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国立環境研究所研究報告 R-205-2010
「経済的インセンティブ付与型回収制度の概念の再構築 ~デポジット制度の調査と回収ポイント制度の検討から~」 (平成22年10月発行)

 本研究報告書は、効果的な回収制度と考えられるデポジット制度と回収ポイント制度に着目して、それらの概念を再構築した研究成果をとりまとめたものです。リサイクルを進展させるにしても、適正処理を確保するにしても、モノが回収できることが前提となります。回収を促進する有効な手段としては、経済的インセンティブを与えることが考えられ、実際、諸外国においてはそのようなインセンティブを与えるデポジット制度が様々な対象物に適用されています。廃棄物だけでなく、有価物や有害物にデポジット制度を適用するうえで、どのような制度設計上の留意点があるのか、理論的にどのような違いがあるのかなどを、既存文献のレビュー、制度調査、理論的考察をもとに整理しました。また、我が国に特徴的な民間業者が行っているポイント制度を回収制度に適用した回収ポイント制度にどのような特徴や可能性があるかを考察しました。これらの検討は、経済的インセンティブ付与型回収制度のより的確な設計と導入につなげることをねらいとしています。本報告書が、我が国における制度の導入検討にあたってお役にたてば幸いです。

 

(循環型社会・廃棄物研究センター 田崎智宏)

環境儀No.38「バイオアッセイによって環境をはかる-持続可能な生態系を目指して-」(平成22年10月発行)

 化学物質は、毎年1000種以上が新たに作られ、実際の環境には多くの化学物質が排出されてしまいます。河川や湖沼の水質を確保するためには、1つ1つの化学物質を調べる方法では不十分で、もっと実際的な管理法が必要になります。その最も有望な管理法として、排水をそのまま生物検定にかけるWET(Whole Effluent Toxicity)システムが挙げられます。また、様々な化学物質が作られる中で、これまでの実験方法では毒性の影響がわからない化学物質も出てきました。内分泌かく乱化学物質は、生物の生殖機能、発生・分化、性発現などに影響するため、生物が死亡するかどうかだけを観ていたこれまでの毒性試験では影響が確かめられません。

 環境リスク研究センターの鑪迫典久主任研究員は、これらの問題を克服することを目指して、化学物質の内分泌かく乱作用によるミジンコの性比かく乱を利用した試験法の開発や、排水中に含まれる化学物質の毒性を総合的に評価するバイオアッセイ法の研究を続けてきました。それらの研究成果は、OECDテストガイドラインや、WETシステムの導入へ向けた国内の動向に大きな影響を与えました。本号では、その成果と今後の課題、見通しなどについて紹介しています。

 

(環境儀No.38ワーキンググループリーダー 田中嘉成)