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第4回NIES国際フォーラムを開催しました

4th International Forum on Sustainable Future in Asia/4th NIES International
Forum参加者の集合写真

第4回NIES国際フォーラムの背景

国立環境研究所(NIES)では、東京大学、アジア工科大学院及びアジアの様々な研究機関とともに、アジアの持続可能な未来に関して目指すべき方向についての議論を促進することを目的に、2015年度からNIES国際フォーラムを毎年度開催しています。また、この国際フォーラムを通じて、アジア地域の研究機関との研究ネットワークをさらに発展・充実させることも目指しています。
「第4回NIES国際フォーラム/4th International Forum on Sustainable Future in Asia」は、2019年1月23日〜24日にベトナムの首都ハノイにおいて、日越大学を共催機関に迎えて開催しました。現地機関の研究者のほか政府関係者など講演者も含めて約150名の参加者を得て、アジアの環境問題について様々な角度から発表と議論が行われました。
 国際社会は今、持続可能な社会の実現に向けた動きを加速しています。2015年には第3回国連防災会議で「仙台防災枠組2015-2030」が、国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」がそれぞれ採択され、COP21では「パリ協定」が合意されました。私たちが住むアジアも、経済と環境の両面において持続可能な地域へと変わっていくことが求められています。今回のフォーラム開催地であるベトナムを含むメコン河流域の国々においても、気候変動や急速な工業化に伴う廃棄物管理や、大気汚染など環境中の物質が健康に与える影響への対処などが重要な課題となっています。
 これらを踏まえて、今回のフォーラムではアジア地域で重要な課題である「洪水リスクと廃棄物管理」、「メコン河流域の環境変化と適応戦略」、「環境研究と公衆衛生の改善」そして「アジアの持続可能な発展」の四つのテーマを取り上げました。

各セッションの様子

最初に主催・共催機関の各代表から開会の挨拶がありました。それぞれに今回のフォーラムの開会を祝すとともに、2日間で展開される議論への期待が添えられました。続く基調講演では、ベトナム国家大学のMai Trong Nhuan元総長からベトナム国内での気候変動対策と持続可能な開発の相乗効果に関する知見が共有されたほか、日越大学の古田元夫学長から持続可能な開発を基本理念とする日越大学の設立にまつわる講演が行われました。

Mai Trong Nhuan氏(ベトナム国家大学元総長)
古田元夫氏(日越大学学長)
セッション1パネルディスカッションの様子

セッション1(洪水リスクと廃棄物管理)では、アジアの都市で頻発する洪水のメカニズムを追求した結果、水路に捨てられる廃棄物が問題であることや、その解決に向けた方策に関する研究の報告、都市洪水を防ぐために人々の行動変容が必要であり、それをどのように促していけるかの議論が行われました。

セッション2パネルディスカッションの様子

セッション2(メコン河流域の環境変化と適応戦略)では、気候変動影響やダム建設などの環境変化に対して、どのように対応していくかが各発表の焦点となりました。報告では、メコン河流域の上流から下流までの異なる環境条件とともに、自然科学から社会科学まで幅広いアプローチに基づく内容が取り上げられました。

セッション3の登壇者

セッション3(環境研究と公衆衛生の改善)では、日々過ごす環境に潜む健康への影響について議論しました。話題提供者からは、ベトナムだけでなくミャンマー、タイ、カンボジア、モンゴル、ラオス、日本と7カ国の大気汚染や安全な水の確保など、環境中の物質と健康に与える影響に関する研究事例が共有され、非常に国際色豊かなセッションとなりました。

セッション4の登壇者

セッション4(アジアの持続可能な発展)では、学際的な研究を実施していくことが気候変動対策の緩和策と適応策の両立や持続可能な開発を目指すにあたって避けられなくなっていくだろうということが示されるとともに、科学と政策をつなげて資金的にも持続可能にできるような橋渡しをする必要があることが強調されました。

ポスターセッション

今年もポスターセッションを行い、フォーラムの4セッションの内容に留まらない幅広い研究テーマについて、アジア各国から総勢55名がポスター発表を行いました。
今年のポスターセッションでは以下の5つのテーマに分かれて発表がありました。
1.水環境と生態系、2.水の管理と関連する技術、3.気候変動、4.大気汚染、5.サステナビリティサイエンスとSDGs関連の課題
ポスター発表者の一覧についてはこちらのページをご覧ください。
http://www.nies.go.jp/i-forum/FY2018/#tab5/_article
また、ベストポスター賞の投票及び授与も行い、6件のポスターが受賞しました。

  • P4 Species Composition and Metal Accumulation in Zooplankton in Truc Bach Lake
    Hong Pham Thi, Khuong Dinh Van, Anh Truong Minh, Tinh Nguyen Thi, Hung Nguyen Quang, Dai Bui Quoc, Thu-Huong Thi Hoang
  • P7 Occurrence of Antibiotic Resistance Genes as Emerging Contaminants in Watersheds of Tama River and Lake Kasumigaura in Japan
    Nga Nguyen Thi, M.M. Liu, I. Kasuga, H. Katayama
  • P9 Human Exposure to Endotoxin Associated with Water Use in Disaster Events
    Keisuke Kuroda and Jun Kobayashi
  • P31 Mapping mangrove forest cover using Landsat-8 imagery, Sentinel-2, Very High Resolution Images and Google Earth Engine algorithm for entire Cambodia
    T. Tieng, S. Sharma, R. A. MacKenzie, M. Venkattappa, N. K. Sasaki, Antoine Collin
  • P32 Time Series of Flood Mapping in the Mekong Delta using High Resolution Satellite Images
    Dieu Anh DINH, Badr EL MAHRAD, Patrick LEINENKUGEL, Alice NEWTON
  • P50 Zero Discharge Economy: A New Approach for Environmental Protection and Sustainable Development in Vietnam
    The Ha CAO, Ngoc Duy VU, Thị An Hang NGUYEN, Van Chieu LE, Luomg Quyet NGUYEN, Phuong Thao NGUYEN, Thi Viet Ha TRAN, Trung Hieu DANG, The Anh CAO
ポスター発表の様子
ベストポスター賞受賞者

終わりに

共同声明の発表

フォーラムの締めくくりには、NIES、東京大学国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構、アジア工科大学院アジア太平洋地域資源センター及び日越大学が共同で、アジア太平洋域における今後の環境問題解決に向けた研究連携を強化し、議論を牽引していくべく共同声明を発表し、今後さらにネットワークを強固にしながら研究活動を進めていく意思を示しました。
 今年の国際フォーラムの参加研究機関は約40機関と、第1回の約25機関から年々増えつつあり、フォーラムを通じてアジア地域内でのつながりが拡大していることを実感できる会議でした。このフォーラムの成果が、登壇者、参加者の皆様のそれぞれの今後の活動において、新しいアイディアや課題解決に向けたさらなる行動につながっていくことを期待しています。

質問する参加者

会議の様子

(文・杦本友里(研究事業連携部門)・芦名秀一(企画部国際室))
(写真・成田正司(企画部広報室))