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環境化学物質によるドーパミン神経系疾患のDOHaD仮説検証(平成 29年度)
Evaluation of DOHaD hypothesis for chemical-caused dopaminergic disease

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1719CD025
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
化学物質,神経系発達障害
キーワード(英語)
chemical, neurodevelopmental deficit

研究概要

今日の環境化学物質は微量でかつ慢性的に曝露しているという特徴を有し、その発達期中枢神経系への曝露影響を評価するとき、胎児の脳形成及び発達を司る神経幹細胞の研究が重要になってきている。このような背景において近年、注意欠陥多動性障害や自閉症の小児が増加し、その病因の一つに環境に由来する様々な化学物質との関連性が指摘されて来ているが、これらの疾患は、場にふさわしくない多動性、衝動性、不注意、他人とのコミュニケーションが困難なことなどを特徴としている。
一つの環境化学物質が少なくとも3つの神経疾患の病態(小児ADHD,大人ADHD,パーキンソン病)をラットで再現される。こうした状況から一つの仮説が浮上する、DOHaD (Developmental origins of health and disease)仮説である。DOHaD仮説に立脚すると、子供の時期にドーパミン神経に損傷を負うことが引き金となり、その後のドーパミン神経が加速度的に脱落していくと仮定する。その結果、60歳前後では生存しているドーパミン神経は20%以下に減少するためパーキンソン病を発症するのであろうと推測される。この例としては、子供の多動症が最初に記述されたエコノモ脳炎に見られる。
 以上のように、本研究では神経系発達障害のDOHaD仮説検証を研究目的とした。私たちがいち早く報告した環境ホルモンによるラット多動性障害に関する基礎論文は、各国の疫学者の関心を引き、環境ホルモンとヒトADHDなどの疾病との関連性があるという疫学論文が増えている。日本ではエコチル調査として実施されてきているが、本研究で小児期の神経系への影響が晩発期に現れることが示されれば、その調査の実施デザインの変更を迫るものと考えられる。私たちは環境化学物質の中には小児期の曝露の影響が大人で発症するADHDモデルラットの作成に成功しており、本研究の実施は極めて意義深いものである。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

平成29〜30年度
・ドーパミン神経毒(ロテノンや銀ナノ粒子)を生後5日齢のラットに経口曝露し、多動性障害モデルを作成する。その後、自発運動量をモニターし、ラットの寿命である約2年間継続する。途中、脳組織のサンプリングを実施する。また、成熟ラットを用いてロテノンなどのドーパミン神経毒により寡動なパーキンソン病モデルラットを作成し、自発運動量を測定することによりDOHaD仮説の直接的証拠を得る。同時に、脳標本を得、DNAアレイ法に供することにより分子レベルでの知見を得る。
平成31年度
・曝露時期を生後5日齢の他に、生後6日、2週齢、及び4週齢で曝露し、自発運動量を測定することによりその変曲齢を推定する。
・上記各実験系で得られた中脳のDNAアレイを実施し、DOHaD仮説の分子レベルでの解析を行う。

今年度の研究概要

平成29年度ドーパミン神経毒性化学物質の新生期曝露による多動性障害モデルラットの作成と長期影響モニタリングの開始。
1.市販の妊娠Wistarラットを購入し、ドーパミン神経毒である農薬ロテノン(0〜3 mg/kg)はオリーブオイルに懸濁する。生後5日齢に体重を約10gの仔ラットを選別して、全量30μLを経口投与する。投与後、母親に戻し、3週齢で離乳する。5週齢からSupermex(室町機械(株))を用いて自発運動量の測定を開始する。防音箱の明暗は12時間サイクルに設定する。若年期の多動性障害を確認できたラットを選別し、長期モニターに供する(約72週齢を目処とする。)
2.ドーパミン神経系の発達障害は、カテコールアミン合成酵素に対する抗体を用いて確認する。摘出した脳組織を10%ホルムアルデヒド溶液に浸漬し、固定する。固定した脳組織はパラフィンブロックにする。5μm程度の脳切片を得、脱パラフィン後、通常の免疫染色工程を実施する。1次抗原抗体反応は低温で16時間以上行う。中脳黒質のカテコールアミン合成酵素の染色が低下していることを確認する。

関連する研究課題

課題代表者

石堂 正美

  • 環境リスク・健康研究センター
    統合化健康リスク研究室
  • 主任研究員
  • 理学博士
  • 理学
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