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重点特別研究プロジェクト(平成13年度〜平成17年度) オゾン層の変動

研究概要(パンフレットから)

モリーナとローランドによって、フロンによるオゾン層破壊の可能性が指摘されて以来、四半世紀が過ぎました。この間、モントリオール議定書によるフロン・ハロン類の規制などオゾン層保護のための取り組みが行われてきました。その結果、成層圏での塩素・臭素量はピークに達し、今後は穏やかに減少すると考えられています。しかしながら、未だオゾン層の回復を確認するには至っていません。オゾン層の破壊の拡大は止まったのか、オゾン層の破壊は将来どうなるのか、オゾン層の破壊が人の健康や生態系にどんな影響を及ぼし得るのか、オゾン層を早く回復させるにはいかなる取り組みを行えば良いのかといった問題に答えるための研究がますます重要となってきます。国立環境研究所では、重点特別研究プロジェクト「成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明プロジェクト」を遂行していきます。このプロジェクトでは、人工衛星センサーILAS、ILAS-IIや、地上設置型測器による遠隔計測によってオゾン層の監視を行うと共に、観測データの解析や数値シミュレーションモデル等を駆使して総合的にオゾン変動の様子とその機構を明らかにしていくことを目的としています。

オゾン層の監視

1990年代に入って、南極ばかりでなく北極域でもオゾン層破壊が進んできていることが報告されてきています。また南極オゾンホールも2003年には過去最大のオゾン破壊量となるなど、オゾン層が回復に向かったと確信を持って言える段階には至っておりません。環境省では、成層圏オゾン層の状況を監視し、オゾン層破壊機構を解明するためのデータを取得することを目的として、ILAS(改良型大気周縁赤外分光計)ならびにその改良型のILAS-IIを開発し、それぞれを地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOSおよびADEOS-II)「みどり」「みどりII」に搭載しました。ILASは、1996年11月〜1997年6月末までの8ケ月間にわたり、またILAS-IIは2003年4月から10月末までの7ケ月間にわたり、オゾン層破壊に関する多くの貴重なデータの取得に成功しました。国立環境研究所ではILASおよびILAS-IIいずれの観測においても、データ処理運用システムの開発と運用を行ってきました。

ILASおよびILAS-IIは、太陽掩蔽(えんぺい)法という観測原理を用いており、高度分解能に優れた精度のよいデータセットを提供できる点が特徴です。更にILAS/ILAS-IIは、他の衛星センサーに比べより多くの種類のオゾン破壊関連物質を同時計測できる特徴も有しています。またILAS/ILAS-IIは最もオゾン破壊が深刻な南北両半球極域のオゾン層を高頻度で観測を行っていきました。当研究所ではILAS/ILAS-IIによって観測されたデータを処理して、オゾンはもちろんの事、硝酸、二酸化窒素、水蒸気、メタン、亜酸化窒素、硝酸塩素(ClONO2)等のオゾン層の変動に影響する多くの微量気体の濃度や極成層圏雲をはじめとする成層圏エアロゾルによる消散係数の高度分布を導出するためのアルゴリズムの開発・改良をしています。解析処理された大気微量成分の高度分布データは地上観測データ、気球観測や他の衛星観測データと比較を行う事で、その精度・確度を検証し後、国内外の研究者に広く提供され、オゾン層破壊に関連する研究に利用されています。例えば、ILAS-IIデータの検証解析では、オゾンの高度分布が、オゾンゾンデや他の衛星センサーによる観測結果との比較から、定量的な科学研究に利用可能な充分な精度を有している事が確かめられました。(グラフ:1)オゾン以外の物質に関してもその精度の検証を行っています。またより精度の高いILAS-IIデータを導出し提供するために、データ処理アルゴリズムの改訂やより高度なアルゴリズムの開発も進めています。

一方、地球環境研究センターと協力して、オゾンレーザーレーダーやミリ波オゾン分光計を用いた地上からのオゾン層の監視も行っています。オゾンレーザーレーダーによる成層圏オゾンの監視は1988年よりつくばで行っています。最近、これまでの観測データの再解析によってデータの精度を大幅に向上させる事に成功し、国際的な成層圏観測ネットワーク(NDSC)のデータベースへの登録を行いました。またつくスへの登録を行いました。またつくばや北海道でミリ波オゾン分光計を用いて、成層圏から中間圏に渡る高度領域で昼夜を問わないオゾンの観測を続けています。ミリ波オゾン分光計による観測からは、これまで知られていなかった上層大気でのオゾン濃度の季節変化を捉える事に成功しています。(グラフ:2)これらの地上観測は国際的な成層圏監視ネットワークの一部として位置付けられており、観測の希薄なアジア地域における貴重なデータの提供に貢献していきます。そのため、取得されたデータの質の向上に加え、観測高度領域の拡大のための改良など、測定手法のハード・ソフト面での改良にも取り組んでいます。

グラフ1:LAS-IIデータと各種検証データ
(グラフ:1)LAS-IIデータと各種検証データ(衛星センサーとオゾンゾンデ)のオゾン濃度の南半球での比較。左はNASAの衛星センサーHALOEとの個々のプロファイル同士の比較(赤がILAS-II、青がHALOE)。右は高度5km毎の各種データとの統計比較。ILAS-IIオゾンデータは測定高度の全領域で、ほぼ10%以内でどのデータともよく一致している事が確認されました。

グラフ2:ミリ波オゾン分光計を用いたつくば上空の成層圏上部から中間圏にかけてのオゾン混合比の季節変化
(グラフ:2)ミリ波オゾン分光計を用いたつくば上空の成層圏上部から中間圏にかけてのオゾン混合比の季節変化。成層圏上部の高度50km付近に見られる1年周期のオゾン濃度の変化に加え、中間圏では、60kmおよび76kmの高度域でお互いの位相が反転した半年周期の変動の存在が認められた。


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