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水源タイプに着目したため池の富栄養化の駆動因解明と低減策の検討(平成 24年度)
Driving forces and mitigation measures of eutrophication of agricultural ponds focusing on water source types

予算区分
AQ センター調査研究
研究課題コード
1213AQ001
開始/終了年度
2012~2013年
キーワード(日本語)
ため池,富栄養化,水源,生物多様性
キーワード(英語)
agricultural pond, eutrophication, water source, biodiversity

研究概要

富栄養化はため池の生物多様性を低下させる主要因と考えられており、生物多様性を維持する上で富栄養化の駆動因の解明が求められている。一般に、貯水池の栄養塩濃度は水と栄養塩の流入出のバランス(収支)によって決定される。ため池の場合、こうした水・物質収支は水源のタイプ(集水域、ダム、河川など)によって大きく異なると考えられる。したがって、富栄養化の駆動因やその程度も水源タイプによって異なることが予想され、有効な富栄養化低減策を講ずる上で、水源タイプによる富栄養化構造の違いを把握しておくことが重要である。本研究では、ため池密集地域である兵庫県の北播磨・東播磨を対象に、1)池の水源タイプによって富栄養化の駆動因やその程度が異なるのかを明らかにすること、2)水源タイプに応じた効果的な富栄養化低減策を検討することを目的とする。そのために、集水域における負荷流出モデルと、池内部における水質予測モデルを統合した、ため池の栄養塩濃度の簡易な予測モデルを作成する。作成したモデルを用いて、富栄養化の低減策を講じた際の効果を調べ、水源タイプに応じた有効な富栄養化低減策を明らかにする。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

1.栄養塩予測モデルの作成と富栄養化駆動因の特定(H24)
本地域の代表的な水源タイプを把握し(たとえば、A 集水域のみ、B ダムからの流入、C 河川からの流入、D 井戸からの流入、E 排水の反復利用の5タイプ)、各水源タイプで15池程度を選定する。ため池の湛水期間の平均的な水質を把握するために、春から夏にかけて3回程度、富栄養化項目(TN、TP、クロロフィルaなど)の水質調査を行う。原単位法や係数法を用いて、集水域からため池への栄養塩の流入量を計算する。さらに、湖沼の栄養塩予測に広く用いられている統計モデル(Vollenweiderモデル)と統合させ、ため池の栄養塩濃度予測モデルを作成する。

2.富栄養化低減策の検討(H25)
作成したモデルを北播磨・東播磨全域のため池に適用し、ため池の栄養塩状態を広域的に地図化する。この富栄養化マップから生物多様性が潜在的に高いため池や水質改善が必要なため池を抽出する(対策の優先順位)。水質改善が必要なため池を対象に、富栄養化の低減策(負荷量の削減、導水による希釈など)を実施した場合の栄養塩濃度の感度分析を行う。その結果から各水源タイプにとって最も有効な富栄養化低減策を明らかにする。

今年度の研究概要

1.水源タイプの把握と調査対象池の選定
県・市町村・ため池管理者にヒアリングを行い、本地域の代表的な水源タイプを把握する。併せて、池の管理(水管理、受益面積、池干し頻度など)、集水域環境(土地利用、下水処理状況など)についても聞き取る。池の富栄養化に関わる環境条件(池の管理や集水域環境など)がばらつくように、各水源タイプで15池程度を選定する。
2.水質調査
ため池の湛水期間に3回程度(5・7・9月)、すべてのため池にて水質調査を行う。池の中心付近、水深0.5mの水を池の水質の代表値として扱う。測定項目はTN、TP、クロロフィルa量、フィコシアニン量、濁度、SS、AFDM、pH、EC、DO、水温、透明度とする。各ため池の水源の水(ダム、河川、井戸、農業集落排水などからの流入水)の水質調査も併せて行う。
3.水生植物調査
ため池の栄養塩予測モデルを改良するための変数として、水生植物の種と被度を調査する。H24年度は予備的調査として、もっとも水生植物の繁茂する7〜9月にかけて、抽水植物と浮葉植物の池全体に対する被度と沈水植物の有無を調べる。
4.集水域情報の取得と水質予測モデルの作成
GISの水文解析ツールを用いて5mメッシュの標高データ(DEM)からため池の集水域を求める。面源負荷量を求めるために、衛星画像、空中写真、既存の植生図等から土地利用データ(水田、畑地、樹園、山林、市街地、ゴルフ場の6種)を作成する。点源負荷量は畜産排水、工場排水、生活排水(公共下水、農業集落排水、コミュニティプラント、浄化槽などの処理別)について調べる。原単位法や係数法を用いて、栄養塩の流入量を計算し、Vollenweiderモデルを用いたため池の栄養塩濃度予測モデルを作成する。モデルによる予測値と実測値との残差を求め、他の環境変数(水生植物の被度や池干しの頻度など)との関係を調べ、モデルの改良を試みる。作成したモデルを用いて、水源タイプ毎に富栄養化の駆動因を明らかにする。

外部との連携

特に記載すべき事項はない

備考

当課題は「湖沼やため池における生物多様性損失の定量的評価に関する研究」(課題コード:1115BA003、課題代表者:高村典子、課題期間:2011~2015年度)にも関連。

関連する研究課題
  • 0 : 生物・生態系環境研究分野における研究課題

課題代表者

木塚 俊和