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2018年3月28日

「生物多様性:熱帯林研究から見えてきたこと」

NIES国際フォーラムレポート

パソ森林保護区内の様子
写真1:パソ森林保護区内の様子。保護区はパーム油の原料となるアブラヤシやゴムのプランテーションに囲まれています。プランテーションは経済発展を支える一方で、生物多様性の消失や保全も課題となっています。

生物多様性の保全のために

 SDGs(Sustainable Development Goals, SDGs:持続可能な開発目標)は、世界の様々な課題解決のために17のゴールを定め、2030年までに私たちの世界をさらに転換していこうというものです。今回とりあげた生物多様性が関係する目標はゴール15(陸の豊かさも守ろう)で、「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」というものです。
 アジアの熱帯林における生物多様性の保全はゴール15を達成するために不可欠な取り組みです。なぜなら、このエリアは世界的に見て生物多様性の高い地域であり、一方で急速な生物多様性の消失に脅かされています。国立環境研究所はアジアの熱帯林に関する研究をマレーシアのパソ森林公園を拠点に、1990年からマレーシア森林研究所(FRIM)とマレーシアプトラ大学(UPM)と行っています。生物多様性の研究はこれらの機関が行う研究活動の中でも重要なテーマとなっています。
 このセッションでは、マレーシアの熱帯林で行なわれている生物多様性に関する様々な研究活動の成果を紹介するとともに、その成果をどのように統合すれば生物多様性の保全に役立てられるのか考えたいと思います。加えて、アジア地域の生物多様性消失の主な原因であり、且つ、ゴール15の達成目標でも言及されている保護動物の違法取引や密猟について、現状を紹介します。

このセッションでは7人の登壇者がそれぞれのテーマで発表しました。

  • 大沼学氏 国立環境研究所 生物多様性・生態系研究センター 主任研究員
  • Phon Chooi Khim氏 マレーシア森林研究所
  • 竹内やよい氏 国立環境研究所 生物多様性・生態系研究センター 研究員
  • Yao Tze Leong氏 マレーシア森林研究所
  • Gan Pek Chuan氏 国連開発計画 Biodiversity and Sustainable Development プログラムマネージャー
  • Manesh Lacoul氏 アジア工科大学院 Wildlife Enforcement Monitoring System 副事務局長
  • Klairoong Poonpon氏 Department of National Parks, Wildlife and Plant Conservation  ディレクター(タイ)
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
写真2~8:登壇者たち

発表ではアジアを主な調査地とした生物多様性に関する幅広い話題が提供されました。熱帯林における動物種の多様性モニタリング手法、熱帯林林冠部の構造解析と樹木種多様性との関係性、土壌タイプが樹木の種多様性へ果たす役割、アカエリトリバネアゲハ(*)の個体数モニタリング、アフリカとアジアにおける野生生物の違法取引監視システム、持続可能な景観管理、タイにおける野生生物の違法取引への対策などです。

*アカエリトリバネアゲハ:マレーシアに生息する代表的な蝶の種。集団で吸水する特徴があるが、近年その個体数が減少しています。

見出し:国際的な協働へ向けて

このセッションでは、SDGsのゴール15に焦点をあて、セッションの前半では、生物多様性に関する研究活動について紹介しました。後半では、持続可能な景観管理や野生生物の違法取引の監視システムや対策などを通じた生物多様性の保全についての実践的な課題に関する話題も提供しました。会場からの質疑も活発に行われ、このセッションがSDGsのゴール15達成に向けた国際的な協働の出発点となることへの強い期待を垣間見ることができました。

会場の様子
写真9、10:会場の様子
会場の様子

次号では最後のセッションである「環境モニタリング」のセッションについて報告します。二酸化炭素、メタン、二酸化窒素といった温室効果ガスの収支を観測することは、今後適切な緩和策を策定するための裏付けとなります。様々なアプローチで行われた研究活動について紹介します。

(文・杦本友里(研究事業連携部門)・芦名秀一(企画部国際室))
(写真・成田正司(企画部広報室))