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研究者に聞く!!

Interview

藤野純一(左)と芦名秀一(中央)と 岩渕裕子(右)の写真
藤野純一(写真左)
温暖化対策評価研究室主任研究員

芦名秀一(写真中央)
温暖化対策評価研究室研究員

岩渕裕子(写真右)
温暖化対策評価研究室NIESアシスタントフェロー

 2004年4月から5年間行われた「脱温暖化2050研究プロジェクト」(環境省地球環境研究総合推進費戦略研究開発プロジェクト《S-3》)では、2007年2月に「2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討」、2008年5月に「低炭素社会に向けた12の方策」、2009年8月に「低炭素社会に向けた道筋検討」と題する報告書を公表し、①2050年に日本の二酸化炭素排出量を70%削減することは技術的に可能で、②実現する方策は存在し、③経済的にもお得になりうる、ことを示しました。そこで今回は、脱温暖化2050プロジェクトに参画した藤野純一さん、芦名秀一さん、岩渕裕子さんに、研究にまつわるお話をうかがいしました。

2050年までに日本をワクワクする低炭素社会へ転換する

1:脱温暖化プロジェクトに60人の精鋭研究者が集結

  • Q: 最初に、お3方の大学でのご専門から今日までの研究歴をお話しください。
    藤野: 私は、1995年に東京大学大学院工学系研究科に入り電気工学を専攻、世界エネルギーシステムにおけるバイオエネルギーの資源量・経済性分析を行い、97年にドクターコースに進んで原子力の核燃料サイクルを含めた2100年までの持続可能なエネルギー供給システムに関するシミュレーション分析を行っていました。エネルギー供給と温暖化は表裏一体ということから2000年に国立環境研究所に入り、2004年からこのプロジェクトにかかわることになって5年間、幹事役としてプロジェクトリーダーの西岡秀三さんをサポートしながら、5つあるチームの統括班である「シナリオチーム」にも所属してシナリオづくりにも貢献しました。

    芦名: 私は2001年に東北大学の工学研究科航空宇宙工学専攻に進学し、2003年からは同じ大学の技術社会システム専攻のドクターコースに移って、非線形的な要素を入れ込んだエネルギーモデルを使って、岩手県を対象に温暖化対策をとった時にエネルギーシステムがどうなるか、将来CO2排出量がどうなるかとかということと、日本全体の電力システムを対象に、将来どんな電源構成になっていくのか、といったことをシミュレーションしていました。2006年から国立環境研究所にまいりまして、2006年4月からこのプロジェクトに参加し、エネルギーモデルをつくったり、低炭素社会のシナリオづくりといった面で貢献してきました。

    岩渕: 1998年に東京学芸大学教育学部に入学し、主に植物の系統分類の研究をしていました。卒業後は博物館に勤務した後、森林保全関係のNPOに勤めながら東北大学環境科学研究科の社会人コースに入学しまして、主に環境ビジネスを学びました。国立環境研究所には2008年にまいりました。低炭素社会研究の成果を市民にわかりやすく伝えるためにはどうしたらいいかということで、アウトリーチ活動を中心に取り組んでまいりました。
  • Q: では、今回の研究プロジェクトが立ち上がる背景からうかがたいと思います。
    藤野: 当時、日本では京都議定書の目標達成計画にきゅうきゅうとしていて、国の長期エネルギー需給見通しといいながら公的な見通しは10年先しかない状況でした。社会環境システム研究領域の領域長だった森田恒幸さんが、日本も長期のエネルギー需給なり温暖化対策を考えないといけないということで、環境省の地球環境研究総合推進費の中でも特に環境省がサポートする戦略研究開発プロジェクトとして、長期のエネルギー需給シナリオなり、脱温暖化シナリオというのを打ち込もうとして始まったと聞いています。
  • Q: 藤野さんはどの段階からかかわられたのでしょうか。
    藤野: 私はそれまでは世界のシナリオをやっていましたが、そのプロジェクトがあると聞いた時に、是非やらせてほしいと上司にお願いし、森田さんが2003年9月に亡くなられた後からかかわるようになりました。
  • Q: 芦名さんと岩渕さんはどの段階からですか。また、その時の印象もお聞かせください。
    芦名: 私が参加したのは、プロジェクトが始まって2年くらいたってからです。ちょうど、2007年2月に発表された70%削減のレポートを具体的な数字をもってつくり込もうとしている時で、これが低炭素社会の将来のイメージで、定量的にもこれは実現可能なんだというところから入りましたので、動きとしてはまさに一気に加速し始めたころでした。初めは、大学当時のエネルギーモデルを引き続きやっていました。「12の方策」くらいから、シナリオをつくり、現在はバックキャストということで、道筋をどういうふうにすれば、投資とかお金の面でベストかといったことをモデルを使ってシミュレーションしているところです。

    岩渕: 私は2008年1月にこちらにまいりまして、ちょうどその時に開催が迫っていた、第3回の日英共同研究プロジェクトのワークショップのお手伝いから入りました。ワークショップの中で世界各国のさまざまな研究成果が発表され、本当に世の中は低炭素社会に向けて動き始めているんだなと感じました。「12の方策」が2008年5月に発表されてからは、その内容をもっと詳しく掘り下げる仕事ということで、色々な事例調査をしてきました。

2:大転換が可能な2050年、手が届く70%という2つの数字のキーワード

写真:脱温暖化2050プロジェクト(S-3)の参画研究者
  • Q:今回のこの研究では、数字的に2つのキーワードがあると思います。2050年と70%ですが、この2つの数字はどんな形で出てきたものでしょうか。
    藤野: まず2050年ですが、それまでも2020年なり、2030年までの見通しというのはありました。しかし、エネルギーの観点からすると近過ぎるんです。たとえば原子力。その当時でも40年が寿命、今は、60年まで延伸しようとしています。火力発電所も30年とか、場合によっては40年持つんです。その中で低炭素社会を描こうとすると、2030年は意外と近い。そうかといって、IPCC等でやっているのは2100年のシナリオ。これだと、身近な人は誰も生きていない。ちょっと遠過ぎる。そういう中で2050年というのは、ちょうど孫の顔が見られるとか、自分も生きている、という人もいます。その一方で、社会インフラもだいぶ変わり得るというところで、選択しました。70%は、プロジェクト開始当時の2004年でも、産業革命以前からの温度上昇を2℃に抑えるという目標があって、そのためには、モデル分析の結果から2050年までに世界半減、日本では60%から80%減の幅が出てきました。そこで、中間の70%を目標にしてやってみて、できるかどうかを検討したんです。
  • Q:70%という数字を最初聞いた時、どんなふうな印象を持たれましたか。
    芦名: 私はエネルギーが専門ですので、理論的にはできなくはないだろう、という感じでした。極論ですけれども、すべて電化してしまって、再生可能エネルギーや原子力で供給してやればゼロも不可能ではない。ただ実際の社会システムやエネルギーシステムをつくり上げるということを、きちんと考えながら現実の中で70%削減を実現させるということになると、簡単ではないというふうには感じていました。
  • Q:岩渕さん、コミュニケーション的な立場から70%はどうですか。
    岩渕: 私が大学院で研究していたのは、身近な削減行動にどのらいの効果があるのかということで、レジ袋削減について調査していました。結果として、レジ袋を日本から全部無くしても、日本の温室効果ガスの0.23%ぐらいしか減らせず、身近な努力だけでは駄目だということがわかり、大幅に削減する取り組みが必要というのはよく理解できました。
  • Q:70%削減というのはお金もかかるし、経済も駄目になってしまうんじゃないかというイメージが非常に強いように思うんですが。
    藤野: それをコストと見るか投資と見るかですね。たとえば、消費者が最新型のエアコンを買ったとします。それは企業の利益になって、企業はそれを原資に次の研究開発投資をしたり、他の活動にお金を回せるんです。そうやってお金がグルグル回る流れをいい方向に回していけば、十分できうることです。逆にやらないと、新たな雇用も生まれないし、世界の競争にも勝てないんじゃないかとわれわれは思っています。

    芦名: 私は産業界では浸透しつつあると感じていて、今はまさにビジネスチャンスで、どこでチャンスをつかむかを企業も狙っているのではないかと思っています。私たち市民の側でこういう低炭素社会に是非したいといえば、企業の方も今考えているであろうそのための技術やアイディアを売る機会が増えていき、より多くの企業が協力していくのだろうと思うのですが、まだその意味での私たち市民からの声が十分に上がり切っていないのかなと思います。もちろん、市民レベルでさまざまな活動は既に進んでいますが、低炭素社会とか、CO2の話というのが多くの人にとってまだあまり身近ではないような印象があります。昨年のCOP15(第15回気候変動枠組条約締約国会議)で話し合われていることは、まさに、自分の生活であったり、暮らしであったり、そういったものに直結してくるんだ、と印象を持つということが十分ではないというふうには思っています。

    岩渕: 市民の側から何かアクションを起こしても、どんな効果があるのかよくわからないという話はよくうかがいます。また、国とか企業が頑張ってくれないと、という他人任せな考え方というのは市民の皆さんの中にもまだまだ根強いです。その中で効果的な取り組みを普及させていこうと思うと、既にある成功事例を紹介して、自分の身近な生活の中でもこういう仕組みや技術が入っていれば、ちゃんと快適な暮らしをしながら低炭素化できる、ということを、実感として理解していただくことが重要なのかなとは思います。

3:住みたい社会像を描き、バックキャスティングで「12の方策」を導き出す

写真:低炭素社会に向けて(第3 回日英共同研究プロジェクトシンポジウムより)
  • Q: 「バックキャスティング」という考え方を採り入れられていますが、どのようなものですか。
    藤野: 「2050年に70%削減する」というように、まず目標を決めて、これを実現するには何をやっていかないとできないのか方策を考えること、これが「バックキャスティング」です。
    たとえば、試験や締め切りのようにゴールがあって、それに向けて手順を決めて実行していくことは、普段皆さんがやっていることです。今回は2050年までに二酸化炭素排出量70%削減という、少し遠い将来で当時としては大変野心的な目標を設定したところに特徴があります。

    岩渕: 大学院でバックキャストという考え方を学んでいましたので、理想の社会を決めて、そこに向かってどうしていけばいいのかを考える、これが不可欠だということはよくわかりました。ただ市民の皆さんの間では、身近なできる対策から始めることが主流になっていますので、バックキャストを理解して実践していただくのは大変だな、と感じています。
  • Q: そこで、目標となる低炭素社会のシナリオが必要というわけですね。
    藤野: そうです。2050年70%削減だけだとワクワクしないので、まず、みんなが住みたいと思える社会像を描くことから始めました。文献調査や有識者に意見を聞くと、日本人は大きく分けて2つくらいの方向性を持っているんじゃないかと、わかってきました。都市型でさらなる技術発展により便利で快適に暮らしたいと思う人々もあれば、郊外型でゆったりと自然を大事にしながら暮らしたいと思う人々もいる、という2つの将来像(=ビジョン)です。その中で70%削減シナリオを描くのに大事なのは、人がどこに住み、どれくらい移動するとか、家の中でどんな電気機器を使うとか、より具体的な姿です。そうすることでどれぐらいのサービスが必要かわかります。そして、どのようなエネルギーをどれくらい供給するのか。それらをモデルでシミュレーションして数字にして「シナリオ」を作成しました。2050年の日本の社会経済全体の様子を示すとことは、非常に画期的なことでした。
  • Q: 今回のプロジェクトでは、投資費用についても報告されていますね。
    藤野: 70%削減を実現するのに必要な対策技術を導入するための費用は、GDPの約1%程度と報告しました。これは、使い方次第でコストにも投資にも成り得るものです。つまり、誰がいつどのような対策を行うか、そしてそれをサポートするためにどのような政策を打つかによって本来変わってくるものです。ここまでくると、これは研究なのか、政策支援なのか、とても難しいところがあります。研究者としては、もっと研究寄りの観点でやりたいという思いがありながら、現場は政策立案側にあり、その綱引きにいつも悩みがありました。

    芦名: いかに計算やシミュレーションから得られた数字を、現実のものとして見てもらえるようにするか、実感できるものにするかというところが、やはり常に大きな課題です。モデルをつくって計算すると、さまざまに数字が出てくるわけなのですが、実際の社会で「われわれ自身が財布からいくら出さなきゃいけないんですか」、というような話に落とし込まなくてはいけない。今の話にもありましたが、そこは果たして研究なのか、研究者がやるべき部分なのかというところも問題としてはあります。出してきた数字をどういうふうに解釈して、どういうふうに現実の中の数字として示していくか、ということに悩み続けているところです。
  • Q: 「12の方策」を実際に説明されて、皆さんにはわかっていただけていますか。
    岩渕: ただ「12の方策」だけをお話しするのではなく、そこに即した先進事例も絡めてお話しした方が、「本当にできるのね」、というふうに実感していただけるのかなと思います。

    藤野: 「70%削減」よりはピンとくるようです。「12の方策」を作成した時に、私が気をつけたことは、低炭素ということばをできるだけ使わないことでした。実際「方策12:低炭素社会の担い手づくり」にしか入れていないんです。
    「方策1:快適さを逃さない住まいとオフィス」は「そういったところ住みたくないですか、働きたくないですか」という問いかけです。「方策2:トップランナー機器をレンタルする暮らし」は、ちょっとイメージがわきづらいかもしれないけれど、「初期費用の高い最先端の省エネ機器が普段の生活ですぐに使えたらいいんじゃないですか」、「方策3:安全でおいしい旬産旬消型農業」は、「ハウスを使わず露地で育った生き生きした作物を食べたらおいしくて健康的ですよ」というように、皆さんに得になることをやっていけば、知らないうちに低炭素になるところを狙っています。これがもう1つの特徴かなと思います。

4:若い人たちへのメッセージの発信が大切

写真2点 左:海外にも広がる低炭素社会研究(AIM国際ワークショップ,2007年2月) 右:日本低炭素社会研究の手法を若手研究者に伝える(AIMトレーニング ワークショップ,2006年10月)
  • Q: 藤野さんは、COP15に関連して開かれたサイドイベントに参加されましたが、どんな印象でしたか。
    藤野: いろんな事例を目の当たりにしました。コペンハーゲンの街では、自転車道が至る所に整備されている。話を聞くとCO2のためにやった訳ではなく、1970年代に自動車が街中にあふれて、街の中が今の日本のシャッター街のようになった。町の安全を取り戻すために、自転車道路とか、バスを走らせたりして、中心部に人を呼ぶことを真面目に考えた。そうしたら、それがまさに今の時代の流れに合った。今、コペンハーゲンは2025年までにCO2ゼロを目指しています。デンマークにあるボルンホルム(Bornholm)という小さな島では、人口は減っているし、高齢者ばかりで日本の離島や村が抱える問題をそのまま抱えているような所ですが、CO2ゼロとブライトグリーンアイランド(Bright Green Island)を目指すということをうまく組み合わせて、島の活気を取り戻そうとしている。
    私は、結局、登る山はみんなどこも似たようなものだと思うんです。低炭素というのは1つの入り口。みんなが安心してそこで暮らせる、そういう将来の社会に向けて、いろいろなところから登って助け合っていけばいい。いい山に登りたいですね。
    バリのCOP13以降Low-Carbon Asiaというテーマで研究発表をしています。最近のCOP15のサイドイベントで、シンガポールの学生から質問がありました。若い人たちがこの問題に対して、COPの場でも関心を持ってくれていたし、COP自体、若手が来ることを歓迎していました。温暖化は政治家だけの問題じゃなくて、若い人たちの問題なんだということで、若手をよく集めていたというのが印象に残っています。
  • Q: 最後に、まとめとして、これから何をしなければならないかを一言ずつお願いします。
    藤野: 実際のシナリオや12の方策をどうやって実現させていくか、それからアジアにどうやって展開させていけるかです。このプロジェクトは60人の研究者の協力によってできたものです。チームプレーでここまでこれたことは、非常にありがたいことだと思います。

    芦名: 課題は2つあります。日本の国のシナリオを、いくつかは都道府県レベルのシナリオがありますけれども、じゃあこのつくばのこの場所でわたしは何をすればいいのかというところまではまだ十分やり切れてない。それを形にすることと、シミュレーションをする仕事の中で、現実に近いレベルまで何とか数字を見せることができるようにしたい。

    岩渕: 私は今、隣の牛久市の地域エネルギービジョン策定に関連して、家庭のエネルギーやCO2削減ポテンシャルの試算をしています。地方自治体の本当に小さいレベルにまで低炭素をどうやって浸透させていけばいいか、具体的な道筋や成功事例を示すことが、今一番必要なのかなと思います。
    それと私自身の課題として、低炭素の視点だけではなく、生物多様性の問題やその他の社会問題など、さまざまにつながり合っている問題を、どうやってバランスを取りつつ全体最適化していけばいいのか探り、それをわかりやすく市民の皆さんに提示できたらいいなと考えています。 
  • Q: どうもありがとうございました。

コラム

  • 今の延長で想像するか? 将来から創造するか?
     現在の社会トレンドの延長線上では、CO2排出量を大幅削減した低炭素社会にたどり着くことは難しい。そこで発想を逆にして、CO2を大幅に削減しつつも人々が快適に暮らしている社会を最初に描き、それを実現するにはどうしたらいいかを考えていくのはどうだろうか? 日本の2050年の有様を今、確実に見通すことは難しい。そこで、将来実現されるであろう社会として活力型のシナリオA、ゆとり型のシナリオBの2つを設定し、それらの社会が必要とするサービスを満たす技術やエネルギー源の組み合わせを検討することによって、日本低炭素社会が実現できるかどうかを分析した。
図1 バックキャスティングで低炭素社会を描く
現時点で取りうる対策を考えて将来像を描くのではなく、実現したい将来像を設定して、それを実現するために必要な対策を描き出すバックキャスティングで実現のための仕組みを導き出す。
図2 2つの将来像を提案
実現される将来には不確実性があることから、活力・技術志向のシナリオAと、ゆとり・足るを知る志向のシナリオBの2つの将来像を置いて、2050年の日本の社会経済像を検討した。
図3 (エネルギー)需要と供給の対策で70%削減は可能
低炭素社会の実現には、エネルギー需要側でのさまざまな技術・施策の導入だけではなく、エネルギー供給側での再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギー供給の拡大が重要となる。
  • 低炭素社会の家庭とはどのような姿だろうか?
図4 2050年低炭素社会の家庭の一例
 太陽エネルギーの利用、さまざまな高効率機器の開発・普及、家屋の高断熱・高気密化などにより、少ないエネルギーで必要な冷暖房・給湯需要を満たし、安全・安心で快適な生活を送れるようにする。また、家電や自動車などへの環境負荷表示システムの普及や環境教育の充実などにより、人々の行動をより低炭素へ導く仕組みをつくる。
  • 暮らしやすく、かつ省エネな住宅によりエネルギー需要半減
     2050年に向けて、A・B両シナリオとも世帯数は減少するが1人暮らし世帯の増加が予想される上、利便性の高い生活の追求などにより世帯あたりサービス需要は増加すると想定される。しかし、高断熱住宅、HEMS(Home Energy Management System)などの普及により世帯あたりサービス需要を削減するとともに、エネルギー効率が大幅に改善する高効率なエアコン、ヒートポンプ機器、給湯器、コンロなどを普及させることで、家庭部門のエネルギー需要を50%削減することは可能である。
図5 低炭素社会における家庭部門のエネルギー需要変化
図6 12の方策で低炭素社会を実現する
70%削減シナリオ研究の結果をもとに、どの時期に、どのような手順で、どのような技術開発・普及や社会システム変革を図れば低炭素社会が実現できるかを12の方策にまとめた。
  • バックキャストモデルによる低炭素社会への道筋検討
図7 2050年70%削減の道筋は描ける!
 シナリオA・Bで想定される将来のサービス需要は満たしつつ、2050年CO2排出量70%削減を実現するために、2000~2050年までに必要となる総費用が最も少なくなる道筋を検討した。検討にあたり、各種資料や専門家ヒアリング、市場調査をもとにして、約600種の施策(約400種の対策と約220種の政策で構成される)を考慮し、それぞれに導入に要する期間や費用を設定して分析に用いた。なお、方策4は方策1、2に含まれ、方策11、12は横断的方策であるため図中には削減量を明示していない。