ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

日本列島産トカゲ属の複数交雑帯の比較解析に基づく生殖隔離進化プロセスの研究(平成 24年度)
A study on evolutionary processes of reproductive isolation based on comparative analyses of multiple hybrid zones between the lizards of Plestiodon on the Japanese main islands

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1214CD007
開始/終了年度
2012~2014年
キーワード(日本語)
種分化,交雑帯,集団遺伝
キーワード(英語)
speciation, hybrid zone, population genetics

研究概要

生物の種多様性は種分化によって創出され,そのメカニズムの理解には,生殖隔離の進化プロセスの解明が不可欠である.不完全な生殖隔離によって維持されている交雑帯は,漸進的に進行する一般的な種分化の途中段階を観察可能な重要な題材である.日本列島とその周辺島嶼には,3種4系統のトカゲ属 Plestiodon (トカゲ科,爬虫綱) が側所的に分布し,それらの間に4ヶ所の交雑帯が形成されている.これらの複数の交雑帯の比較解析に基づいて,生殖隔離の強度とそれに影響を与えると想定される要因の関連を調べることにより,生殖隔離の進化プロセスの一端を明らかにする.

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

日本列島のトカゲ属の交雑帯は,伊豆半島周辺・近畿地方・中部地方・伊豆諸島八丈島の四か所に形成されている.これらの交雑帯には異なる遺伝構造のものを含み,交雑している系統の分岐年代・交雑帯の形成年代・生殖隔離機構などが互いに異なると考えられる.そこで,各交雑帯における遺伝子流動についてのパラメータを集団遺伝学的解析により定量化し,遺伝構造・分岐年代・交雑帯形成年代・隔離機構との関連を,交雑帯間の比較解析により明らかにし,漸進的な生殖隔離の進化プロセスについて考察する.
 各交雑体周辺の多数地点から多数標本を採集し,高解像度の遺伝子マーカーを利用した集団遺伝学的解析により遺伝子流動の速度・方向性を定量化する.また,集団遺伝学的パラメータから主要な生殖隔離機構の種類を推定し,分子系統・系統地理学的解析により各交雑帯を形成している系統間の分岐年代と交雑帯の形成年代を推定する.そして,隔離機構・分岐年代・交雑帯形成年代の関連を,交雑帯間で比較する.

今年度の研究概要

1. マイクロサテライトマーカーの開発

交雑帯における詳細な遺伝子流動パラメータの定量化のため,高分解能の遺伝子マーカーが必要となる.そのため,高速シーケンサーによるゲノムワイドのショットガンシーケンス(業者の受諾解析を利用)により,可能な限り多数のマイクロサテライトマーカーを探索する.

2. 伊豆半島と八丈島の交雑帯における遺伝子流動動態の解析

開発したマーカーを用い,すでにある程度の標本のそろっている伊豆半島周辺と八丈島の交雑帯について集団遺伝学的解析を行う.この結果に基づき,これらの交雑帯の比較解析により,伊豆半島周辺の交雑帯において,生殖隔離の「強化」が起きているかどうかを検証する.

3. 北陸地域における遺伝的構成の推定

中部地方交雑帯の北半部については,現時点では位置・遺伝的構成が明らかでないため,北陸地域の標本を採集し,DNA解析を行うことにより,その概要を明らかにする.

関連する研究課題
  • 0 : 生物・生態系環境研究分野における研究課題

課題代表者

岡本 卓