている君が,今まさにその大器の花を十分に開花しようとした矢先,沢山のことを積み残し,その成果を見届けることなく,突然私たちの前を去って逝ってしまわれました。残念でたまりません。これから,志しと遺業を受け継ぎ,地球自身を守るため,研究を継続し発展させることが,君に対する私たちの勤めと思います。

故 木村強主任研究員の写真

(水土壌圏環境部地下環境研究室長 陶野 郁雄)