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軟体動物前鰓類におけるレチノイン酸受容体(RAR)の性状及び生理機能解析(平成 24年度)
Characterization and function analysis of retinoic acid receptor (RAR) in prosobranch gastropods

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1214CD013
開始/終了年度
2012~2014年
キーワード(日本語)
前鰓類,核内受容体,レチノイン酸受容体,レチノイドX受容体,インポセックス
キーワード(英語)
prosobranch gastropods, nuclear receptors, retinoic acid receptor (RAR), retinoid X receptor (RXR), imposex

研究概要

 前鰓類(巻貝類)のインポセックスは、有機スズ化合物により特異的に惹起されるが、その誘導メカニズムには、アロマターゼ阻害に伴うアンドロゲン上昇などではなく、核内受容体の一種・レチノイドX受容体(RXR)の活性化が深く関与することが、これまでの研究代表者らによる科研費研究(基盤(A) H21-H23年度)などにより明らかとなってきた。一方、研究代表者らは最近、哺乳類においてRXRと二量体を形成するレチノイン酸受容体(RAR)の遺伝子を、イボニシから単離することに成功したが、イボニシなどの前鰓類におけるRARの性状や生理機能は不明である。本研究では、軟体動物の前鰓類におけるレチノイン酸受容体(RAR)の性状及び生理機能の解析を中心に、RXR関連因子やペニス形成因子の探索も進め、基礎知見の獲得と蓄積を図る。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

 前鰓類のインポセックスは、船底防汚塗料などに使用されてきた有機スズ(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT))化合物により、ごく低濃度であっても特異的に惹起され、重症の場合には産卵障害を経て産卵不能に至ることから、個体群が減少したという種も報告されてきた。その誘導メカニズムについては、アロマターゼ阻害に伴うアンドロゲン上昇などの5種類の仮説が提出されてきたが、研究代表者らは追試の結果、そのいずれをも支持できないと報告するとともに、そもそも、軟体動物が脊椎動物と同様のステロイドを性ホルモンとして有するとの仮説に生物学的矛盾があること(ステロイド産生細胞が見出されず、ステロイド代謝酵素の存在も曖昧で、機能的なステロイド受容体が遺伝子レベルで見ても見出されないこと)を総説論文や著書等で主張してきた。また、前鰓類のインポセックスは、有機スズによる核内受容体の一種・レチノイドX受容体(RXR)の活性化を通じて誘導されることをin vitro及びin vivo での実験研究によって明らかにしてきた。しかしながら、RXRを介したインポセックス誘導メカニズムの全貌を明らかにするためには、RXR以外の核内受容体の種類と機能、RXRの二量体形成様式(ホモ二量体かヘテロ二量体か)、生体内リガンドや標的遺伝子、ペニスや輸精管の分化・増殖/成長・形態形成に関わる各種因子など基礎的な生物学的知見を含めて、明らかにすべき課題がなお複数残されている。
 一方、研究代表者らは最近、哺乳類においてRXRと二量体を形成することが知られているレチノイン酸受容体(RAR)の遺伝子を、イボニシから単離することに成功した。ナメクジウオやホヤ類を除く無脊椎動物からRARが単離された例はほとんどなく、無脊椎動物においては、イボニシなどの前鰓類を含め、RARの性状や生理機能がほとんど明らかにされていない。
 そこで、本研究では、軟体動物の前鰓類におけるレチノイン酸受容体(RAR)の性状及び生理機能の解析を進め、インポセックス誘導メカニズムへの関与の有無だけでなく、生理・生化学的な基礎知見の獲得と蓄積を図ることを目的とする。すなわち、研究期間(平成24年度〜平成26年度)のうちに以下の項目についてin vitro 及びin vivo での実験研究と解析的研究を進め、明らかにする。
1.RARの転写活性能及びRXRとの相互作用(イボニシ)
2.RAR及びRXRの軟組織における局在(イボニシ)
3.RAR及びRXR転写活性能の種差(イボニシ、ヨーロッパチヂミボラ、バイ)
4.コンピューターモデリングを用いたRAR及びRXRの生体内リガンド探索(イボニシ)
5.ペニス神経細胞、筋層細胞及び輸精管細胞の成長及び増殖過程におけるRAR及びRXRの発現(イボニシ)
6.ペニス形態形成因子の探索(イボニシ、バイ)
 以上により、軟体動物・前鰓類におけるRARの生理・生化学的特性及び機能を明らかにする。また、インポセックス誘導メカニズムへのRARの関与の有無を、RXRとの相互作用を通じて、種差とともに検討する。さらに、RARとRXRの生体内リガンドを推定し、雄性生殖器(ペニス及び輸精管)の分化や成長/増殖、形態形成に関わる各種因子を究明する。また、RARの系統進化に関する新たな知見を提供する。

今年度の研究概要

 イボニシから単離されたRARのアミノ酸配列と脊椎動物のRARとの相同性解析を行い、レポータージーンアッセイ法により転写活性を測定する。イボニシRAR遺伝子のDNA結合部位とヒトRARα遺伝子のリガンド結合部位とを融合した場合の転写活性能も調べる。イボニシのRARとRXRアイソフォームとの相互作用の有無について、ほ乳類細胞を用いたツーハイブリッドアッセイ法により行う。同時に、イボニシRARとイボニシRXRsが共存する場合の転写活性の測定も行う。また、生殖腺を中心としたイボニシの軟組織におけるRAR及びRXRの局在を、現在までに得られているRXR及びRARのcDNAを鋳型とし、DIG標識されたプローブを作成し、in situ hybridization 法により調べる。
 9種類のイボニシ神経ペプチド前駆体遺伝子とイボニシRXRの塩基配列に基づき、特異的プライマーを作製する。有機スズ、9cRA、およびRXRアゴニスト・アンタゴニスト処理したイボニシから食道環神経節・内臓神経節を摘出してmRNAを抽出し、PCR法で各遺伝子の発現レベルを比較し、RXR受容体の活性変化と神経ペプチド発現調節との関連を解析する。発現が変化した神経ペプチド前駆体遺伝子について、以後、重点的に解析する。RXR/RAR受容体による発現調節が示唆された前駆体遺伝子の塩基配列を解析してRXR/RAR結合部位であるDR1 siteをもつかどうかを調べる。

外部との連携

研究分担者:太田康彦(鳥取大学農学部獣医学科)
研究分担者:森下文浩(広島大学大学院理学研究科)
連携研究者:井口泰泉(大学共同利用機関法人自然科学研究機構・岡崎統合バイオサイエンスセンター)

関連する研究課題
  • 0 : 環境リスク研究分野における研究課題

課題代表者

堀口 敏宏

  • 環境リスク・健康研究センター
    生態系影響評価研究室
  • 室長
  • 博士(農学)
  • 水産学,生物学,解剖学
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担当者