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判読例1.サンゴ間の競合

  浅海底に裸地ができると、一斉産卵の後に流れ着いたサン
ゴ幼生が着床し、そこから新しい群体(コロニー)が成長し
てゆきます。群体が成長して互いに近接するようになると、
競合が始まり、一定条件のもとに数年〜十数年が経過すると
ほぼ「極相」に達するようです。その例を見てみましょう。
 石西礁湖で最も普通にみられるのがテーブル状のミドリイ
シ(クシハダミドリイシなど)です。この種類は成長が早く、
他のサンゴを覆って光を独占してしまうことを生存戦略とし
ているので、下の写真のように空間を占めていることが多い
のです。これに対し、キクメイシなどの塊状のサンゴの中に
は、成長は遅いものの、サンゴ群体間の闘争(刺胞を伸ばし
て攻撃する)になるとに強いものもあります。
 下の写真はよく見られるパターンなのですが、テーブル状
ミドリイシが空間を占めながらも、攻撃力では勝るキクメイ
シ(中央やや左、褐色)を避けているようです。
                           
    



 下は、1980年代のオニヒトデの食害で裸地になった後にサン
ゴが回復しはじめた、1994年, K1測線, 25m位置の画像です。
画面中央の位置にキクメイシの仲間の群体が、その左手向こ
う側にテーブル状ミドリイシが成長を始めています。


        
         
 次の画像は6年後の2000年の夏。のキクメイシがテーブル
状ミドリイシに埋没しかけています。また、右手向こう側には
枝状のミドリイシが成長を始めています。
 このためか、キクメイシの上部のポリプが死に始めました
(褐色が薄れて灰色になっています)。上部から死に始めたと
いうことは、光が奪われたことよりも、周囲の水通しが悪くな
ってサンゴの上部にシルト(砂泥)が溜まりやすくなったこと
がストレスになったからかもしれません。



 次の画像は、2002年夏です。この時期になるとテーブル状ミド
リイシと枝状ミドリイシが完全にキクメイシを覆ってしまいまし
た。


        
         
 それでは、テーブル状や枝状のミドリイシには弱点はないの
でしょうか? 今度は、皆さん御自身で「画像選択」のページ
から、同じ位置の次年(2003年6月)の画像を、開いて考えてみ
てください。

 筆者が判読・推定したのは、以下のようなことです。
画像左側のテーブル状ミドリイシの1部が跡形も無くなり、右
側の枝状ミドリイシの枝もかなり折れている様子が見えるでし
ょう。実は2003年の撮影の直前に石西礁湖を台風が直撃し、こ
の時の風浪で両方の群体が破損してしまったのです。コドラー
ト右上隅にある、白っぽい塊状サンゴ(コブハマサンゴ)の群
体はびくともしていません。このように、両ミドリイシともに
浅海域で光エネルギーを得る点では他のサンゴより有利なので
すが、その反面、構造的に風浪の破壊力への抵抗力は小さいの
でしょう。
 また、オニヒトデは、塊状サンゴよりも、成長の速いミドリイ
シを好んで食べるといわれます。もしオニヒトデが存在しなけ
れば、サンゴ礁は成長の速いミドリイシだけになってしまい、
生物的多様性はそこなわれてしまう、という説もあります。
 そういえば、上の1994年のオニヒトデの食害からサンゴが回
復しはじめた時点では、ミドリイシだけでなく、塊状サンゴも
目立っていましたね。
 のキクメイシにとって不幸だったのは、たまたま着床した
位置が低く、ミドリイシとの水平方向の闘争にもちこめなかっ
たことだと推定されます。
 このように、サンゴ礁の長期変化には必ず3次元的な空間条
件が係わっています。しかし、1994年の画像を見ているかぎりが鉛直的に低い位置にあることは読み取れません。つまり2
次元的な画像では空間構造を十分には記述できないのです。
 私たちが、サンゴの記録の一部をステレオ撮影にしたのも
その点が気になったからでした。