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生物圏環境研究領域における研究活動(平成 21年度)
Research Activities of the Environmental Biology Division

研究課題コード
0610FP017
開始/終了年度
2006~2010年
キーワード(日本語)
生態系,生物多様性,生態系機能,保全
キーワード(英語)
ECOSYSTEM, BIODIVERSITY, ECOLOGICAL FUNCTION, BIOLOGICAL CONSERVATION

研究の性格

  • 主たるもの:-
  • 従たるもの:

全体計画

地球上の各所にそれぞれの環境の特性と歴史を反映して多様で固有な生物相が見られること,その総体が生物多様性である.生物圏環境領域では,生態系および生物多様性の適切な保全・管理のあり方を明らかにするため、生態系を構成するさまざまな生物・物理環境およびこれらの要素間の相互作用に関する研究等を推進する。生態系の地域的な多様性と固有性に着目しながら,さまざまな人為的要因により、生物の生活,生態系を構成する生物の種類組成,生物のあいだの相互作用、生態系のなかでの栄養塩や炭素などの物質循環,さらに,そのほかの生態系機能に現れる影響を明らかにする。
生態系や生物多様性に影響を与えている人為的な要因にはさまざまなものがある.そのなかから,人間活動に由来するさまざまな汚染物質,人間が意図的・非意図的に関与して外部から侵入した生物,人間が作出した遺伝子組換え生物,土木的な環境条件の改変,空間的な土地利用パターンの変化,さらには地球レベルでの温暖化・環境変動などに注目する.これらの要因の影響を,個々の生物の生理的なプロセスから生態系全体の構造と機能まで,さまざまな視点から解明する.

今年度の研究概要

(1) 絶滅が心配される生物の保全に関する研究
湿原でのリモートセンシングデータから稀少植物の分布確率を推定する統計モデルをさらに精緻化するとともに,現在の調査地以外へ応用する際の手順を示す.分子遺伝学的手法を用いてマリモの出自を特定するための遺伝マーカーを確立する.全国的に分布範囲が縮小している淡水性車軸藻類に注目し,全国の湖沼での消長と水質との関係の解析を行う.また、これまでに収集した所在情報を整理し、高頻度で出現した種については種ごとの分布地図の作成などの検討を行う

(2) 生態系機能の保全に関する研究
沿岸帯のヨシの成育が土壌中の窒素循環に及ぼす影響を評価する。浅海域における干潟・藻場の生態系機能に関する研究を進め、生育地情報の共有化、底質酸化技術の比較検討を行う。土砂、栄養塩類の流入が湿原内の泥炭の分解およびPの循環に及ぼす影響を明らかにする実験を継続する.干潟底質のデトリタスの分解速度を定量的に評価すると共に、分解に影響を及ぼす環境要因の影響機構について新たなモデルを提示、検証する研究を開始する。

(3) 環境の変動やストレスが、生物と生態系に及ぼす影響に関する研究
青海草原の炭素収支に関する研究の一環として,光合成・呼吸特性の順応を中心に測定と解析を行う。また,チベット高原の標高変化に伴う気候の変動特性および生物季節相の変化に関する予測モデルの開発を開始する。日本国内の高山帯の生態系モニタリング調査地として選ばれた北岳の調査地で、長期継続可能で効率的な測定項目、測定方法を検討する.地方環境研究機関と共同して、野外での植物のオゾン被害調査及びオゾンストレスを遺伝子発現の検出によって診断する手法の改良を行う。、イネの葉における高温とオゾンの分子マーカー候補の有効性を評価する。重金属汚染土壌の修復を目的とした有用植物資源の活用に関する研究のため、セレン蓄積性の植物の地域種間におけるセレン耐性、蓄積性の解析を行う.

(4) 外来生物・遺伝子操作作物の定着・分散の実態把握と、その対策に関する研究
ナタネの除草剤耐性調査及び遺伝子解析を分担し、遺伝子組換えナタネの一般環境における生育・交配状況や、近縁種との交雑状況のモニタリングを継続する。遺伝子組換えダイズから野生種への遺伝子浸透に関する研究の一環として,種子生産能や低温耐性についての分子遺伝学的な解析を行う.都心水辺緑地および関東一円での淡水魚類の分子系統解析により,在来の地域集団が残存しているかどうかを2種について明らかにする。また,地理系統の分布境界に近いが,分布情報量の少ない関東地方の情報充実を進める。移入種ヌノメカワニナについて、原産地の推定と国内在来個体群との比較を行う.

(5) その他の研究
数値シミュレーションモデルにより,生態系が融合した際にどのような生態系がより種多様性の減少が顕著となるかを解析し,現実の生態系のぜい弱性の理解に役立てる.
石油代替資源としての利用が期待される炭化水素産生藻類に紫外線や変異処理をおこない、塩分耐性、低温耐性、高温耐性等の有用機能をもつ株を選抜する。

課題代表者

竹中 明夫