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メタン由来炭素から始まる湖沼生態系食物連鎖の重要性評価(平成 29年度)
Importance of food chain initiated by methane-derived carbon in a lake ecosystem

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1717CD003
開始/終了年度
2017~2017年
キーワード(日本語)
メタン酸化,バクテリア生産,安定同位体,食物連鎖
キーワード(英語)
methane oxidation,bacterial production,stable isotope,food chain

研究概要

水圏から大気へのメタン放出を抑制する機能としてメタン酸化細菌(MOB)の働きが重要である.MOBは食物連鎖の中に取り込まれていくため,メタン由来炭素を湖内へ貯留する役割を果たしている.しかし,MOBの自然群集中における増殖速度はこれまで全く測定されておらず,メタン由来炭素から始まる食物連鎖の定量評価の障壁となっていた.そこで本研究では,霞ヶ浦を対象湖沼として,MOB増殖速度の定量のため,MOB増殖速度の測定法を確立し,MOB増殖速度の時空間変動を観測する.次に,MOBから高次捕食者への炭素フローを見積もるため,炭素・窒素安定同位体比(δ13C,δ15N)を用いて,底生生物に対するMOBの寄与率と,メタン由来炭素の魚類への寄与率の推定を行う.最後に,これらの結果をまとめ,メタン由来炭素から始まる炭素フロー図を描き,メタン由来炭素の生態学的役割を定量的に評価する.

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

(1年目)
1.1 自然群集中におけるMOB生産速度測定法の開発
(ア) 培養株による検討
MOB培養株を用いて, 増殖速度を見積もる際に最適なdNを決定する. 続いて, 水温変化に対するCH4酸化速度及びMOB増殖速度を測定し, MOBのCH4同化効率の温度依存性を明らかにする. さらに, MOB増殖速度や水温変化に伴う, CH4酸化時の炭素同位体分別の変動を明らかにする. この知見はMOB自身のδ13Cを明らかにし, 食物網解析を行う際に重要な情報となる.
(イ) 自然細菌群集中における検討
上記(ア)の最適ヌクレオシドの決定後, 霞ヶ浦で採取した自然細菌群集を用いて, C2H2添加によるCH4及びNH4酸化阻害の検討を行う.
1.2 MOB生産量の時空間変動・水温上昇実験
上記1.1のMOB生産速度測定法の確立後, 霞ヶ浦全域におけるMOB及び全細菌生産量の現場観測を毎月行う. 水中及び底泥から試料を採取・測定し, 全細菌生産量中に占めるMOB生産量の割合を求める. また, 水温, 溶存酸素, 酸化還元電位, pH, 無機栄養塩類, 微量金属, 溶存気体を測定し, MOB生産量の変動要因を明らかにする.
(2年目)
1.2 MOB生産量の時空間変動・水温上昇実験(続き)
1年目より引き続き, MOB生産速度測定を行う. また, 各季節に1回ずつ, 水温上昇に対するCH4生成やCH4酸化, MOB増殖速度の変動を観測し, 地球温暖化に伴う湖沼生態系から大気へのCH4フラックス及びCH4由来炭素から始まる食物連鎖への影響を考察する.
2. 底生生物に対するMOB寄与率の推定
霞ヶ浦において毎月, 底生生物を採取し,δ13C及びδ15Nを測定する. 特にδ13Cの変動を目的変数, 1.2で測定した現場MOB生産量や生物個体サイズなどの環境要因を説明変数とし, 一般化線形モデルで回帰する. 得られたモデルから, 各生物に対するCH4由来炭素の貢献度とその変動要因を探る. また, 先行研究で報告されている各生物の炭素要求量に対するMOB生産量の割合を算出し, 炭素量ベースでのMOB-底生生物の栄養構造を定量評価する.
(3年目)
1.2 MOB生産量の時空間変動, 2. 底生生物に対するMOB寄与率の推定
2年目より引き続きMOB生産速度測定及び上位栄養段階生物のδ13C, δ15N測定を行う.
3. CH4由来炭素の魚類への寄与率の推定
霞ヶ浦の魚類サンプルのδ13C, δ15Nを測定する. 魚類の個体サイズや成長ステージも考慮し, CH4由来炭素の魚類生産への寄与を見積もる.

今年度の研究概要

平成29年度は自然群集中におけるMOB生産速度測定法の開発を行う.そのために,まずMOB培養株を用いて,増殖速度を見積もる際に最適なデオキシヌクレオシド(デオキシアデノシン,チミジン,デオキシグアノシン,デオキシシチジン)を決定する.MOB培養株の選定にあたっては,メタン酸化の代謝経路が異なるとされるタイプIおよびタイプIIのものを,霞ケ浦などの国内湖沼において存在量が多いものを既往文献で調査し,選定する.また,水温変化に対するメタン酸化速度,MOB増殖速度,メタン酸化時の炭素同位体分別変動を明らかにする.次に,霞ケ浦の自然細菌群集を用いて,アセチレン添加によるメタン及びアンモニウム酸化阻害の検討を行い,現場のMOB生産速度測定法を確立する.ここで得た成果を国内学会で発表する.
MOB生産速度測定法の確立後,霞ケ浦全域におけるMOB及び全細菌生産量の現場観測を毎月行う.また,地球温暖化による影響を予測するため,水温上昇実験を各季節に実施する.

関連する研究課題

課題代表者

土屋 健司

  • 地域環境研究センター
    湖沼・河川環境研究室
  • JSPSフェロー(STAフェロー)
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