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西部北太平洋域における炭素同位体観測による黒色炭素粒子にの発生源寄与・広域分布評価(平成 22年度)
Black carbon

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1011CD009
開始/終了年度
2010~2011年
キーワード(日本語)
大気エアロゾル,黒色炭素,安定同位体,放射性同位体
キーワード(英語)
Atmospheric aerosol, Black Carbon, Stable Isotope, Radioisotope

研究概要

エアロゾルによる直接的な気候影響(直接効果)に関わる放射強制力は、エアロゾルの「量」(光学的厚さ)とともに「質」(光学的特性、特に単一散乱アルベド)に依存する。この単一散乱アルベドは、黒色炭素の僅かな量の変化によって決定的な影響を受けることから、その発生源、輸送・除去過程、およびその結果としての広域的濃度分布や季節変化を解明することが、エアロゾルの気候影響の予測における不確定性(IPCCレポートにおける大きなエラーバー)を減らすうえで課題となっている。 しかし、炭素系粒子の発生源分別はこれまであまり進んでいなかった。
 そこで、中国産の石炭燃焼から発生する黒色炭素と国内のディーゼル排気起源の黒色炭素を炭素安定同位体13Cの比δ13Cを用いて判別し、また、加速器質量分析法によって、黒色炭素中の放射性同位体14Cについて、非常に古いため14Cをほとんど含まない化石燃料の燃焼によるものと、14Cを多く含むバイオマス由来のものを分別する。これらの手法により、大都市の影響を継続的には受けないバックグラウンド観測点において採取した黒色炭素を分析することで、バイオマス燃焼起源と化石燃料起源を判別、さらに化石燃料起源のうち国内起源と中国起源を判別を目指す。
 さらに冬季〜春季のアジア大陸からのエアロゾルの長距離輸送は間欠的であることから、バックグラウンド地域でのエアロゾル濃度上昇の機を捉えてCO2を採取することで、大気中のCO2に対しても、化石燃料の種類の違いによるδ13Cの違いの検出を試みる。
 これらの結果をインバージョンモデル(RAMS/CTM/4DVAR)により解析し、黒色炭素の発生源別の排出インベントリ(Regional Emission inventory in Asia: REASiv))の改善、を実施し、最終的には改善された排出インベントリを入力データとした化学物質輸送モデルを用い、西部北太平洋地域における発生源別の黒色炭素濃度分布の再評価を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

今年度の研究概要

○ 研究代表者(兼保)および研究分担者(村山)は、同位体質量分析計(Thermo Fisher-MAT252)による黒色炭素粒子中の炭素同位体比を測定のため、昨年度に引き続き以下の作業を行う。
1) つくばで捕集した大気エアロゾルを用いた分析条件の設定。
2) 分析補助員による定常的サンプル分析の習熟 。

○ 研究代表者(兼保)は、アジア大陸起源気団の炭素安定同位体比を測定するため、小笠原父島において、PM2.5 (粒径2.5μm以下)エアロゾルを、新たに開発したPM2.5分級装置を装着したハイボリューム・エアサンプラーを用いることで石英繊維フィルターに大量に吸引捕集する。フィルター交換は現地での委託作業員により7日毎に実施。

○研究分担者(村山)は、 昨年度に引き続き輸送イベントが盛んとなる冬季〜春季に、昨年度に改造した静電捕集型ラドン濃度測定装置を用いて、陸起源気団の輸送状況をモニターする。

○研究代表者(兼保)は、富士山頂(旧富士山測候所)において、夏期に大気境界層内の大気および自由対流圏の大気を分けたサンプル捕集を行う。梅雨の末期にかかったことから有効なサンプル数が得られなかった昨年の失敗点を踏まえ、今年度は盛夏期に観測を実施する。ここでも、新たに開発したPM2.5分粒器を装着したハイボリューム・エアサンプラーにより山頂高度のエアロゾルを捕集する。

○ 研究分担者(大原)は、黒色炭素の排出インベントリと化学輸送モデルの整備、及び、地上観測データを用いて発生源別の黒色炭素排出量を逆推計するためのインバージョンモデル(RAMS/CTM/4DVAR)の調整を行う。

○研究分担者(内田)は、エアロゾル中の炭素放射性同位体の分析条件を確定し、福江島、小笠原父島において既に採取してあるエアロゾルの分析に着手する。

備考

研究代表者:兼保直樹(産業総合研究所)

関連する研究課題
  • 0 : その他の研究活動

課題代表者

内田 昌男

  • 地球システム領域
  • 主幹研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,地学,理学
portrait

担当者