- 予算区分
- AF 奨励
- 研究課題コード
- 0808AF005
- 開始/終了年度
- 2008~2008年
- キーワード(日本語)
- ダイオシン受容体,発生,分化
- キーワード(英語)
- Aryl hydrocarbon receptor, Development, Differentiation
研究概要
ダイオキシン類は様々な組織で多様な毒性を発現するが、発生初期段階での組織特異的な毒性発現が極めて特徴的である。水腎症、口蓋烈など催奇形性作用はその典型例である。これらの毒性はAhR遺伝子欠損マウスでは生じないことから、AhRが介在していることは容易に予想される。本研究はその毒性メカニズムだけでなくAhRの生理的役割に関して新たな研究を展開し、ダイオキシン類の発育・分化毒性発現の解析を目指す。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
ダイオキシン受容体(AhR)は生体内の核内受容体で、薬物代謝酵素群の誘導制御の役割を担っている転写因子である。しかし生理的条件下でも分化初期段階で発現しており発生・分化の過程にも働いている可能性が指摘されている。ダイオキシンの発生・分化毒性発現の本態を、器官形成期の腎臓遠位尿細管を中心に分子生物学的・生化学的・病理組織学的観点から包括的に解析する。
今年度の研究概要
細胞周期・アポトーシス関連遺伝子およびAhR遺伝子の発現量をRT-PCR法で解析し、ダイオキシンのターゲット遺伝子を捉える。さらに組織内の細胞応答をin situで捕捉するために病理組織学的・免疫組織学的解析を行いその全貌を明らかにする。
1、 授乳期(必要であれば胎児期)ダイオキシン曝露マウス(生後1-5日齢)を作成する。
2、 ダイオキシン曝露マウスの器官(腎臓)形成期の主要な遺伝子の発現量に対するダイオキシンによる影響をマイクロアレイ分析により網羅的に分析する。そのうち阻害あるいは誘導が顕著な遺伝子に関して重点的に・個別的にリアルタイムRT-PCR法で分析して毒性発現との関連性を解析する。器官形成、細胞周期、アポトーシスに重要な役割を持つことが既に明らかにされているWnt4、 WT1、GDNF-alpha、Brn1、Sall1、TGF-beta、IL-1、P27kip1、P57 kip2、Bcl-2、Bcl-LX、Baxなどの遺伝子の発現量に及ぼす影響を調べる。同時にin situの毒性影響を蛋白レベルで明らかにするために免疫組織学的技法を用いて生化学的・病理組織学の両面から本態解明に迫る。
3、 ダイオキシンをリガンドとする核内受容体のAhR遺伝子欠損マウス(AhR-/-)を用いて同様な実験を行い、野生型との比較によりダイオキシンの毒性本態を明らかにする。
マウス腎臓は出生後10日前後かけてネフロンを形成する。特に遠位尿細管はこの間に細胞増殖とアポトーシスの協調作用により形態的分化と機能を獲得する。腎臓組織は部位特異的な形態や機能を有し、その分化が顕著で、しかも短期間に完了するため、発生・分化の過程を調べるのに適した器官である。しかもダイオキシンは特異的に遠位尿細管を障害する事を我々は見ている。ダイオキシンの発生・分化・発育毒性に焦点を当て、AhRの薬物代謝系以外の生体内役割を明らかにする。