影響の解明

   ・巻貝  ・魚類  ・鳥類  ・オーストラリアワニ / ・ダイオキシンの健康影響評価   ・脳神経系への影響評価



野生生物に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影響

 
■ 巻貝への影響
     
有機スズの影響でアワビ類やイボニシなどの雌に雄性化がみられる。

 魚類への影響

近年、漁獲量が著しく減少している東京湾の魚介類において、その原因究明を行うとともに内分泌撹乱現象がみられるのかどうか、フィールド調査をベースに生化学的手法、組織学的手法及び環境化学的手法を用いて現在精査中である。
 

 
鳥類への影響

東京湾に生息するカワウで生物では最高レベルのPCDD/Fs,PCB汚染がみられ,肝臓中濃度はおよそ10,000pgTEQ/g fatであった。さらに,国内未使用のPBBも検出された。毒性影響として,カワウ甲状腺の過形成が多く観察され,ダイオキシン類を初めとした化学物質との関係が示唆された。ダイオキシン類以外にも甲状腺ホルモンを撹乱するいくつかPCB代謝物も検出された。
 

 


■ 
西オーストラリアのワニ(クロコダイル)への影響

米国EPAの報告によると、フロリダのワニ(アリゲーター)が絶滅の危機に瀕している。ワニのオスの生殖器官が川の水に含まれる環境ホルモン― DDTなど―によってダメージを受け、卵の孵化率が低下しているのである。

よく似たケースである西オーストラリアのクロコダイルについて調査した。西オーストラリアのクヌヌラ地域は1964年から1974年まで周辺の綿花栽培プランテーションに435t ものDDTと412t ものtoxaphene が散布された。淡水と塩水に棲息する2種類のクロコダイルを選び、肝臓と内臓脂肪中にどれくらい農薬が残留しているか濃度を測定した。グラフ1に示すように、きわめて高い濃度のレベルで化学物質が組織中にいまなお残存していることが分かった。今後はクロコダイルの血液中の化学物質の濃度やオス、メスの生殖器官を組織学的に調べて環境ホルモンとの関係を調べていく。

 
 

 


        *上流CJ:ND

CJ: Crododylus johnstoni (淡水棲息)

CP: Crododylus porosus   (塩水棲息)

 
       

  
   内分泌かく乱化学物質・ダイオキシンの影響

 
 

■ ダイオキシンの健康影響評価

  ヒトのダイオキシン曝露量評価

胎児のダイオキシン類への曝露を評価する目的で、羊水、胎脂中のダイオキシン類濃度を測定した。
ダイオキシン類(PCDD+PCDF+Co-PCB)のレベルは、羊水で平均0.016pg-TEQ/wet-g、胎脂で平均2.39pg-TEQ/wet-gであった。羊水のレベルは成人の血清の1/4程度であり、ある程度胎盤の障壁があることが示された。

食事とダイオキシン摂取との関係を調べるため、3つの地域で母乳中のダイオキシン類濃度を測定した。必ずしも魚摂取の多い地域がダイオキシン類の濃度が高いわけではなかったが、個人レベルでは魚・肉類の摂取が多いとダイオキシン類の濃度が高い傾向が認められた。

母親のダイオキシン類の体内負荷量とそれによる生体の反応をモニタリングすることは、子への健康影響のリスクを評価する上で必要である。出産後1週間以内に母親から母乳の提供をうけ、母乳細胞中のCYP1A1の発現と母乳中のダイオキシン濃度との関係を検討した。非喫煙者の間では母乳細胞中のCYP1A1の発現とダイオキシン類濃度との間に相関が認められ、母乳細胞におけるCYP1A1発現のダイオキシン曝露のバイオマーカーとしての有用性が示唆された。


  

 
   ● ダイオキシンの甲状腺への影響

実験動物として妊娠ラットを用い、比較的低用量のダイオキシンを一回、経口的に投与することにより、生後の仔ラットの
甲状腺機能への影響を調べた。 母乳から肝細胞内にダイオキシンが入ると血液中のT4(チロキシン) 濃度が減少する。
これを調節するために下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌が高まる。ダイオキシンはこの甲状腺刺激ホルモンの
分泌を異常に高めることにより甲状腺の異常(過形成)を引き起こすことがわかった。



        図1 仔ラット甲状腺ホルモンT4へのTCDDの影響
      
 

        図2 ラット甲状腺へのTCDDの影響
      
 
   

        図3 ダイオキシンが甲状腺ホルモン代謝に及ぼす影響のメカニズム


         

 
   
  ■ 脳神経系への影響評価

環境ホルモンが脳・神経に及ぼす影響について、分子レベル、組織・器官レベル及び個体レベルで、動物実験により総合的に研究を行う。またその成果とMRI(核磁気共鳴イメージング)によるヒトでの研究の成果を踏まえて、最終的にはヒトにおよぶであろう影響について検討していく。

従来神経細胞は成体では新生しないと考えられてきた。しかし近年哺乳動物の脳内海馬の一部である歯状回の顆粒細胞層では成体であっても神経細胞が新生することが報告され始めた。そこで有機スズ化合物をラットに投与して海馬障害を引き起こし、同領域のアポトーシス(細胞脱落)と神経再生におけるグルココルチコイドの役割について調べている。
また、ラットを使った行動試験法によってホルモンかく乱によって生じる脳機能の異常を調べている。 


   

        

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 ラットを使った行動試験法