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重点特別研究プロジェクト(平成13年度〜平成17年度) オゾン層の変動

オゾン層破壊の機構解明と将来予測

国立環境研究所ではILASおよびILASII衛星センサーによる南北両半球高緯度での時間的・空間的に密な測定が行われた利点を生かして、北極および南極域のオゾン層変動に関する研究を進めてきています。例えば、ILAS観測が行われた1997年春季の北極域では極渦と呼ばれる独特の空気の運動をしている領域の内側の、高度約19kmで約50%ものオゾン破壊が進行していることを見出しました。

またILAS-II によってオゾンホールの発生から衰退までの期間を追跡できた2003 年の南極上空のオゾン層では、8月上旬にオゾンホール発生の兆候が現れ、8月下旬頃から高度22km以下の領域でのオゾンの破壊が加速され、9月中旬には一定期間に破壊されるオゾン量が最大に達する様子を捉えることに成功しました。(グラフ:3)ILAS-II観測では、オゾンと同時に硝酸ガスやエアロゾルも観測が行われており、今後は極成層圏雲の生成や硝酸を始めとした窒素酸化物の除去過程も含めて、オゾンホールがどの様にして生成・成長し、衰退していくのか、の疑問に答えていきたいと考えています。

オゾン層の変動は、化学的なオゾン分解と成層圏での様々な力学−放射過程が複雑に結びついた結果、引き起こされていると考えられています。オゾン層破壊の将来予測を行う上で数値モデルは有力な手段となっています。火山噴火などの自然変動、オゾン層破壊物質や温室効果気体の増加あるいは減少に対し、オゾン層が如何に応答し変化するかを知るために、当研究所では東京大学気候システム研究センターと共同して大気大循環モデルをベースに、成層圏での化学プロセスを取り込んだ化学気候モデルや化学輸送モデルの開発を進めています。(図:4)オゾン層破壊物質であるフロン・ハロンの大気中の存在量が規制の結果、減少傾向に向かい始めるに至っていますが、その規制の効果はオゾン層の回復に結びついていくのか、規制効果を打ち消す可能性のあるその他の変化は存在するのか、を正しく評価するための研究を行っています。

グラフ3:流跡線解析を用いて求めた、1997年北極域のオゾン濃度変化の様子観
(グラフ:3)ILAS-IIで測定された南極上空のオゾン濃度の時間変化(2003年5月1から10月24日の期間)。高度22km以下の領域のオゾン濃度は8月上旬から既に減少を開始。8月下旬から減少量が増大し、9月中旬には一定期間内のオゾンの減少量が最大となる様子が捉えられている。

グラフ4:ILAS-IIで測定された南極上空のオゾン濃度の時間変化
(グラフ:4)成層圏化学気候モデルを用いて計算された南緯75度以南の10/20-11/10の期間で平均したオゾン全量。赤線はハロゲン濃度、CO2濃度、海面水温の全てを変化させた場合、青線はハロゲン濃度の変化のみを考慮した場合の数値実験結果。細線は各年の値、太線は5年の移動平均を取った値。

対策と影響

オゾン層の破壊は、地上に降り注ぐ紫外線量の増大をもたらします。紫外線の増大は、人の健康や生物に影響をおよぼすと考えられています。このため、疫学的な調査を通して、人の健康(例えば白内障発症)と紫外線増加との間にどの様な関係があるかを明らかにする研究を続けています。 また、日常生活での紫外線曝露量推定法の開発・精緻化を進めています。更に、紫外線によって引き起こされた植物の遺伝子損傷が白色光を利用して修復される(光回復)プロセスに関して、光回復に必要な酵素の活性がどのように変化するかを調べています。


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