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プロジェクト概要

本プロジェクトは、2020年度から2022年度までの3年間で行われます、国立環境研究所内公募研究Aの1つです。「高時空間分解能観測データの同化による全球大気汚染予測手法の構築」という課題名の下で、次世代大気汚染物質輸送モデルNICAM-Chemを用いた全球規模での大気汚染予測のための手法を構築することを目的とし、この実現のために2つの目標を掲げました。

  1. NICAM-Chemを用いた予測計算に重要なモデル初期値には、大気汚染物質データ同化の高精度な計算値を用いる。
  2. 同化データとして、全球静止化学衛星や地上/衛星ライダー等の様々なデータを融合することで、高時空間分解能観測データを作成する。
これらの目標を達成することで、プロジェクトの最終的な目的である大気汚染予測精度の向上に繋がります。


図1.  研究全体の概略図

研究背景

私たちはこれまで全球非静力学正20面体格子大気モデルNICAMと結合した大気汚染物質輸送モデルNICAM-Chemを用いて、大気汚染物質シミュレーション及びデータ同化を十分に行ってきました(例えば、Goto et al., 2020; Dai et al., 2019)。またその一方で、我が国の大気汚染予測システムには、データ同化を利用した高精度予測が望まれており、国外では2020年以降に大気化学物質監視のための全球静止化学衛星網が世界で初めて構築され、大気汚染予測システムの高精度化が加速していくことが予想されます。このため、これらの全球静止化学衛星に加えて、既存の衛星(例えば、ひまわりMODIS/TERRA)や地上観測(例えば、AD-netそらまめくん)等を融合した高時空間分解能観測データによる同化を行うことで、我が国でも大気汚染予測システムをさらに発展させるチャンスがあります。そこで本プロジェクトでは、全球規模での大気汚染予測システムのための手法開発を行います。

代表者

五藤 大輔(国立環境研究所 地域環境保全領域)

サブテーマ1(NICAM-Chem同化による予測手法の構築)

五藤 大輔(国立環境研究所 地域環境保全領域)
菅田 誠治(国立環境研究所 地域環境保全領域)
八代 尚(国立環境研究所 地球システム領域)
山下 陽介(国立環境研究所 地球システム領域)
打田 純也(国立環境研究所 地域環境保全領域)
弓本 桂也(九州大学応用力学研究所)
Dai Tie (中国科学院大気物理研究所)

サブテーマ2: 同化・検証で用いる高時空間分解能観測データ整備

西澤 智明(国立環境研究所 地球システム領域)
清水 厚(国立環境研究所 地域環境保全領域)
日暮 明子(国立環境研究所 地球システム領域)
神 慶孝(国立環境研究所 地球システム領域)
谷本 浩志(国立環境研究所 地球システム領域)
中島 映至(国立環境研究所 地球システム領域)
Kim Jhoon (Yonsei University, Korea)

プロジェクトの研究計画

  1. 2020年度: NICAM-Chemのモデル実行条件を整備し、2次元変分法(2D-Var; Yumimoto et al., 2017)および3次元変分法(3D-Var)によるデータ同化に着手します。また、衛星データを収集し、新しい品質管理(QC)によってデータ精査を行うと共に、地上ライダーと衛星データを組み合わせた全球高時空間分解能観測データの作成に着手します。
  2. 2021年度: NICAM-Chem+2D/3D-Varを用いて、テスト版の予測システムを構築し、全球静止化学衛星データを利用することで、予測精度改善を評価すると共に、NICAM-Chemモデル高度化も進めます。また、衛星データのダウンロード及びQCを継続して実行します。また、予測モデルの精度向上を検証する上で重要な大気汚染現象を調査し現象解析に着手します。
  3. 2022年度: 前年度構築したNICAM-Chem+2D/3D-Varによる予測実験を行い、精緻化を進めます。また、前年度に引き続き、衛星データのダウンロード及びQCを継続して実行すると共に、注目した大気汚染現象を調査を継続して行います。最終的には、本研究で新しく計算した全球規模大気汚染物質の4次元データを公開する予定です。

NICAM-Chem

NICAM-Chemは、全球から領域規模の大気汚染を高解像度でシミュレーションすることができる数値モデルです。全球非静力学正二十面体格子大気モデルNICAMに結合したエアロゾルおよび短寿命気体を計算することができるモジュールを包括して、NICAM-Chemと呼んでいます。現在では、エアロゾルモジュールはSPRINTARSが主に用いられており、短寿命気体モジュールはCHASERが用いられています。
これまでの実績では、地球シミュレータを用いて全球7km解像度で1週間(Suzuki et al., 2008)あるいは京コンピュータを用いて全球3.5km解像度で2週間(Sato et al., 2016)の積分に成功しており、エアロゾルと雲の相互作用のモデル再現性がそれまでの数値モデルよりも格段に向上したこと(Sato et al., 2018)が明らかとなりました。また、エアロゾル自体の輸送再現性も向上し、低解像度では再現できない様々な問題を解決することができ、最近では京コンピュータを用いて全球14km解像度で3年間積分することに成功しました(Goto et al., 2020)。
これらの成功には、スーパーコンピュータの性能の向上に加えて、NICAM特有のモデルシステムが重要な役割を果たしてきました。それは、NICAMの特殊グリッドであるストレッチ格子法(Tomita, 2008)です。ストレッチ格子は、ある特定の地点を中心として、モデル格子の大きさを細かくし、部分的に高解像度計算を行うことが可能となります。その結果、低コストで高解像度計算を行うことが可能となりました。例えば、日本など狭い領域を対象にして行い、観測との比較検証を経て、領域規模の大気汚染物質の環境問題に迫ることができると共に、モジュールを改良することができました(Goto et al., 2015; 20162019; Trieu et al., 2017)。
以上のような全球から領域をシームレスに取り扱うことができるNICAM-Chemは、大気汚染の環境・気候問題の解明に役立つものと信じております。
なお、NICAM-Chemのモデル開発は、文部科学省気候変動適応研究推進プログラムRECCA「大気環境物質のためのシームレス同化システムの構築とその応用(SALSA)」(2010-2014年度、代表:東京大学中島映至教授、現在、国立環境研究所)、環境省環境研究総合推進費戦略的研究開発領域課題S-12「SLCPの環境影響評価と削減パスの探索による気候変動対策の推進」(2014-2018年度、代表:東京大学中島映至教授、現在、国立環境研究所)、等の多数のプロジェクトの支援を受けて行われてきました。

 
図. NICAM-Chemモデリングシステム

成果論文

  1. Cheng, Y., Dai T., Goto D., Murakami H., Yoshida M., Shi G. and Nakajima T. (2021) Enhanced simulation of an Asian dust storm by assimilating GCOM-C observations, Remote Sens., 13(15), 3020, https://doi.org/10.3390/rs13153020.
  2. Dai T., Cheng Y., Goto D., Li Y., Tang X., Shi G. and Nakajima T. (2021) Revealing the sulfur dioxide emission reductions in China by assimilating surface observations in WRF-Chem, Atmospheric Chemistry and Physics, 21, 4357-4379, http://doi.org/10.5194/acp-2020-1259.

モデル結果

 現在整備中です。

観測結果

  • AD-Net(ライダー)
  • SKYNET(エアロゾル鉛直積算量観測)

衛星データ

地上データ

  • AERONET(エアロゾル鉛直積算量観測/NASA; 2000-)
  • そらまめくん(大気汚染物質直接観測/環境省; 1995-)

 現在整備中です。