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ナノ材料による神経系発達障害の評価系の開発に関する研究(平成 24年度)
Evaluation for neurodevelopmental deficit by nanomaterials

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1214CD019
開始/終了年度
2012~2014年
キーワード(日本語)
ナノ材料
キーワード(英語)
nanomaterials

研究概要

  ナノテクノロジーは、これまでの科学技術基本計画や新産業創造戦略において、推進すべき重要な政策として位置づけられており、産業発展のために必須の科学技術である。したがって、我が国が産業立国として21世紀の新たな産業技術をリードしていくためにもその基盤となるナノ材料の健康への影響、特に次世代への健康影響を明確にして、十分な対策を構築することが極めて重要な課題である。
  しかしながら、ナノ材料の有害性に関しての研究報告は混沌とした状況にある。それはナノ材料の特異的な物性にあるといわれている。ナノ材料では結晶のサイズが小さくなることにより、電子状態が変化し、通常の大きな物質にはないような性質が現れる。化学反応は、基本的に物質の表面で起こるが、物質がナノサイズになることにより単位質量当たりの表面積が大きくなる。この比表面積の増大が化学的反応性を高める。その他、小さくなることにより多くの物理化学的な変化が知られてきているが、身体の中での生物学的な作用は必ずしも明らかになっていない。このように、ナノ材料は評価困難物質とされ、その有害性評価は全く不明である。
  ディーゼル排気粒子に含まれているナノ粒子が、マウスの自発運動量に影響を及ぼし、モノアミン系の代謝産物量が変化するという報告がなされてきている[文献Particle and Fibre Toxicology(2010)7:7]。 そこで、第一に、本研究では銀ナノ粒子の影響をラットの自発運動量を指標とした行動試験で検出するための試験系の開発を行う。また、病理組織像の異常を検査するために、カテコールアミン合成酵素をはじめとするドーパミン情報伝達機構を構成するコンポーネント変動の有無を調べる。更に、こうした異常が、銀ナノ粒子による神経系の発達障害であるかどうかを調べる。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

平成24年度計画
初代培養ラット神経幹細胞を用いたneurosphereアッセイ法によるナノ材料の神経系発生毒性評価系の確立

平成25年度以降
1. 銀ナノ粒子によるラット行動試験
2. 銀ナノ粒子による行動異常ラットの分子生物学的解析

今年度の研究概要

ラット胎生15〜16日の脳胞から神経幹細胞を単離し、その培養系を確立する。脳胞から取り出した神経幹細胞は、これまでの予備実験において培養7日ぐらいから塊を形成しはじめ、2〜3週間で直径100〜200ミクロンの球状の塊を形成する(neurosphereの形成)。今回は、このneurosphereを用いて実験を行こなう。neurosphereを培養系に静置すると、表面から細胞が飛び出してくるのを観察している。neurosphereが培養皿に接着していると、飛び出してくる細胞も底皿を外側に向かって移動していくことが観察された。脳内の神経幹細胞もその他の神経系細胞も胎生期から新生期にかけて盛んに移動し、機能的な神経回路網を形成することから神経系細胞の移動は、高次脳機能形成に重要な現象で、培養系でその細胞移動を模擬できると考えられる。こうした神経幹細胞の移動に対して、ナノ材料、はじめに銀ナノ粒子がどのような影響を及ぼすかの評価を行う。銀ナノ粒子は、殺菌剤として古くから使われ、近年では脱臭剤や消毒剤として利用されている。

課題代表者

石堂 正美

  • 環境リスク・健康領域
  • シニア研究員
  • 理学博士
  • 理学
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