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近未来予測のための古海洋学:温暖化に伴う気候モードジャンプの可能性(平成 21年度)
Paleoceanography for future prediction: a possibility of climate mode jump with global warming

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0610CD975
開始/終了年度
2006~2010年
キーワード(日本語)
アジアモンスーン,北太平洋,古海洋,気候変動,最終退氷期,ベーリング海,中深層水循環,有孔虫,放射性炭素,安定同位体比
キーワード(英語)
Asia monsoon, North Pacific, Paleoceanography, climate change, last deglaciation, Bering Sea, mid-deep water ventilation, foraminifera, radiocarbon, stable isotope

研究概要

本研究の目的は、東アジアー北西太平洋域を例に、アジア・モンスーンの変動とそれに伴う偏西風蛇行モードの変化が、DOCに象徴される急激な気候変動の増幅、伝播にどの様に拘っていたかを検証すると共に、間氷期における現在より温暖な気候モードの存在とその実態、制御要因を解明する事にある。そのため、最終退氷期以降、東シナ海、日本海、十勝沖、オホーツク海、ベーリング海における中深層水循環を復元し、アジアモンスーン強度変化と海洋循環との相互作用について解明する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

グリーンランド氷床コアの記録は、最終氷期の気候が不連続的な複数のモードからなり、数百〜数千年周期で温暖なモード(亜間氷期)と寒冷なモード(亜氷期)間でジャンプを繰り返した事(ダンスガード−オシュガー・サイクル=DOC)、最終間氷期には現在よりも温暖な気候モードが存在し、より寒冷な気候モードとの間でジャンプを繰り返した可能性がある事を示した。また、後氷期にも振幅は小さいが類似した周期の変動が存在し、後氷期初頭には現在より暖かい気候モードが存在した可能性が高い。これは現在の気候が必ずしも安定でなく、ちょっとした刺激でモードジャンプが起こる可能性がある事を示唆している。温暖化の進行に伴い、地球の気候は人類が未体験のモードに入りつつある。こうした近未来の気候変動に迅速かつ適切に対処するには、この未体験モードがどの様なものであり、そこへの移行がどの程度急激なのかを知る事が不可欠である。申請者らはこれまでの研究で、最終氷期にDOCに同調してアジア・モンスーンが大きく変動した事、それが日本上空での偏西風軸の南北振動を伴っているらしい事を示した。偏西風波動は中〜高緯度域の気圧配置と関係する事から、偏西風波動がDOCに象徴される急激な気候変動の増幅、伝播に重要な役割を果たした可能性がある。申請者らはまた、オホーツク海やベーリング海、北太平洋の表層および中深層水環境がDOCに連動して変動した可能性を見出し、アジア・モンスーン変動が、アムール川流出量、ポリニアの形成場の変化などを通じて北太平洋中・深層水の生成に影響を与えた可能性を指摘してきた。

今年度の研究概要

2006年ベーリング海陸棚斜面により採取したピストンコアを用いて、浮遊性・底生有孔虫化石の放射性炭素年代測定を実施する。浮遊性・底生有孔虫化石の年代差より見かけの中深層循環変動を復元し、表層水温変動記録、生物生産記録などと対比することにより最終退氷期ベーリング海の気候変動を解明する。最終的に他の海域で得られた記録とも相互に解析を行い、北半球亜熱帯から中高緯度域におけるアジアモンスーン強度とグローバルな気候変動との関連性を解明する。こうした目的を達成するために、H18年からH20年にかけ、東シナ海、日本海、十勝沖、オホーツク海、ベーリング海、などにおいて計20地点以上でピストン・コアを採取した。これらの海域毎に以下のような目標を設定した。1) 東シナ海の表層水塩分は、揚子江の流出量と負の相関を持つ。2) 亜極前線の位置は、大局的には偏西風の位置を反映する。3) 日本海北西部では、冬季モンスーン風により海氷が形成され、溶存酸素に富んだ深層水(日本海固有水)が形成されている。4) オホーツク海の表層水塩分は、アムール川の流出量を反映していると考えられる。5) 十勝沖では、北太平洋中層水の起源とその時代変化を復元する。6) 現在のベーリング海では、ポリニアの形成は稀で、中深層水の形成も僅かであるが、氷期にはこれが大幅に増加していた可能性が指摘されている。そこで、ベーリング海で中層水形成の有無や形成速度の時代変動を復元する。上記目的を調査するため、H18年より、アルケノン古水温、TEX86水温温度計、浮遊性・底生有孔虫炭酸カルシウム骨格の炭素・酸素安定同位体比、放射性炭素年代測定、陸源有機物指標バイオマーカー等の分析を実施している。これらの研究により、北半球における偏西風−夏季モンスーン−河川流出量−縁海の海洋環境、および偏西風−冬季モンスーン−海氷・ポリニア−北太平洋中層水のリンケージが解明されると共に、それらが、どの様にして急激な気候変動の増幅、伝播に拘っていたのか、現在より温暖な気候モードでは、こうしたリンケージがどう機能するのかが明らかになるものと期待される。

備考

研究代表 東京大学大学院理学系研究科 多田隆治教授

関連する研究課題
  • 0 : その他の研究活動

課題代表者

内田 昌男

  • 環境計測研究センター
    動態化学研究室
  • 主任研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,地学,理学
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