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ホーム > 刊行物 > 国立環境研究所ニュース > 14巻 > 1号 (1995年4月発行) > 植物は「形」で勝負する − 樹形形成モデルの開発

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研究ノート
植物は「形」で勝負する − 樹形形成モデルの開発
竹中  明夫

生物が生きるためには,外界から資源を取り込まなくてはいけない。動物がエサという資源を取り込むときには行動がものをいう。一方,植物が光を受けるときには,どのように枝を張って葉をつけるかが重要であり,水や栄養塩を吸うには根の張りかたが重要だ。動けない植物は「形」で勝負している。まわりの植物との競争でも,形が決め手になることが多い。形と言ってもけっして静的なものではない。植物の形態形成はダイナミックなプロセスである。得られた資源をもとにさらに資源獲得のための構造を作っていく。

私は,樹木の地上部の構造ができていくプロセスをシミュレートするモデルを開発している。以前から,簡単な幾何学ルールのくり返しで樹木によく似た分枝構造を再現するモデルはあった。わたしのモデルのポイントは,葉を持つ小枝それぞれが置かれた光環境を考えて,明るいところの枝は多くの子枝を作るが暗いところのものは作る子枝が少ない,さらに暗い場合にはその枝自身が死ぬ,という現実的な過程を取り込んだことである。

樹木の枝のあいだではあまり資源のやりとりはしないらしいが,このモデルを使って,なまじ助け合わないほうが個体全体にとって都合がよいことが確かめられる。たとえば,単独では図aのような形に成長する木を6×6の格子状の木立にして計算機のなかで育ててみる(b)。すると,木立の中央の木では,暗いところの下枝は落ちて,明るい上方にだけ葉を広げるし(c),木立のへりの木は外の明るいほうへと枝を伸ばしている(d)。こうした樹形は光を獲得するうえでうまくできているように見えるし,実際の木もこうした形をしているが,これは光不足の枝をかばわないで,「明るいところの枝はたくさん子枝を出し暗いところの枝は死ぬ」というルールで成長したおかげである。

現在,枝の力学的な強度を考えるなどの,モデルの拡張を行っている。さらに,具体的な種ごとの特性を調べて,それがどのような環境でどのような意味を持つのかを,このモデルを使って解析したい。そうしたアプローチは,個体のあいだの競争関係や,森林のなかの階層構造のできかたの理解につながるものと期待している。

図  樹形形成のシミュレーション

(たけなか  あきお,地球環境研究グループ 温暖化現象解明研究チーム)

執筆者プロフィール: 理学博士。
〈現在の研究テーマ〉シベリア北部の森林の調査を行うほか,本稿で紹介したような,植物の形の生態学的な意味を考える研究を進めている。
〈趣味〉研究のほか,家事,読書,野球,外国語学習などをして暮らしている。


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