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重点特別研究プロジェクト(平成13年度〜平成17年度) 地球温暖化

地球温暖化による影響と必要な対策

地球温暖化は世界の社会経済に大きな影響を及ぼし、その対策には大きな経済的負担が強いられると予想されています。特に、アジア太平洋地域において大きな被害が予想されていますが、一方で、この地域からの温室効果ガスの排出量が急激に伸びており、その対策が緊急の課題となっています。このため、アジア太平洋各国における温暖化による被害を的確に予測し、それを引き起こす温室効果ガス排出量の伸びと事前に対策を講じた場合の効果を体系的に明らかにすることが求められています。この要請に答えるため、アジア太平洋地域統合モデル(AIM)を開発しています。

AIMは、温室効果ガスの排出・気候変化・その影響という一連のプロセスを総合分析できる計算機モデルです。このモデルは、各国や地域の経済活動や気候変動だけでなく、それがその国や周辺地域の社会経済に及ぼす影響についても検討できるため、各種対策を総合的に評価することが可能です。特に、中国を含むアジア地域からの二酸化炭素排出量の増加が予想されるため、この地域について重点的に研究を進めています。

AIM排出モデルは、各種の技術の導入を考慮してエネルギー消費量を部門別に積み上げて推計するボトムアップ型のモデルと、市場均衡を基本にして長期的な経済活動の推移を予測するトップダウン型の経済モデルから成り立っています。これらを統合して、わが国において京都議定書を達成するために必要な温暖化対策税の税率や税率を軽減するするための方策、それらの経済影響を試算しています(グラフ:1)。

(グラフ:1)地球温暖化対策推進大綱・シミュレーション
(グラフ:1)『地球温暖化対策推進大綱』に基づいた気候変動枠組み条約の第1約束期間(2008年〜2012年)におけるエネルギー起源二酸化炭素排出量1990年比2%削減(破線)を達成するためのシミュレーションの実施。

地球温暖化は、長期的な気温や降水量の変化となって現れるとともに、短期的な異常気象の発生頻度の変化となって現れ、自然生態系や社会経済システムに種々の影響を及ぼすことが予想されます。影響モデルでは、農業への影響、水資源・水需給への影響、植生への影響、マラリアに代表される健康への影響などの予測を行っています。例えば、(図:4)は2100年におけるコムギの作物生産性への気候変化影響を示しています。異なる適応策実施条件で生産性をシミュレートし、適応策の効果についての検討を行いました。 途上国においては、灌漑と機械化による生産性向上の潜在力があるため、将来予測される気候変化の悪影響の相殺が期待できますが(適応ケース)、適切な適応策が施されなかった場合には気候変化による生産性低下は深刻なものとなることがわかりました(適応無しケース)。

(図:4)作物潜在生産性の将来変化・コムギ
(図:4)適応の程度を勘案した作物潜在生産性の将来変化(コムギ、2100年)
上:現状の気候条件を前提として推計したコムギの生産性
中:将来の気候条件下においても、現在栽培されている作物品種を継続的に栽培し、かつ現状と同時期に植え付けを行うケース(適応無しケース)
下:気象条件に応じて適宜作物品種・植付け時期の変更を行うケース(適応ケース)

地球温暖化プロジェクトのめざすもの

地球温暖化問題は今、新しい局面を迎えています。2010年に向けた対策の方針を定めた京都議定書が国際的に合意され、その達成が緊急の課題になっています。また、京都議定書以降2020年から2030年を目指した対策のあり方について、国際的な議論が始まっています。さらに、今後一世紀にわたる長期的な対策のあり方が問われています。しかも、将来の気候変動予測やその影響予測における色々な不確実さを少なくしていくことが必要です。地球温暖化問題は、巨大な不確実性を抱えながらも、現象解明から対策研究へとその重点を移しつつあります。

この新しい局面に対応するため、これまで国立環境研究所での研究蓄積をもとにあらたな展開を図ろうとしています。このプロジェクトの特徴は、社会科学や工学に重点をおいた大規模モデルと自然科学に重点をおいた大規模モデルの統合及び、炭素循環研究と炭素吸収対策研究の統合にあります。これによって、京都議定書及びそれ以降の地球温暖化対策が、地球規模の気候変動とその地域的影響を緩和する効果を推計し、中・長期的な対応方策のあり方を経済社会の発展の道筋との関係で明らかにすることができます。さらに、これらの対応方策をアジア地域の持続可能な発展に融合させる総合戦略について検討しています。


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