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洪水に適応した都市空間構造のあり方とその効果の検討(平成 28年度)
A study on the way of urban space structure adapted to flood and its effect

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1517CD027
開始/終了年度
2015~2017年
キーワード(日本語)
環境学,環境創生学,持続可能システム
キーワード(英語)
Environmentology,Environment creation,Sustainable system

研究概要

地球温暖化に伴い、熱帯低気圧の発生や集中豪雨の頻度、強度等の異常気象の発生が増加している。日本でも同様の現象が確認されており、このまま進めば、将来の洪水のリスクがさらに高まると懸念されている。一方で、従来の治水対策はダムや堤防等といったインフラ整備が中心であり、これ以外の新たな対策はさほど検討されてこなかった。本件旧では、将来の都市空間構造のあり方を考える上で、洪水リスクを軽減する住宅選択や商業業務の建物配置等を行う新たな適応策を検討する。そして、この適応策による効果を、大都市を多く含む神奈川県と地方の代表である三重県を対象に、直接的な被害の軽減を経年的に推計する。また、推計された直接被害を経済評価モデルに組み込むことで、産業部門別の間接的被害を算出する。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:

全体計画

 27年度は、まず、国内の洪水対策に関する政策や検討段階にある事例、そして既存研究等の動向をレビューする。さらに、海外におけるハード面・ソフト面の洪水対策にも焦点を当ててレビューする。これらのレビューから、国内外の洪水対策を把握し、それぞれの国で行われている洪水対策をまとめる。また、神奈川県及び三重県の洪水対策の担当者に直接インタビューを行い、現在実施している対策や将来に向けて検討中の対策に関する情報を収集する。これらの情報収集から、神奈川県及び三重県の洪水対策と内閣府や他の地域での対策と比較し、各県の洪水対策の状況や特徴を把握する。次に、神奈川県及び三重県における社会状況を把握する。ここで対象とする社会状況は、それぞれの県内の人口や建築物に関する情報(建て方(戸建て住宅、集合住宅)、構造(木造、非木造)、延床面積、住宅の地区年数等)、インフラ等である。これらの情報を各県の統計資料をもとに収集し、収集したデータは地理情報システム(GIS:Geographic Information System)を用いてデータ整備を行う。一方、洪水対策や政策等のレビューの他に、洪水被害または洪水対策を経済的に評価した研究事例もレビューする。神奈川県及び三重県が公表している産業連関表のうち、一番新しい2005年の産業連関表の統合小分類(188部門)を用いて、経済評価モデルのインプットデータとして必要となる社会会計表を作成する。ここで、この社会会計表を作成する際、GISで推計した洪水による被害や洪水対策の効果を経済評価モデルに取り組むために、産業連関表の統合小分類(188部門)から建築物やインフラ等に関する部門を抽出する。抽出したこれらの部門は社会会計表の1つの産業部門として扱う。
 28年度は、平成27年度に情報収集した内容及び整備したデータをもとに、まず、研究分担者である大西は、将来想定される人口減少や少子高齢化等の社会状況を描写する。そして、その社会状況における構造別(木造、非木造)の建築物の耐用年数を考慮した建替えや解体等のライフサイクルのモデルを構築する。ここで、建築物が耐用年数に達した場合の建替えについては、同一場所に再度建替える場合(「BAUシナリオ」)と非浸水域に移転する場合(「浸水域撤退シナリオ」)の2パターンを考える。これにより、各時点における県内の建築物の需要量、世帯数や建物種類の構成、そして、必要となる住宅供給量が把握することが出来、各時点で住宅の需給バランスを調整が可能となる。しかし、このモデルの問題点は社会経済の変化を描写することが出来ないことである。このモデルは、人の年齢を動的に扱い、また、各年齢層における死亡率を考慮しているため、将来の各時点における総人口や労働人口は現在とはこと異なっている。つまり、将来において、人口減少や少子高齢化等を考慮した社会経済を描写し、その状況下における洪水被害や対策を考えていく必要がある。そこで、研究代表者の佐尾は、まず、大西が扱う2010年から2050年までの各時点の労働人口の変化分を経済評価モデルに反映させる。これにより、各時点の経済規模が変化し、それに伴い、財・サービスの中間投入や家計や政府の消費、企業や政府の投資等が経済状況に合わせて変化する。しかし、各モデルの基準年は異なっており、GISの基準年は2010年、一方で、経済評価モデルの基準年はデータの制約上、2005年となる。すなわち、モデル間の社会状況が異なっているため、GISで推計した労働人口の変化量をそのまま経済評価モデルに使用することは、いびつな社会の変化を与えると考えられる。したがって、GISで推計した数値を取り込む際は、基準年は異なっても、社会状況の変化率は一定という仮定の下、労働人口の変化率を経済評価モデルに組み込み、各時点の経済規模を擬似的に推計することを試みる。これを「人口の自然減少シナリオ」とする。
 最終年度は、まず、研究分担者である大西は、平成28年度に調整したライフサイクルモデルを用いて、各シナリオにおける洪水被害額(直接被害額)を把握する。また、洪水リスクを軽減する居住選択や商業用務の建物配置等の対策を行った際、この新たな適応策による被害額の低減効果を評価する。一方、研究代表者の佐尾は、平成28年度構築した経済評価モデルと本年度研究分担者の大西が分析した洪水被害(住宅への被害や労働人口の減少、インフラへの影響等)を組み込むことで、洪水氾濫による”間接的な被害”及び”適応策実施による効果”を推計する。前者は、洪水が発生する年は人口の自然減少による労働人口の変化率と洪水被害による住宅への被害や労働人口の減少等の変化率を同時に与え、一方で、洪水被害が発生しない年は人口の自然減少による労働人口の変化率のみ与える。これを「洪水氾濫シナリオ」とし、「洪水氾濫シナリオ」には「BAUシナリオ」と「浸水域撤退シナリオ」があり、構築した経済評価モデルに組み込むことで、シナリオ別の洪水氾濫による”間接的な被害”が推計される。また、後者はシナリオ別の”間接的な被害”を比較することで、”適応策の実施による効果”を把握することができる。さらに、洪水による被害を時空間別・部門別に定量的に表すことで、地図やグラフ等を用いて、洪水被害や適応策による効果を視覚的に分かり易いようにまとめる。さらに、適応策の効果と適応策の実施に要する費用を比較することで、その対策の効率性を定量的に把握することができる。これにより、効率的な都市づくりが可能となると考えられる。すなわち、将来における洪水被害を考慮した都市の在り方を検討することが出来、これを達成するための最適な都市空間の配置を示すことが可能となると考えられる。

今年度の研究概要

 28年度は、平成27年度に情報収集した内容及び整備したデータをもとに、まず、研究分担者である大西は、将来想定される人口減少や少子高齢化等の社会状況を描写する。そして、その社会状況における構造別(木造、非木造)の建築物の耐用年数を考慮した建替えや解体等のライフサイクルのモデルを構築する。ここで、建築物が耐用年数に達した場合の建替えについては、同一場所に再度建替える場合(「BAUシナリオ」)と非浸水域に移転する場合(「浸水域撤退シナリオ」)の2パターンを考える。これにより、各時点における県内の建築物の需要量、世帯数や建物種類の構成、そして、必要となる住宅供給量が把握することが出来、各時点で住宅の需給バランスを調整が可能となる。しかし、このモデルの問題点は社会経済の変化を描写することが出来ないことである。このモデルは、人の年齢を動的に扱い、また、各年齢層における死亡率を考慮しているため、将来の各時点における総人口や労働人口は現在とはこと異なっている。つまり、将来において、人口減少や少子高齢化等を考慮した社会経済を描写し、その状況下における洪水被害や対策を考えていく必要がある。そこで、研究代表者の佐尾は、まず、大西が扱う2010年から2050年までの各時点の労働人口の変化分を経済評価モデルに反映させる。これにより、各時点の経済規模が変化し、それに伴い、財・サービスの中間投入や家計や政府の消費、企業や政府の投資等が経済状況に合わせて変化する。しかし、各モデルの基準年は異なっており、GISの基準年は2010年、一方で、経済評価モデルの基準年はデータの制約上、2005年となる。すなわち、モデル間の社会状況が異なっているため、GISで推計した労働人口の変化量をそのまま経済評価モデルに使用することは、いびつな社会の変化を与えると考えられる。したがって、GISで推計した数値を取り込む際は、基準年は異なっても、社会状況の変化率は一定という仮定の下、労働人口の変化率を経済評価モデルに組み込み、各時点の経済規模を擬似的に推計することを試みる。これを「人口の自然減少シナリオ」とする。

外部との連携

東京都市大学 環境学部 大西暁生

課題代表者

佐尾 博志

  • 社会環境システム研究センター
    広域影響・対策モデル研究室
  • 特別研究員
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