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地球温暖化の影響とその対策に関する研究

プロジェクト研究の紹介

森田 恒幸

 10月23日に「地球温暖化防止行動計画」が閣議決定され、当面の温室効果ガスの削減目標とそれに向けた行動メニューが示された。このような目標や計画を策定している国は、日本以外にオランダ、ドイツ、カナダ、フランスなどで、1992年の条約締結に向けて国際的な動きになりつつある。地球温暖化問題はいよいよ具体的な対策を検討する局面に入ってきた。

 現在提案されている温室効果ガス削減目標や削減対策は、今後10年から15年間をめどにした比較的短い期間の計画である。今までの研究によれば、これらの対策の効果は大変大きいが、地球温暖化をくい止めるにはまだまだ不十分であることが示されている。我々の試算でも、今後10年から15年間に最大限の対策を施したとしても、地球温暖化をくい止めることは難しく、温暖化の時期を15年から25年遅らせる程度の効果にとどまるという結果が出ている。

 我々は、ある程度の地球温暖化を覚悟してそれに備えるとともに、100年程度をかけた抜本的な温暖化防止対策の検討を迫られているのである。

 当研究所の温暖化影響・対策研究チームはこのような問題認識を基礎にして、(1)地球温暖化によって自然環境や社会にどのような影響が及ぼされるのか、それに対してどのように適応していくか、(2)地球温暖化を抜本的にくい止めるためにはどのような対策が必要か、その効果はどの程度か、の2点について取り組んでいる。現在着手している研究課題は次のとおり。

(1)地球温暖化の影響に関する研究

(1)温暖化が植物個体や自然植生に及ぼす影響を施設実験及び計算機シミュレーションを用いて分析する。
(2)温暖化が人の健康や人類の生存環境に及ぼす影響を解明する。
(3)温暖化が都市のエネルギー利用、水利用、大気質、防災等に及ぼす影響を総合的に分析して、都市構造面の適応策を検討する。

(2)地球温暖化の防止対策に関する研究

(1)温暖化防止のための各種技術を体系的に評価する手法を開発するとともに、有効な技術を選定してその効果を分析する。
(2)温暖化防止の各種政策の効果を総合的に評価するために、計算機シミュレーションモデルを開発する。このモデルは、図に示すように上記の温暖化影響・対策に関する個々の研究を集成するものとなる。

 これらの研究を実施する体制は、当チームのコアスタッフ3名に加えて基盤研究部門及び地域環境研究グループの研究者が参加するプロジェクトチームを作るとともに、大学等の研究機関と共同研究を開始している。この分野の研究対象は非常に多岐にわたるため、今後とも大学等との共同研究を拡大していきたいと考えている。

(もりた つねゆき、地球環境研究グループ 温暖化影響・対策研究チーム総合研究官)

シュミレーションモデルの図(クリックで拡大表示)