健康影響
国内の研究状況等や国際的な動向に関する情報
   (1) 国内の研究状況や関連情報については 国内の研究動向へ
   (2) WHOなど国際機関の活動状況については WHO等の研究動向へ
IPCCの第3次評価報告(2001)の指摘
 IPCCは上記報告において、温暖化の進行を緩和するための温室効果ガスの排出抑制を中心とする対策(mitigation)を進めるほか、予測される温暖化によって発生が予測される影響とそれらへの適応策(adaptation)を評価・検討することが必要となっていることを指摘しており、各地域での研究促進を勧めています。現在、IPCCは、2007年予定の第4次報告の作成に向けて活動を開始しており、2001年以後のこうした影響分野の研究についても一連の成果をとりまとめる予定としています。我が国においても、同報告にインプットできるような関連研究が急務とされている状況にあります。
健康影響評価と適応策の枠組み
  健康への影響評価や適応策については、国際的には世界保健機構(WHO)、世界気象機関(WMO)および国連環境計画(UNEP)が共同で検討しており、また、各国レベルでも研究協力機関等を中心に関連研究が進められています。以下は、WHOがまとめている健康影響評価や適応策についての基本的な枠組みです。
  地球温暖化の進行によって熱波、異常気象、気温、降雨量等が変化し、また、それらによる修飾を通して、さまざまな健康影響が生じる可能性のあることが予測されています。健康に影響する直接的要因群には、
   (1) 気温の変化
   (2) 異常気象の増加
   (3) 大気汚染の悪化
   (4) 動物媒介性伝染病の拡大
   (5) 水-および食物-由来の伝染病の増加
   (6) 食料や水供給の不足拡大
などが挙げられています。また、これらによる健康影響として主要なものとして、
   (1) 熱ストレスによる死亡や熱中症など
   (2) 洪水と旱魃を介する影響
   (3) エルニーニョ現象との関連で発生する影響
   (4) 悪化する大気汚染による影響
   (5) アレルギー疾患
   (6) 感染性疾患
   (7) デング熱やその他アルボウィルスによる疾患
   (8) リーシュマニア症
   (9) ダニ媒介性疾患
  (10) げっ歯類によって媒介される伝染病
  (11) 飲料水に関連する疾患
  (12) 低栄養
などが列記されています。これらは総じて従来の公衆衛生(public health)が対象としてきた環境要因群そのものであり、地域保健・医療、予防医学、環境衛生、食品衛生、労働衛生等々に分野横断的に関わるため、各地域におけるとくに公衆衛生での取り組みが基本となります。
健康とは? 個の健康と集団の健康
 公衆衛生では長年、「健康」とは「病気や障害がないだけではなく、豊かに生活できている状態」と定義されてきました。つまり、この意味での健康影響とは通常考えられる死亡や疾病の次元だけでなく、生活影響までを包括する必要があります。したがって、食料生産等への影響を通した低栄養、さらには貧困の増加などへの対策、あるいは、日常生活全般に亘って広範囲に発生する各種の暑熱ストレスなどもこの分野の対応すべき範囲に入ると言えるでしょう。
 ここで、公衆衛生、とくにWHOなど対策を提言している場合には、基本的には集団レベルの健康が基本とされています。個の医学は臨床が、集団の医学は公衆衛生が、と言うのが原則となるでしょう。気候変動の健康影響の評価においても、国際的に見て、また、国内でも地域や集団別に見て、大きな影響が予測される脆弱人口に着目することが必要です。
人類集団レベルの健康への影響評価のためには「脆弱性(vulnerability)」の高い集団に対する対策が重要
  気候変動によって大きな健康(上述のように生存・健康・生活を包括した意味)への影響を受ける可能性のある集団は脆弱人口(vulnerable populations) と呼ばれています。こうした部分集団が大きければ大きいほど、当該社会の抱える健康リスクは大きくなります。WHOが指摘している国際レベルで見た脆弱人口には、未開発地域人口、遊牧民族、高齢人口、小児人口、慢性疾患人口、低所得人口、あるいはホ−ムレスなどが挙げられています。これらの脆弱人口へについての適応策となると、各種国際協力、国内の医療公衆衛生インフラ整備、経済開発政策、貧困対策等々多岐に亘るものとなります。