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地球温暖化研究、世界の視点と動向

研究をめぐって

 2005年2月16日に「京都議定書」が発効したことを受け、地球温暖化対策に向けた国内外の動きが活発化しています。この夏、米国を襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」の例はいうまでもなく、記録的な暴風、熱波、洪水など、世界中で異常気象が頻発しています。

 このまま温暖化が進めば、異常気象による大規模被害が増え続けると、世界中の科学者が予測しています。いまや待ったなし。地球の温暖化を防ぐには、国際社会が連携しながら対策に取り組まなければなりません。

世界では

 地球温暖化問題はいまや正念場を迎えています。国際的な温暖化防止対策の進展としては、「京都議定書」で各国ごとに定められた温室効果ガス削減約束の達成が重要課題として注目されています。この議定書は数値目標を定めて、2008〜2012年の間に先進国からの温室効果ガスの排出量を1990年レベルより全体で5%以上削減することを義務づけた約束です。

 従来より温暖化問題に積極的であった欧州では、各国共同で排出量8%削減を目指しています。一方米国政府は、京都議定書は「途上国に数値目標を課さないのは不公平」で「我が国の健全な経済活動を損なう」などという見解を背景に今も京都議定書の批准を拒否したままです。

G8に先立つ2005年2月、英国気象局ハドレーセンターで、英国ブレア首相の主導による「温室効果ガスの安定化濃度に関する科学者会合」が行われました。G8各国はじめ中国、インドなど約30ヶ国から200人以上の研究者が出席し、「危険な地球温暖化のレベルとそれを避けるための方策」について様々な知見が発表されました。例えば、珊瑚礁は海水温が1℃上昇するだけで白化して死滅する可能性があるなど、温暖化影響のリスクは予想以上に深刻なことが明らかとなりました。

 2005年夏に、米国ルイジアナ州に壊滅的な被害を与えたハリケーン「カトリーナ」はメキシコ湾上空で急速に勢力を拡大し、同湾の暖かい海面から大量のエネルギーが供給されたとみられています。ハリケーン発生数が新記録を更新した米国では、その原因が地球温暖化によるものかどうか議論が再燃しています。

 「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」は、気候変動に関する最新の科学的知見を集約した評価書を随時発表しています。「第3次評価報告書」(2001年)では、1990〜2100年の地表気温は地球全体の平均で1.4〜5.8℃上昇すると予測していました(図8)。現在は「第4次評価報告書」(2007年)の準備を進めており、日本を含め世界中の研究機関による20以上の気候モデルの予測結果が用いられる予定です。2013年以降の世界規模の温暖化対策をまとめる上で、「第4次評価報告書」のデータは、各国の指針を決定づける極めて重要な意味を持っています。

図8

図8 IPCC第3次評価報告書による、2100年までの地球平均気温変更予測

日本では

 IPCCの動きに呼応して、国内でも気候変動に関するさまざまな研究がスタートしています。本環境儀で紹介しているこの研究も「人・自然・地球共生プロジェクト」の一環として、国立環境研究所、東京大学気候システム研究センター、海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センターの協力のもとに実施されたものです。

 プロジェクトでは温暖化予測「日本モデル」を構築するためのミッションが組まれていて、日本モデルの精度向上を図ることを目的に、体系的な研究が進められています。例えば、気象庁を中心とした研究グループは、大気のみの全球超高解像度(20km格子)モデルを使って世界初の長期積分を行い、温暖化が台風の活動などにおよぼす影響の予測を行っています。また電気事業に関わる研究機関である電力中央研究所は、米国大気研究センター(NCAR)と共同研究で2100年以降の超長期の温暖化予測実験を行いました。このように多くの機関が連携しながら、より詳細で信頼性の高い温暖化予測の研究に努めています。

 日本は、京都議定書の責任ある議長国として、削減目標6%をぜがひでも達成しなければなりません。しかし、環境省によれば(2005年10月の速報値)、日本の温室効果ガスの2004年度総排出量は京都議定書による基準年(1990年)の総排出量と比べ約7.4%上回り、削減目標とは約13〜14%の隔たりがあります。削減目標達成のためには今まで以上に国民一人一人の合意が必要であり、削減の取り組みを推進するためにも、より具体的な温暖化影響予測が必要といえるでしょう。

図
高解像度モデルと中解像度モデルによる日本付近の海面水温と海流
高解像度および中解像度の大気海洋結合気候モデルにより計算された、日本付近の海洋の状態。カラーは海面水温、矢印は海流を表す。高解像度モデルでは、黒潮の蛇行や離岸が現実的に表現されている。

国立環境研究所では

 当研究所は、気候モデル研究と温暖化の影響対策研究の両方を行っている、世界でも数少ない研究機関です。地球温暖化については未解明な現象が多くあり、研究所内に「地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクト」を発足させて、地球の未来にとって最善のシナリオを探るべく研究活動を行っています。

 このプロジェクトには、過去・未来100年間の気候予測計算を行った今回のチームのほか、湿地からのメタンの放出や森林によるCO2の吸収等、炭素循環を調べるチームなど5つのチームがあり、研究を同時進行させています。また、温室効果ガスの排出量が急激に伸びている中国を含む、アジア太平洋地域の温暖化対策も緊急の課題であるため、この地域のガス排出量・気候変化・影響を統合分析できる「アジア太平洋統合評価モデル(AIM)」を開発し、プロジェクトの重点的課題として研究を進めています。

 地球温暖化は、農業・健康・水資源など人が生きていくために必要なあらゆる分野に影響を与えます。異常気象が世界の食糧供給にどのように影響するのか。降水量の減少は深刻な水不足や砂漠化を招くかもしれません。当プロジェクトによって詳細で信頼性の高い気候変化シナリオを作成できれば、農業・健康、様々な分野での影響を予測し、その緩和策や適応策を講じる手だてにもなります。

 気候予測モデルの開発と温暖化の影響対策の両方を視野に入れて行う「地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクト」は、IPCC第4次評価報告書に寄与できる、より信頼度の高いレベルを目指しています。その成果は京都議定書以降の国際的枠組み交渉における日本の説得力を高め、同時に、地球規模の温暖化対策を推進している日本の立場を支援する研究としても、多いに期待されています。

図

排出シナリオ、気候モデル、影響評価の連携図
国立環境研究所では、温暖化の総合的な予測に必要な研究グループが揃っており、それらが密接に連携して研究を行っている。排出シナリオ、影響評価などの社会経済的なモデルはAsian-Pacific Integrated Model(AIM)と呼ばれるもの。