- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1719CD018
- 開始/終了年度
- 2017~2019年
- キーワード(日本語)
- 有機エアロゾル,反応メカニズム
- キーワード(英語)
- organic aerosol, chemical mechanism
研究概要
重要な大気汚染物質である有機エアロゾル(OA)の数値モデリングはここ十年で急速に進展したものの未だ半経験的な数値モデルが主流であり、化学反応の本質的な理解に基づいていない。本研究では、気相反応や粒子相反応の化学メカニズムを基にしたOAモデルを構築する。なかでも、気相反応として半揮発性の揮発性有機化合物(SVOC)の多段階酸化反応、粒子相反応として硝酸エステル・硫酸エステルの生成や、カルボニル化合物の重合反応などを明示的に計算するメカニズムモデルを新たに構築する。さらに、これらの化学反応メカニズムに基づいて、半経験的モデル(揮発性基底関数(VBS)モデル)を高度化して、二次有機エアロゾル(SOA)の生成過程や動態を明らかにするとともに、開発したモデルを微小粒子状物質(PM2.5)の予測計算や健康影響評価に活用する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
平成29年度には、気相反応の化学メカニズムモデルを構築するために、飽和蒸気圧や活量係数を推計するとともに、これらを考慮した化学メカニズムをモデル化する。また、化学メカニズムで記述されるSVOCの多段階酸化反応を半経験的モデルへ反映する。平成30年度には、気相反応メカニズムにおける化学成分との整合を取りながら液相反応の化学メカニズムモデルを構築するとともに、半経験的モデルへ適用する。合わせて重合反応を新たにモデル化することで、気相反応メカズムで考慮されていない、低揮発性SOAの生成過程を取り扱う。平成31年度には、これらのエアロゾルモデルをボックスモデルと3次元モデルに実装して、新規に考慮したSOA生成プロセスの寄与を評価するとともに、これらのモデルを活用してSOAの物理化学特性を明らかとする。
今年度の研究概要
第一に、気相反応メカニズムに基づくモデルを構築する。気相反応は最新のMCM v3.3.1を基にして、ガス粒子交換のための飽和蒸気圧や活量係数も合わせて推計する。さらに、ここで構築した化学メカニズムモデルを基に、半経験的モデルにおけるSVOCの反応経路や反応速度の計算モジュールを高度化する。特に、化学メカニズムモデルをもとに飽和濃度や酸化度ごとにSVOCの反応物と生成物を整理して半経験的モデルに反映することで、これまで非現実的に単純化されていたSVOCの多段階酸化反応を現実的に計算する。このことにより、従来はこれまでのVBSモデルでは反応によるSVOCの揮発性減少のみが考えられていたが、新規モデルではSVOCの揮発性を減少させる官能基付加反応に加えて、揮発性を増大させる分解反応を明示的に取り扱うことが可能となる。
- 関連する研究課題
課題代表者
森野 悠
- 地域環境保全領域
大気モデリング研究室 - 主幹研究員
- 博士(理学)
- 地学