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特別講演「大局を読む−次の環境問題は?」

講演者(西岡秀三)による回答

Q: 「大局を読む」このような考え方は重要な点だと思います。研究所の中で研究者たちがこのような話し合いを行っていますか。

A: 定期的、組織的にやっているわけではありません。しかし研究者は自分の研究を実施しながら、いつもいつも、つぎはどんな課題が重要になるだろうか、自分がどんな研究で貢献できるか考えており、それぞれに情報を集め、大局を読んでいます。そしてそれぞれが考えていることが、食堂での会話、研究者間のセミナーなどで、おりに触れて話し合われます。研究所全体としては、研究企画官室が担当して、新しい中期研究計画を立てる前に、こうした内外の研究者の考えをとりまとめて、つぎの研究所の研究方向を定めます。


Q: 科学の役目を強調されておられましたが、自然科学だけでなく人文・社会科学の寄与も重要と考えます。国立環境研究所におけるそのような分野の人の割合はどれくらいでしょうか。また研究職だけでなく、研究を支える技術職の役割りも重要と思いますが、どれくらいでしょうか。

A: 国立環境研究所の特色のひとつは、問題を総合的に解決するため自然科学だけでなく社会科学の研究者も配置した総合研究所であることです。全部で6つある研究領域のうちのひとつが社会環境システム研究領域で、約20人の研究員がおります。また循環型社会形成推進・廃棄物研究センターのような他の研究領域でも社会科学の観点からの研究も進めています。研究員数の割合では10%です。研究を支える技術職の大切さはいうまでありませんが、今の定員制約のもとでは施設整備で手いっぱいで、研究現場では研究者が自ら技術的な仕事をやったり外注でこなしたりしています。環境技術の伝承のためには、優秀な技術者集団の確保が課題です。


Q: 高レベルな先端技術も必要であるが市民レベルに学習効果を与える活動が必要であろう。組織全体の総合化された研究(テーマ)と共に市民に対して持ち分(分担)を付与できる方向性はないだろうか。また、研究者〜(行政)〜企業〜市民等々社会に対して何らかActionや改革につながらないだろうか。

A: 現実にそれぞれの環境で生活している市民・住民こそ、まわりの環境の善し悪しをもっともよく知っており、またそこでの問題解決に貢献でき、地域の環境の健全性を継続して保つ原動力です。そういった環境認識や問題解決のために必要な科学的知識の蓄積と普及が当研究所の役目のひとつと考えております。残念ながら、昨今の環境課題対応に追われて市民との交流が十分とは言えない状況ですが、今後とも協働の方向を強めたいと思っております。海外交流としては、特にアジアを中心としての研究展開を、温暖化防止、流域・水管理・越境大気汚染や黄砂などいろいろなプロジェクトで行なっています。


Q: おおかたの講演で人間対地球環境という図式で議論がなされていたが、人間も含めた地球環境問題というとらえ方はおかしいでしょうか。

A: 人間と自然の関係をどう捉えるかについては、いくつもの考え方があり、当研究所の研究者の中でも意見は違います。私個人の考えでは、人間と自然を完全に一体としてとらえてその持続性を考慮する立場を取ると、われわれの研究の時間的・空間的範囲を飛び越えた長期のやや抽象的な話になってしまう危惧があると思います。30年程度のスパンで、人間が原因となって起こしている現実の環境問題を解決するという立場からは、自然に働きかける人間活動、自然からの恵みを受ける人間と言う図式で両者の関係を捉えて、課題を解決していく立場が有効と考えます。


Q: 国立環境研究所では国内で起こっている松枯れについて取り組んでいますか。

A: 例えば森林総合研究所のような当研究所より専門の機関がありますので、本格的に取り組んでいるとは申せません。しかし、酸性雨の研究の一部で、佐竹研一主任研究官が松枯れの原因について取り扱っています。

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