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地球温暖化観測推進事務局の開設

【研究所行事紹介】

野尻 幸宏

 地球観測についての国際的な認識の高まりから,2003年から2005年にかけて,閣僚級の会合として地球観測サミットが3回にわたり開催されました。2005年2月のブリュッセルにおける第3回サミットでは,全球地球観測システム(GEOSS: Global Earth Observation System of Systems)の構築を目指す「10年実施計画」が行動計画として承認されました。GEOSSにおいては,地球観測は,地球規模の環境問題への対処にとどまらず,人間活動を支える資源の確保,国や市民の安全を守る防災といった面の必要性も高いもので,次の9つの社会利益分野,①災害,②人間の健康,③エネルギー資源,④気候変動,⑤水環境,⑥気象,⑦生態系,⑧農業と砂漠化問題,⑨生物多様性,が示されました。2005年2月の第3回サミットは,2004年12月のスマトラ地震の直後であったこともあり,津波防災対策に国際協力であたることが,中心課題のひとつとして取り上げられました。それと同時に,計画が承認された2月16日が京都議定書の発効の日にちょうど重なり,気候変動への対処における地球観測の重要性が特に強調されました。我が国は,地球観測サミットにおいては,事務レベル会合の共同議長を務め,国際合意の形成に努力しました。また,活動が開始された実行組織である地球観測に関する政府間会合(GEO: Group on Earth Observation)の活動でも,積極的な役割を果たそうとしています。

 我が国においては,国際的な「10年実施計画」の承認に先立つ2004年12月に,総合科学技術会議において,「地球観測の推進戦略」が策定され,今後10年程度を見通した我が国の地球観測活動の指針が示されました。推進戦略においては,地球観測は統合された包括的なものを目指すべきであるとされて,特定の府省・機関の活動で実施できるものではなく,府省・機関の枠を越えた連携・協力が重要であることが特に示されました。また,地球観測のカバーする範囲を15の分野に分け,それぞれにおいて体系的な取り組みが必要とされましたが,「地球温暖化」に関係する地球観測は重点的に推進すべき分野として,ニーズに対応した戦略的推進が必要とされました。

 推進戦略を受けて文部科学省は,科学技術学術審議会研究計画・評価分科会のもとに,地球観測全分野の府省・機関の連携した取り組みを進める組織として地球観測推進部会を置き,2005年6月から活動を開始しました。推進戦略には,「地球温暖化」のような特に重要性の高い分野については特にその分野の関係府省・機関連携を強化する連携拠点を設置することが求められています。環境省と気象庁は,地球温暖化の観測において特に重要な活動を実施しており,国内の観測活動の連携においてもその中核となるべきことから,拠点の設置における協力体制の検討を進めました。その結果,推進戦略の考え方を受けた地球観測推進連携拠点の第一号として,地球観測推進部会の了承の元で,合同で推進事務局を運営することになりました(図参照)

図 地球温暖化観測推進事務局の位置づけ
図 地球温暖化観測推進事務局の位置づけ

 推進事務局は,国立環境研究所地球環境研究センター内に設置され,本年4月からその活動準備に入りました。体制が整ったこの9月19日には,開所式並びに記念セミナーを開催し,大山ホールには約120名の関係者が参集しました。記念セミナーにおいては,我が国で地球温暖化に関する観測に取り組む代表的な機関から最新の話題提供があり,加えて,気候変動モデル,データ統融合システム,といった観測データを活用する方面からの将来展望が述べられました。引き続く開所式においては,関係各省・機関から地球温暖化観測推進事務局の今後の活動への期待が示された後,基調講演として「地球観測の推進戦略」の策定にあたって総合科学技術会議ワーキンググループの座長を務められた本研究所元所長市川惇信先生(東京工業大学名誉教授)から「連携拠点の活動にかかわる地球観測の戦略的推進」という演題で基調講演を頂きました。市川先生は,分散個別化しがちな地球観測という活動を,いかに調整・協力のもとでシステム化させるかについて,持論を展開されました。今の我が国の科学技術予算システム下では,連携拠点が果たすことのできる役割はソフトパワーの発揮であるが,「納得のできる提案,納得のできる審議過程,納得のできる人々」という条件を備えれば受け入れられるものになるという考え方を示していただきました。連携拠点の運営を預かる私たちを含む関係者にとっては,力強い激励の言葉と受け止めて,これからの活動に生かしてゆきたいものです。ここで,本研究所は地球温暖化に関わる地球観測のキープレーヤーとして,国内連携の中心となり,かつ,国際リーダーシップを取る方向の活動を果たして行かねばなりません。関係各位の協力をよろしくお願いしたいと思う次第であります。

 (のじり ゆきひろ,地球環境研究センター副センター長)

執筆者プロフィール:

4月まで1年10ヵ月の間,内閣府(総合科学技術会議事務局)に勤務していました。東京への通勤は大変でしたが,バスで熟睡する技を身に着けました。研究に復帰したので,久々に観測乗船したいのですが,なかなかかないません。