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熱分解ガス化−改質によるリサイクルプロセスにおける環境安全(平成 19年度)
Environmental safety in the recycling process by using gasification and reforming technology

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0507CD409
開始/終了年度
2005~2007年
キーワード(日本語)
ENVIRONMENTAL TECHNOLOGY, AIR POLLUTION PREVENTION CONTROL, WASTE RECYCLING, WASTE MANAGEMENT, NOXIOUS CHEMICALS, ORGANIC WASTE, PYROLYTIC GAS, GAS REFORMING REACTION, IRON OXIDE REDUCING REACTION, COMPOSITE STRUCTURE
キーワード(英語)
環境技術,大気汚染防止・浄化,廃棄物再資源化,廃棄物処理,有害化学物質,有機系廃棄物,熱分解ガス,ガス改質反応,酸化鉄還元反応,コンポジット構造

研究概要

熱分解ガス化および改質法では可燃性ガスが生成される反面、多様な副生成物も生じる。後段のガス利用上、また環境への直接排出の面から環境安全特性を把握する必要がある。そこで、1)ガス化プロセスおける環境負荷物質の発生挙動とそれに対する影響因子の解明を行い、2)これにもとづき排出および発生抑制が可能な制御要素・技術に関し、投入エネルギーや残渣の発生などを総合的に検討して有効なガス精製プロセスを開発し、さらに循環型社会に対し総合的な適合性の高い適正な廃棄物処理および資源化技術の確立に寄与することをめざす。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

環境負荷物質の発生およびその特性把握に関する実験研究においては、熱分解ガス化反応管の出口および改質反応管の出口において、主要無機ガス成分をオンライン計測するとともに、低濃度無機成分、半揮発性〜揮発性有機成分、難揮発性有機成分について物質性状に対応したサンプリング-測定方法を適用する。低濃度成分の測定は、既存の測定機器を用いて行う。発生挙動の把握は、ガス化-改質操作条件との関係、原料とするバイオマス・廃棄物の組成との関係、それぞれの環境負荷物質の同族体/異性体分布などの質的なキャラクタリゼーションにもとづく解析を行う。操作因子のうち温度について、ガス化工程で600〜800℃、改質工程で600℃〜1000℃の範囲を検討・考察し、その他の因子として酸素および水蒸気の添加について検討する。さらに、得られた知見を応用して吸着法などによる制御技術を適用し、環境安全性の確保された総合的なシステムを組み立てる。次に、予測計算による環境負荷物質の発生挙動解析とシミュレーションモデルの構築に関し、廃棄物原料の元素組成、環境負荷物質の熱力学データおよびガス化-改質条件などを入力パラメータとして、化学平衡理論にもとづき生成ガス組成を出力とする予測計算を行う。得られる計算結果と実際の測定結果とを比較することで、各プロセス操作因子の評価および任意の操作条件における生成ガス組成の予測を行う。一方、とくに有機性環境負荷物質に至る反応経路の検討が可能な反応シミュレーションモデルの構築を行う。(17年度)

熱分解ガス化反応管および改質反応管を備えた装置を用い、原料に用いる廃棄物試料について、廃木材や都市ごみから他の種類に拡張する。廃プラスチック類の場合、他の廃棄物試料に比較してやや多く含まれる試料中の塩素および臭素元素からダイオキシン類や臭素系ダイオキシン類ほかが生成・排出される可能性が高い。そこで、実験研究では、環境負荷物質の中でも有機ハロゲン化合物類の発生特性の把握とそれによるリスク低減のための制御に注力する。すなわち、本申請者らの有機ハロゲン量の総括的な測定方法によれば、単に有機性ハロゲンの総量だけでなく、塩素および臭素の元素別の総量も求められるので情報の幅が広がる。この方法が個別の精密測定を補完し、簡便性と迅速性の点からスクリーニング手段となり得ることを利用して、効率的な検討を進める。
実験における装置操作条件の観点からは、主要成分改質と有機性環境負荷物質の分解効果の観点から、有効に機能する触媒類の試験をさらに拡大して行う。この場合、たとえば改質に有効な触媒と有機成分の分解に有効な触媒を複合的に適用することも効果的な適用方法の一つとして考えられるので、素材の選択にあたっては幅広く検討していく。また、ガスの滞留時間のように装置の大きさなどの仕様上の観点あるいは経済性の観点から考慮すべき事項があると考えられるので、総合的な視点をより一層強化して実験研究を行う。
各種環境負荷物質の安全で確実な制御が行えるように、上記触媒の複合的な応用のほか、通常大量の処理を要する排ガスに関しては、安価で量的な効率性が高く適用後の処理・処分に問題の少ない材料を用いることの重要性が高い。高効率の吸着材料を用いることが一手法になり、申請者らの従来の研究成果がこの点で重要な知見を提供するが、一方で、生成の段階でこれを抑制することが可能となれば、もっとも有効な技術的手段になると考えられる。下記の計算にもとづくシミュレーションの成果を合わせて最適な解を求めることとする。
廃プラスチック類を対象原料として用いた場合に生じる課題の一つは、ポリマーとしての分子サイズが大きく、また、用途により多種類の添加剤が通常含まれているため、比較的単純化してモデル化した計算では、多くの環境負荷物質の生成挙動の解析において他の場合より多くの影響要因を取り込む必要が生じることである。計算による予測解析の精度を向上させ、微量で複雑な組成にあるガス中環境負荷物質の挙動予測を詳細かつ的確に行い得る条件を整える。さらに、シミュレーションモデルに関しては、適用できる物質組成系、温度やガス雰囲気の条件などのパラメータの影響上の特性抽出などの点から検討の範囲を拡大する。(18年度)


熱分解条件では、ナフタレン等の多環芳香族化合物、およびベンゼン等の単環芳香族化合物が比較的高濃度で生成する。前者はいわゆるタール成分の一部として、後者は材料および触媒上への固体炭素析出の要因としてプロセスの阻害となるだけでなく、環境への排出に際しては、有害性の懸念される大気汚染源となる。従来の研究においても部分的に測定を行ったが、総合的な解析は今後の課題としてきたところである。そこで、ガス化-改質工程におけるこれらの化合物の生成に関し、検討する操作温度の範囲を広くとることで主要因子である温度の影響を明らかにする。ベンゼンについては、改質工程における水蒸気の適用量が増すにつれて発生濃度が増加することが明らかになっており、したがって主要ガス成分である水素ガスの収率向上にともなう濃度増加が生じ得る。また、ベンゼンは化学的構造が単純であり、共鳴化しているため非常に安定な化合物である。このため、改質工程が比較的低温で操作される場合には効果的な除去が困難な物質となっている。そこで、ベンゼンをはじめとしてトルエン、キシレン類に関し、基本的な生成と排出に関する諸特性を明らかにすることとする。
以上のように、ガス化における水素等の主要成分の改質生成と有機性環境負荷物質の分解効果の観点から、有効に機能する触媒類の試験をさらに継続して行う。この場合、改質に有効な触媒と有機成分の分解に有効な触媒の複合的な適用が効果的な適用方法の一つとして考えられるので、素材の選択にあたっては幅広く検討していく。また、滞留時間など装置の大きさなど仕様上の観点および経済性の観点から考慮すべき事項があると考えられるので、総合的な視点をより一層強化して実験研究を行う。
各種環境負荷物質およびガス利用等阻害物質の安全で確実な制御が行えるように、ガス化および改質反応が生じる高温・還元雰囲気において共存する成分間の反応等を利用し、環境負荷物質等の工程からの排出を抑制する方法について、研究分担者の葛西を中心に検討する。
また、改質触媒およびベンゼン等を選択的に酸化もしくは還元が可能な触媒を適用して、大量の処理を要する排ガスに関し、安価で量的な効率性が高く適用後の処理・処分に問題の少ない排出制御技術を開発する。従来、金属系の触媒が有機化合物の酸化分解に有効であることが知られるが、還元雰囲気におけるこれらの分解活性は明らかでなく、さらに水素濃度の高い還元雰囲気であることを利用した新規分解技術の開発可能性を検討する。これに関し、研究代表者の川本が研究協力者の井上と密接に連携して実施する。
以上の研究を通して、現在考えられるバイオマス、廃棄物を熱分解ガス化変換プロセスに適用した場合の潜在的な環境負荷物質の発生に関する諸特性の解明およびリスク低減が可能な制御対策に関する実験研究的および計算解析的知的基盤の集積が図れる。経済性の面での妥当性も合わせもち、環境に優しいガス化変換システムの確立に重要な環境安全基準を提示できると考える。(19年度)

今年度の研究概要

(1)環境負荷物質の発生挙動解析および発生特性に関する研究
平成17、18年度の研究から、ダイオキシン類の生成に関して多数のデータを取得し、代表的な工程上の条件と生成上の特性との関係を把握した。ただし、対象とする熱分解ガス化および改質反応の温度に関する条件および滞留時間、触媒に関する条件設定等に関し、未解明の条件範囲があるので、従来の実験装置を用いることによりさらに検討を進める。同時に、これまで蓄積したデータを総合に解析して、ダイオキシン類に代表される有機塩素化合物の発生特性を評価する。これに関しては、研究代表者の川本が分担者の小林および研究協力者の井上と密接に連携して実施する。
一方、熱分解条件では、ナフタレン等の多環芳香族化合物、およびベンゼン等の単環芳香族化合物が比較的高濃度で生成する。前者はいわゆるタール成分の一部として、後者は材料および触媒上への固体炭素析出の要因としてプロセスの阻害となるだけでなく、環境への排出に際しては、有害性の懸念される大気汚染源となる。従来の研究においても部分的に測定を行ったが、総合的な解析は今後の課題としてきたところである。そこで、ガス化-改質工程におけるこれらの化合物の生成に関し、検討する操作温度の範囲を広くとることで主要因子である温度の影響を明らかにする。
ベンゼンについては、改質工程における水蒸気の適用量が増すにつれて発生濃度が増加することが明らかになっており、したがって主要ガス成分である水素ガスの収率向上にともなう濃度増加が生じ得る。また、ベンゼンは化学的構造が単純であり、共鳴化しているため非常に安定な化合物である。このため、改質工程が比較的低温で操作される場合には効果的な除去が困難な物質となっている。そこで、ベンゼンをはじめとしてトルエン、キシレン類に関し、基本的な生成と排出に関する諸特性を明らかにすることとする。
以上のように、ガス化における水素等の主要成分の改質生成と有機性環境負荷物質の分解効果の観点から、有効に機能する触媒類の試験をさらに継続して行う。この場合、改質に有効な触媒と有機成分の分解に有効な触媒の複合的な適用が効果的な適用方法の一つとして考えられるので、素材の選択にあたっては幅広く検討していく。また、滞留時間など装置の大きさなど仕様上の観点および経済性の観点から考慮すべき事項があると考えられるので、総合的な視点をより一層強化して実験研究を行う。
以上の検討に関しても、研究代表者の川本が分担者の小林および研究協力者の井上と密接に連携して実施する。
(2)環境負荷物質の効果的排出抑制技術の開発
各種環境負荷物質およびガス利用等阻害物質の安全で確実な制御が行えるように、ガス化および改質反応が生じる高温・還元雰囲気において共存する成分間の反応等を利用し、環境負荷物質等の工程からの排出を抑制する方法について、研究分担者の葛西を中心に検討する。
また、改質触媒およびベンゼン等を選択的に酸化もしくは還元が可能な触媒を適用して、大量の処理を要する排ガスに関し、安価で量的な効率性が高く適用後の処理・処分に問題の少ない排出制御技術を開発する。従来、金属系の触媒が有機化合物の酸化分解に有効であることが知られるが、還元雰囲気におけるこれらの分解活性は明らかでなく、さらに水素濃度の高い還元雰囲気であることを利用した新規分解技術の開発可能性を検討する。これに関し、研究代表者の川本が研究協力者の井上と密接に連携して実施する。
以上の研究を通して、現在考えられるバイオマス、廃棄物を熱分解ガス化変換プロセスに適用した場合の潜在的な環境負荷物質の発生に関する諸特性の解明およびリスク低減が可能な制御対策に関する実験研究的および計算解析的知的基盤の集積が図れる。経済性の面での妥当性も合わせもち、環境に優しいガス化変換システムの確立に重要な環境安全基準を提示できると考える。
[研究協力者]井上研一郎・独立行政法人国立環境研究所・循環型社会・廃棄物研究センター・NIESリサーチアシスタント・ガス組成の解析と触媒試験の実施、解析

備考

研究分担者:小林 潤 独立行政法人国立環境研究所・循環型社会・廃棄物研究センター・研究員
葛西 栄輝 東北大学・多元物質科学研究所・教授

課題代表者

川本 克也

担当者

  • 小林 潤
  • 井上 研一郎