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鳥類体細胞を用いた子孫個体の創出(平成 17年度)
Creation of next generation using somatic cells in Aves

予算区分
AG 特別研究
研究課題コード
0507AG942
開始/終了年度
2005~2007年
キーワード(日本語)
鳥類, 体細胞, 生殖幹細胞, 細胞融合, 生殖巣キメラ, 細胞培養
キーワード(英語)
birds, somatic cells, germline stem cells, cell fusion, germline chimera, cell culture

研究概要


本研究は、従来の手法によっては絶滅を食い止められない鳥類種を最新の発生工学的手法によって救済することを目的とし、そのために必要となる新規研究技術を研究・開発する。
絶滅のおそれのある鳥類種は年ごとに増加しており、世界の9,797種の鳥類の12%にあたる1,186種が絶滅の危機にさらされている。国内においても、環境省の2002年改訂版レッドデータブックにあげられた鳥類は137種・亜種にのぼる。これらの鳥類種を絶滅の危機から救うためには、早急に、保護増殖プロジェクトを展開する必要がある。しかしながら、個体数が極端に減少した種は、一般に産卵率や受精率などの繁殖能力が低く、通常の自然繁殖で絶対数を増やすことは極めて困難である。
希少野生鳥類の体細胞の採取は生殖細胞を得るよりは遙かに容易で、加えて増殖培養も可能になった(Kuwana et al., 1996)。そのために、最も採取が容易な皮膚の一部から体細胞を取りだして培養し、これをもとに始原生殖細胞(PGC)を創り出すことができれば希少野生鳥類の個体増殖の効率的な増殖法になるはずである。なぜならばPGCさえあれば、我々が開発してきたPGCの増殖培養系、PGCを用いた生殖巣キメラ個体作製法、生殖巣キメラ個体から移植したPGC由来の子孫を得る方法を持っているからである。さらに、体細胞核を持つPGCを創り出すことが可能となれば、既に絶滅してしまった鳥類体細胞を用いて子孫個体を得、絶滅種を復活させることができることになり、既に絶滅した日本産トキ(体細胞は環境試料タイムカプセル棟内で凍結保存しており、その細胞は増殖培養可能)の個体復元も可能となる。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

体細胞を用いながら、クローン技術と異なって遺伝的多様性を持った子孫個体を作出する新規手法を、世界に先駆けて鳥類で開発するために以下の年次計画を遂行する。平成17年度(1)「異種間生殖巣キメラ個体による子孫作出」では、ニホンキジプライマーを用いたPCR法によるキメラ個体精液内のニホンキジ精子の産生を確認しながら、ニホンキジPGC/ニワトリ生殖巣キメラをニホンキジ個体と戻し交配を行って、移植したニホンキジPGC由来の子孫作出を図る。また、コジュケイの受精卵からPGC採取を行ってホスト胚へ移植、異種間生殖巣キメラ個体の作出を行うとともに、ドナー個体から精液採取を行って、精子凍結保存法を検討、これを保存する。またホオアカトキの余剰受精卵を用いてPGC採取、生殖巣キメラ作製を行う。並行してドナーPGCの増殖培養系の開発にあたる。(2)「ドナー体細胞の増殖培養と標識遺伝子の導入」では、ドナーの成体及び初期胚から体細胞を採取、これを増殖培養して各細胞種を選別して継代する。ドナー鳥類種毎に選別した細胞種をフィーダー能力面で評価して最適の細胞種を選定する。更に、選定した体細胞に標識遺伝子(GFP遺伝子)導入を行い、導入細胞の選別培養を行ってサブテーマ(3)での融合PGCの生体内追跡を行う。(3)「体細胞核を持つPGCの創出」では、ホストPGCの細胞核及びミトコンドリアDNAの不活化条件を詳細に検討し、細胞損傷を最小におさえながら核、ミトコンドリアを不活化する条件設定を行う。並行して選定したドナー体細胞とPGCとの融合条件を検討して効率的かつ再現性の高い融合法、融合条件を開発する。(4)「体細胞由来の生殖巣キメラ個体の創出」では、有核のPGCとドナー体細胞を融合したものを作製して、この融合細胞を移植して生体内での細胞運命を追跡する。平成18年度(1)「異種間生殖巣キメラ個体による子孫作出」では、先行して作製した異種間生殖巣キメラ個体の戻し交配による後代検定を継続するとともに、コジュケイ、ホオアカトキPGCによる生殖巣キメラ個体の飼育を行って、性成熟後に後代検定を開始する。(2)「ドナー体細胞の増殖培養と標識遺伝子の導入」では、体細胞の由来する個体発生段階によってどのようにPGC維持能力が変化するのかを詳細に検討し、フィーダー細胞の能力差がどの様な物質の差によるものかを追求する。(3)「体細胞核を持つPGCの創出」では、ドナー体細胞と不活化PGCを融合して創出する融合PGCをホスト胚に移植してPGCとしての細胞学的性質の保存性を評価、これをフィードバックすることでサブテーマ全体の融合PGC創出法を改良、効率化を図り(4)での体細胞由来の生殖巣キメラ作出の材料を提供する。(4)「体細胞由来の生殖巣キメラ個体の創出」では、サブテーマ(3)で作製した融合PGCを用いて生殖巣キメラ個体を作製、これを性成熟にまで飼育する。平成19年度(1)「異種間生殖巣キメラ個体による子孫作出」では、後代検定によって得た子孫個体のDNA配列の評価を行い、後代の生殖能評価を行って手法全体の効率検討を行うことで異種間生殖巣キメラ作製法の改良を図る。(2)「ドナー体細胞の増殖培養と標識遺伝子の導入」では、引き続きドナー細胞としてより効率の良い細胞系統を開発するとともに、フィーダー能力の高い細胞の条件検討を行ってPGCの増殖に必須な条件を絞り込む。(3)「体細胞核を持つPGCの創出」では、融合PGCを効率的に作製すると同時に、これをin vitroで増殖培養する条件検討を行い、研究全体の効率化を図る。(4)「体細胞由来の生殖巣キメラ個体の創出」では、前年度に引き続き融合PGCによる生殖巣キメラ個体作製を行うとともに、性成熟したキメラ個体とドナー鳥類との戻し交配を人工的に行って生殖巣キメラ個体の評価、キメラ効率の検定を行う。

今年度の研究概要

今年度は、実験鳥類種のニワトリ体細胞をモデルとして同じくニワトリ始原生殖細胞(PGC)との細胞融合条件と融合効率を検討した。融合条件を検討するためには予めニワトリ体細胞に外来遺伝子標識を導入する必要があるために、非ウイルスベクターを用いてGFP標識遺伝子導入を行い、導入標識遺伝子を発現する体細胞を得た。この細胞の核を単離する条件検討を行ったと共に、PGCの核を紫外線照射によって破壊する条件を検討して、再現性の高い照射条件を決定した。これと並行して、PGCと体細胞との融合条件検討を行って、融合細胞の創出効率の向上を検討、電気的細胞融合法との比較検討を行い、作出した融合PGCを直接、発生初期の胚に移植して一部の融合細胞が発生胚の予定生殖巣部域に導入されることを確かめた。

課題代表者

桑名 貴

担当者

  • 川嶋 貴治生物・生態系環境研究センター
  • 今里 栄男