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政策対応型調査・研究 化学物質環境リスク

研究概要(パンフレットから)

私たちの生活は、工業的に製造される化学物質によって支えられています。洗剤、建材、農薬、添加物などの衣食住のすべてにわたって様々な化学物質が使われており、その数は10万を超えるともいわれています。さらに、ダイオキシンなど人間活動に伴い多様な化学物質が非意図的に生成され、環境中に放出されています。私たちはこれら数多い化学物質に囲まれて生活しています。しかし、すべてが人の健康や生態系に影響を及ぼすおそれ(環境リスク)がないと考えられているわけではありません。その中には低濃度でも影響を与える物質が存在します。このような化学物質による環境リスクの低減や未然防止が、人類の未来にとって重要な課題となっています。国立環境研究所では、多様な化学物質汚染に対して、そのリスクを適切に評価する手法を開発し、その管理のあり方について科学的な根拠を提示することで、化学物質による影響を防止し、安心して利用できるような研究を進めています。

化学物質の暴露量を評価する

化学物質のリスク評価では、生体に対する量・反応関係を調べるとともに、化学物質が体内に取り込まれる量(摂取量)や化学物質をあびている量(曝露量)を評価する必要があります。曝露量は環境中濃度の測定などから算定しますが、化学物質の濃度は時間的にも生活する場所によっても大きく変動します。環境リスクを正確に評価するにはこのような変動を踏まえることが求められます。環境濃度の測定は行われていますが、曝露量を算定するには十分ではありません。また、すべての化学物質を調査することは不可能です。

そこで、水や大気の移動とそれに伴う化学物質の挙動を記述した数理モデルを開発することで、環境濃度を空間的な分布を含めて予測する研究をしています。また、化学物質の体内動態モデルを活用して化学物質の体内濃度の変化を評価する手法を開発しています。さらに、多方面で応用されている地理情報システム(GIS)を用いて、モデルによる推定とモニタリングによる測定値の解析、環境中への化学物質の進入量の推定、人や生物の生活する空間や習慣などを考慮した曝露量の推定などに関する研究をしています(図:1)。

(図:1)地理情報システム(GIS)を活用したシステム
(図:1)環境リスクをもたらす様々な物質について、その発生要因となる活動、排出量、環境媒体中の濃度、人や生態系への影響の各段階についてのデータや、これらをつなぐモデルを地理情報システム(GIS)を活用して一元的に管理し、リスク評価やリスク管理に活用するためのシステムづくりを進めています。

人の健康への影響を解明する

人の健康や生態系の異常が見出された場合は、その原因やメカニズムを解明するとともに、環境リスクを評価する必要があります。そのためには、化学物質がどのくらいの量でどのような影響を示すのか、量・反応関係を調べる必要があります。健康影響は、人間集団を対象とした疫学調査を行うとともに、マウスやラットなどの試験動物を人に代わるモデル動物として用いて解明します。当研究所では、遺伝子工学技術を用いて作成した特定の病気にかかりやすい遺伝子導入動物をもちいるなど、高感度に影響を検出できる手法を活用し、健康影響のメカニズムを解明しています。動物試験の結果から量・反応関係を調べ、この結果を人へあてはめます。化学物質に対する感受性は人によって大きく異なるため、高感受性の人たちへの影響を防ぐためには感受性の違いを考慮する必要があります。そこで、遺伝子解析の新しい技術を用いて感受性を支配する遺伝的要因を明らかにし、感受性を考慮したリスク評価手法を開発しています(写真:1)。

(写真:1)代謝ゲージを用いた有害化学物質の毒性実験
(写真:1)代謝ゲージを用いた有害化学物質の毒性実験

生態系への影響を解明する

複雑な生態系に対して化学物質が及ぼす影響について具体的に評価を行うことは容易ではありません。当研究所では、このような化学物質の生態系に対する影響を評価する手法について検討を進めています。一方、化学物質の現実のリスク管理の場面では、環境中のさまざまな生物を代表するものとして設定された試験生物に対する毒性の知見によって、化学物質の環境に対する影響の程度を把握することが広く行われています。このような試験手法については国際的な協調が図られており、経済協力開発機構(OECD)では各種生物を用いた毒性試験法のガイドラインとしてまとめています。当研究所では、このようなOECDのテストガイドラインなど国際的にリスク管理のための基準となる藻類、ミジンコ、ユスリカ、魚類を用いた試験法の他に、ユスリカやウキクサを用いた、新たな生態毒性試験法の開発、国際的に提案された試験法の評価・検証、テストガイドラインに示された試験条件の具体化などに関する研究を進めています。


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