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'91IGAC/APARE/PEACAMPOT航空機観測について

研究ノート

畠山 史郎

 アジアは現在でも硫黄酸化物、窒素酸化物の世界の3大排出地域の一つであるが、21世紀には世界最大になってしまうものと予想されている。最東端に位置する我が国にはこれらの汚染物質や、それが大気中で酸化されて生成する酸性物質が大量に飛来するものと懸念される。現に、冬季の日本海側で降る雪の pHが低く、硫酸イオンの濃度も高いことはこのような現象が実際に起こっていることを示している。将来を予測し、有効な制御対策を講じるためにも、東アジア地域における汚染物質の排出量、濃度分布、輸送・変質過程、沈着量を把握することは非常に重要である。このような観点から、東アジア−西太平洋地域における酸性物質・酸化性物質の動態解明を目的として航空機観測及び集中地上観測を行った。

 機上での観測項目は表のとおりである。長崎大村空港を基地として、与論島往復(東シナ海上空)、ソウル往復(黄海上空)、新潟往復(日本海上空)の都合6フライトを行った。また、IGAC計画に基づく国際共同観測の一環として与論島からの帰りのコースにおいて米国NASAのDC-8機(Vol.10,No.6の酒巻氏の研究ノート参照)とランデブー・フライトを行った。我々の飛行機はCESSNA-404で、搭乗した研究者も2人と、スケールにおいてはDC-8とは比較にならないが、所外の研究者の参加、協力もあり、本研究所が企画した初めての国際航空機観測としては上々の出来だったのではないかと自画自賛しているところである。現在データの解析が進められている。結果がモデル研究に提供されて東アジア地域の大気動態が総合的に把握できるものと期待される。

 今後も航空機観測を継続し、酸性雨、温暖化の両問題を含む対流圏の酸性化現象の解明を見据えた研究を行っていく予定である。

(はたけやま しろう、地球環境研究グループ酸性雨研究チーム)

表  観測項目及び測定方法