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重点特別研究プロジェクト(平成13年度〜平成17年度) 生物多様性

侵入生物の生態系への影響を探る

生物多様性を脅かす要因の一つとして、本来の生息地以外の場所に生物種が持ち込まれて定着する生物学的侵入があります。外来種の定着によって生物間相互作用が変化してしまうため、生態系に取り返しのつかない変化をもたらします。生物の進化過程の大きな時間スケールでは、生物種の移動・定着はよく起こる現象ですが、最近の人為的な生物種の持ち込みは、地域の生物多様性を損なうおそれがあります。我が国においては、一部の病害虫を除き、多くの動植物が規制を受けることなく輸入されており、侵入生物による生物多様性の減少が懸念されています。このプロジェクトでは、これまでに侵入した生物の生態的特性、侵入経路、分布拡大の情報を集めて、データベースの構築を行っています。また、侵入生物のケーススタディーとして、ヨーロッパから輸入され、花粉媒介昆虫として利用されているセイヨウオオマルハナバチが我が国の生物多様性(とくにハナバチ類に受粉を依存する野生植物や在来のマルハナバチ類)にもたらす影響を調査しています(図:3)。

(図:3)セイヨウマルハナバチ世界各地への輸出イラスト
(図:3)セイヨウマルハナバチは日本を初め世界各地に最も広く輸出されています。このハチが野生化すると、在来マルハナバチの衰退、雑種の発生、寄生生物の随伴侵入が心配されます。

遺伝子組換え生物の生態系への影響を評価する

遺伝子組換え生物の生態系影響評価手法を開発するため、既成の安全性評価手法の再検討と分子生物学的手法による安全性検査手法の開発を行っています。例えば、微生物を使って環境を浄化するバイオレメディエーションを行う場合には、現地の微生物群集の変化及び導入微生物の挙動を把握することが重要です。従来は、主として培養法で自然環境中の細菌群集を解析していましたが、これでは培養できる細菌(1%以下)のことしかわからないので、本研究ではPCR法などの分子生物学的手法を用いて環境中に存在するほとんどの微生物の挙動を解析しています。

近年、遺伝子組換え植物の栽培の是非が問題となっていますが、これは「遺伝子組換え植物の食品としての安全性」と「組換え植物(遺伝子)の生態系への影響」の2つの問題があります。このプロジェクトでは後者についての研究を行います。生態系への影響には組換え体の雑草化、近縁種への遺伝子の移行・拡散、遺伝子産物の毒性の3種類が想定されています。そのなかで重要なことは、組換え遺伝子が自然界へ分散できるかどうかの評価をきちんと行うことです。この目的のため、クラゲの発光タンパクの遺伝子(マーカー遺伝子)を導入した組換え体を作成し、暗所における葉の発光を指標としたた新しい影響評価法の開発を行っています(写真:2)。

(写真:2)シロイヌナズナ野生型、右の植物がホメオボックス遺伝子の導入により葉の形が変化した遺伝子組換え体
(写真:2)写真左の植物がシロイヌナズナ野生型、右の植物がクラゲの発光遺伝子(GFP遺伝子)の導入により暗所で葉が発光する遺伝子組換え体です。この発光した葉をマーカーにして組換え体の拡散を調べることができます。

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