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2020年6月30日

クリーギー中間体

コラム3

 多くの化学反応では「反応物A」と「反応物B」が反応して「生成物P」に至るまでに「中間体X」を経由します(A+B→X→P)。この中間体Xを検出すると初めて、化学反応の全体のメカニズムが解明されたことになります。
 クリーギー中間体は、炭素-炭素二重結合(C=C)を持つ化合物とオゾンが反応したときにできるカルボニルオキシドという化学種です。ドイツ人化学者ルドルフ・クリーギー(Rudolf Criegee)がその存在を予想したため、クリーギー中間体という名前がついています。反応性が高く、寿命が短いため、2008年に最も単純なクリーギー中間体であるCH2OOの直接測定が行われるまでは、その分子科学的性質はよくわかっていませんでした。私たちの研究によって、このクリーギー中間体は、空気-水の界面において水分子や有機酸、アルコール、糖類と反応すると、ヒドロペルオキシド(R-OOHで表される過酸化物)になることが明らかになりました。

β-カリオフィレンとオゾンの気液界面反応でできるクリーギー中間体とその反応生成物の図
図3 β-カリオフィレンとオゾンの気液界面反応でできるクリーギー中間体とその反応生成物。
空気-エアロゾル界面では、クリーギー中間体は、異性化反応(分子内の原子の配列が変化して別の分子に変換する反応)に加えて、水などのOH基を持つ化合物と反応し、ヒドロペルオキシドという過酸化物の一種を生成します。しかし、クリーギー中間体の構造によって、その反応性は大きく異なることが知られています。