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越境大気汚染の日本への影響
- 光化学オキシダント増加の謎

環境儀 NO.33

大原利眞
国境を越えて移動する大気汚染物質。 コンピュータ・シミュレーション、排出インベントリ、観測データ解析によって、その実態とメカニズムを解明し、将来を予測しています。

 “光化学オキシダント(Ox)”が再び大きな問題になっています。1980年代後半から全国の測定局でOx濃度が上昇し、その年平均濃度は、1985~2004年度の20年間に、約0.25ppb/年(1%/年)の割合で増えています。さらに、光化学オキシダント注意報を発令した都道府県は徐々に増加し、2007年には28都府県に達して観測史上最大となり、汚染地域が拡大しています。また、離島や山岳のような清浄地域でもオゾン(光化学Oxの大部分はオゾンです)が増加しています。

 地表近くのオゾンは、工場や自動車などから排出された窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)が大気中で光化学反応を起こすことによって生成されますが、発生源規制等によって、国内のNOxとVOCは年々減っています。なぜ原因物質が減少しているのに光化学Oxが増加しているのか。なぜ発生源が近くにない地域でも光化学Oxが上昇し、汚染が広がっているのか。これらの原因の1つとして、アジア大陸からの越境汚染の影響が考えられます。そこで、国立環境研究所は、アジア地域における大気汚染物質の排出インベントリを作成し、観測データも活用して、東アジア地域における広域・越境大気汚染のシミュレーション研究を進めています。

 今号では、これまでの研究で明らかになった、東アジアにおけるNOxなどの排出量が増加し、それによって生成されるオゾンが大陸風下の日本に運ばれ、日本の地上オゾン濃度が上昇している様子を紹介します。


本研究に関する成果は以下のURLで紹介されています。