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わが国を中心とした温室効果ガスの長期削減目標に対応する緩和策の評価に関する研究(平成 26年度)
Research on Evaluation of Mitigation Strategies to achieve Long-term Reduction Targets of Greenhouse Gases in Japan and the World

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 2-1402
研究課題コード
1416BA013
開始/終了年度
2014~2016年
キーワード(日本語)
低炭素社会,中期目標,気候変動,緩和策
キーワード(英語)
Low Carbon Society, Mid-term Target, Climate Change, Mitigation Actions

研究概要

環境基本計画では2050年の温室効果ガス排出削減目標として、1990年比80%削減が明示されている。2011年3月の東日本大震災以降の社会変化や節電などの意識変化、新たな需要創出によるグリーン成長といった視点は、長期目標達成のための対策・施策には重要であるが、従来の分析では十分考慮されていない。これらの検討には日本の社会経済シナリオの見直しと、長期目標に整合しかつ実現可能な短中期的な削減目標及び施策検討が不可欠である。
本研究では、日本を対象に東日本大震災以降の様々な社会変化を加味した将来のマクロフレームを定量的に分析する。特に、家庭エネルギーサービス需要モデルや物質ストック・フローモデルなどを改良して消費行動の変化や社会に蓄積されてきた素材ストックの維持・活用の影響を定量的に評価するとともに、これらの情報を応用一般均衡モデルにより整合的に評価・確認する。これを踏まえ、バックキャスティングモデルを改良して2050年の長期目標と整合した短中期の削減目標を分析し、実現のための社会経済シナリオや対策・施策を評価する。また、2030年までについては、技術選択モデルを用いてエネルギー技術の推移を詳細に分析する。これらを通じて、気候変動緩和策実施に必要な費用と便益を明らかにし、社会を牽引する産業や製品とその市場規模を分析するとともに、低炭素を目指した日本の産業構造の姿とグリーン成長のあり方を具体的に示す。
世界を対象とした分析では、IPCC第5次評価報告書における最新の知見を反映して世界と日本の排出経路を分析するとともに、適応も考慮した複数の社会経済シナリオ(SSPs)に対応した温室効果ガス排出量の推計と社会経済活動の変化を分析する。
これらを通じ、低炭素社会に向けて必要な施策を具体的かつ定量的に提示することが可能となり、低炭素で持続可能な社会構築に向けた環境政策立案に貢献できる。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

気候変動緩和策検討の基礎となる社会経済シナリオを、特に家庭部門やエネルギー集約素材に着目して検討し、2050年の長期目標達成のための日本の温室効果ガス排出削減経路およびその実現対策・施策を分析する。特に2030年までについては、詳細に分析を行う。さらには、世界を対象とした社会経済及び温室効果ガス排出シナリオ分析とリンクさせ、世界の気候変動緩和への取組も見据えた施策の評価を行う。

具体的には、以下の5つのテーマについて焦点を当てた研究を実施する。
(1):日本の長期排出削減目標達成のための排出削減経路を検討するとともに、他サブテーマの分析結果に基づき、削減目標を達成するために必要な社会・経済活動の姿を定量的に明らかにする。
(2):世界を対象とした統合評価モデルの信頼性向上のための手法開発及び、サービス需要モデルの結果を統合して、新シナリオプロセスの社会経済シナリオのエネルギーサービス需要部分に関する評価を行う。また、開発したモデルを用いて、世界を対象とした排出経路の推計を行う。
(3):2030年までを対象に、社会経済シナリオに応じたマクロフレームの定量化、および技術選択モデル・応用一般均衡モデルを用いて技術的・経済的・社会的側面からの詳細な評価を行い、排出経路実現の可能性を検証するとともに、温室効果ガス排出削減に向けた具体的な方策を提示する。
(4):ライフスタイルと家庭のエネルギー消費行動の関係についてモデル化を行い、低炭素社会におけるエネルギーサービス需要量を、ライフスタイルの変化を考慮して定量化する。
(5):鉄やセメント等のエネルギー集約素材が社会にどの程度蓄積し、再利用可能かを評価することで、2050年までの日本における素材生産の必要量について低炭素社会実現の観点から定量的に評価する

今年度の研究概要

(1)素材生産や家庭における対策を盛り込むことができるように、わが国を対象としたバックキャスティングモデルを改良する。また、日本を対象に、2050年に向けて低炭素社会を実現するために必要となる施策の検討を行う。
(2)統合評価モデルの出力の検証作業を行う。過去の再現性と直近の統計情報との整合性に関して、どこまで検証可能で、どこからが検証不能なのかを整理する。同時に新シナリオプロセスで検討されている社会経済シナリオSSPsの定量化を行う。
(3)東日本大震災以降のマクロフレームの変容について分析すると共に、様々な社会経済シナリオに応じた将来の産業や交通などのマクロフレームの検討を行う。技術選択モデルに関しては、地域性や産業規模、業種別の排出特性の反映、季節・時刻別の電力需要特性の反映など、詳細な分析に向けたモデルの改良を行う。
(4)日本を対象にした家庭部門におけるエネルギーサービス需要を推計するモデル(家庭エネルギーサービス需要モデル)を開発する。モデルでは、暖房、冷房、給湯、厨房、照明、その他動力の6種類のエネルギーサービス種を設定し、気候の違いや高齢化や家族構成の変化、またいくつかのライフスタイルの変化(外食化の進展、住宅種選択の変化等)を考慮したエネルギーサービス需要量を推計するため、日本を8地域程度に分割し、個人属性(性別、年齢階級)や世帯属性別(世帯分類等)に推計を行うこととする。モデルを用いて2030年までの家庭部門のエネルギーサービス需要量のなりゆきシナリオを作成する。
(5)素材需要のドライビングフォースとなる、サービス需要量およびその供給に要する社会インフラ、生産インフラなど財ストック量を推計する需要推計モジュールおよび生産技術と貿易構造を組み込んだ素材生産・循環フローモジュールを構築する。具体的には、需要推計モジュールについては既存のモジュールをより詳細な対策分析に対応できるよう改良する。素材生産・循環フローモジュールについては、鉄鋼の質を考慮した生産関数、地域別の生産技術の差異を記述できる輸出入関数の同定などを行う。

外部との連携

研究代表者は国立環境研究所が務めるが、サブテーマとしてみずほ情報総研ならびに京都大学の参画を得て実施する。

課題代表者

芦名 秀一

  • 社会システム領域
    脱炭素対策評価研究室
  • 室長(研究)
  • 博士(工学)
  • 機械工学,システム工学
portrait

担当者

  • 増井 利彦社会システム領域
  • 藤野 純一
  • 花岡 達也社会システム領域
  • 藤森 真一郎
  • 金森 有子社会システム領域
  • Silva Herran Diego
  • 長谷川 知子
  • 戴 瀚程
  • XING Rui
  • PARK Chan
  • MITTAL SHIVIKA
  • XIE YANG