科学技術庁振興調整費
生活・社会基盤研究のうちの生活者ニーズ対応研究
「内分泌攪乱物質による生殖への影響とその作用機構に関する研究」

I. 内分泌撹乱物質の計測手法および評価手法の開発
1.内分泌攪乱物質の高感度分析手法の開発及びそれを用いた環境中濃度の把握
2.内分泌撹乱物質の評価手法の開発
II. 内分泌撹乱の発現メカニズムの解明に関する研究
1.分子レベルでの内分泌撹乱の発現メカニズムの解析
III. 生物界における内分泌撹乱の実態解明に関する研究
1.野生生物等における内分泌撹乱の実態の解明
2.ヒトに於ける内分泌撹乱の実態の解明


I. 内分泌攪乱物質の計測手法及び評価手法の開発
1. 内分泌攪乱物質の高感度分析手法の開発及びそれを用いた環境中濃度の把握
1-1. 内分泌攪乱物質の高感度分析法の開発と環境中濃度の把握
環境庁国立環境研究所 白石 寛明 (総合研究官)
通商産業省工業技術院 資源環境技術総合研究所 宮崎 章 (部長)

内分泌攪乱物質をリスト化し、環境媒体並びに生物試料中の内分泌攪乱物質の濃度を定量する簡易な一斉分析法を GC/MS を用いて開発すると共に、現在測定が困難な難揮発性物質を LC/MS で測定する手法を開発し、環境濃度の把握に応用する。
1-2. トリアジン系除草剤の環境中濃度の把握のための免疫化学測定法の開発とその応用
農林水産省農業環境技術研究所 石井 康雄 (室長)
神戸大学 農学部 大川 秀郎 (教授)

内分泌攪乱作用が疑われるトリアジン系除草剤の分析を免疫化学測定により簡易迅速に分析する手法を確保する。またそれを応用して、これら農薬の垂直分布や地下水汚染の可能性を評価する。
1-3. 生体内における外因性内分泌攪乱物質の非破壊多成分分析法の開発に関する研究
科学技術庁放射線医学総合研究所 湯川 雅枝 (主任研究官)

生物試料について、微少量/微小部位の元素の分析法として、PIXE 法及びプラズマ質量分析法を組み合わせて検討し、神経系/内分泌系にみられる内分泌攪乱と微量元素との関わりについての知見を得る。
1-4. 内分泌攪乱物質の食用品器具、容器包装中の検索と食品への移行性、並びに環境経由食品汚染の評価手法の開発
厚生省 国立医薬品食品衛生研究所 豊田正武 (部長)

各種の食品用器具、容器包装に含有される内分泌攪乱物質の検索と食品への移行性の検討を、HPLC、GC/MS、NMR 等の分析機器を用いて検索し、その実態を明らかとすると共に、それらの化合物の加工時における変化などをもとにした評価手法の開発を実施する。
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2. 内分泌攪乱物質の評価手法の開発
2-1. げっ歯類の子宮暴露によるスクリーニング手法の開発
(株)三菱化学安全科学研究所 池田保男 (部長)
協和発酵工業(株) 納屋聖人 (主任研究員)
広島大学 医学部 安田 峯生 (教授)

代表的な内分泌攪乱物質を用いて、経胎盤及び授乳暴露による胎児・新生児に対する生殖発生毒性の検出あるいは特長づける毒性指標の抽出・評価を行い、げっ歯類を用いた内分泌攪乱物質のスクリーニングとその影響同定のための検出法確立に資する。
2-2. ヒト由来ホルモン受容体導入細胞系によるスクリーニング試験技術の開発
(株)住友化学工業 金子秀雄 (マネージャー)
大阪大学薬学部 西原 力 (教授)
(財)化学物質評価研究機構 矢可部芳州 (部長)

ヒトエストロゲンレセプターαの発現プラスミド及びエストロゲン応答配列を含むレポータープラスミド (ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ) を培養細胞、又は酵母に導入し、あるいはレセプター内在性の細胞の場合はレポータープラスミドのみを導入し、それぞれの安定形質転換体を取得する。これら安定形質転換体を用いて、代表的な約十種類の化合物を典型基質としてレセプターの転写活性化を指標としたアッセイを実施し、応答性を比較検討する。また、代謝活性化の影響を評価できるアッセイ系を確立する。
2-3. 胎児期及び新生児期暴露による次世代生殖機能障害を中心とした影響に関する研究
(財)食品薬品安全センター秦野研究所 小野 宏 (所長)

内分泌攪乱物質の微小管重合阻止作用に基づく評価手法開発、生化学変化の解析及び、形態学的変化等、催奇形性解析による新生児への影響に基づく評価手法開発、胎児期暴露による軽度生殖機構障害個体の次世代における生殖障害・先天異常の発現に基づく評価手法の開発を行う。
2-4. 魚等の生物に対する内分泌攪乱作用の生物検定法の開発
環境庁国立環境研究所 白石 寛明 (総合研究官)
九州大学大学院 農学研究院 大嶋 雄治 (助手)
北海道大学 水産学部 原 彰彦 (教授)

数種の魚類を用い内分泌攪乱物質の暴露により発現するタンパク質や mRNA をバイオマーカーとして検出する生物検定法を確立する。定量性と簡便性を重視した RT-PCR 法や免疫化学的手法を用い、短期間の暴露で高度に影響を検出できるものとする。また魚の生殖関連の行動変化を指標とした検定法や慢性影響の評価として各種水生生物のライフサイクル試験法を確立する。
2-5. 職場環境に関わる内分泌攪乱物質の効率的な生物試験法の開発
労働省 産業医学総合研究所 宮川宗之 (主任研究官)

内分泌攪乱物質による生殖機能障害の発生防止や、国際的テストガイドラインにおける交配法中心の生殖毒性試験法見直しの動きに寄与するべく、簡便な精子毒性試験法や、血液学的検査による生殖毒性の予測可能性を検討し、効率的な雄性生殖毒性のスクリーニング法を開発する。また神経系高次機能 (学習・記憶) の変化を反映する行動・発達障害の評価方法を確立する。
2-6. 内分泌攪乱物質の情報科学的研究
環境庁 国立環境研究所 森田昌敏 (統括研究官)

内分泌攪乱物質と総称される一群の物質 (有機塩素系化合物、重金属と有機金属化合物、フタル酸エステル類、アルキルフェノール類、ビスフェノール A 及びトリアジン系除草剤等) の作用機構、用量−反応などの試験結果のデータベース化を行い、このデータベースを用い、物質の分類、等価換算方法の開発を行う。
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II. 内分泌攪乱の発現メカニズムの解明に関する研究
1. 分子レベルでの内分泌攪乱の発現メカニズムの解明
1-1. 性ホルモンレセプターと結合する化学物質の内分泌攪乱の発生メカニズムの解明
環境庁 国立環境研究所 遠山 千春 (部長)
横浜市立大学 井口 泰泉 (教授)
東京大学医学部 松島 綱治 (教授)
長崎大学環境科学部 有薗 幸司 (助教授)
埼玉県立がんセンター 川尻 要 (部長)

ア)エストロゲン、および内分泌攪乱物質の発生中のマウス胎仔への影響を調べる。妊娠の日をおって胎仔生殖腺の分化、精子・卵形成、エストロゲンレセプター発現、及び生殖腺の発生・分化に関与する遺伝子群の発現を調べると共に、投与マウスの成体での性ステロイド、生殖腺刺激ホルモンの分泌レベルとの相関を調べる。これにより、内分泌攪乱物質の標的となりうる器官、遺伝子群を特定し、化学物質によって引き起こされる生殖異常の発生メカニズムを、生殖腺のホルモン産生能及びホルモンに対する反応性を含めて明らかにする。
イ)ヒト及び魚類臓器由来継代細胞や土壌自活線虫である C.elegans を用い、核内ホルモンレセプターの転写因子との相互作用を調査する。その発現型としてはレポーター遺伝子を利用し、独自の内分泌攪乱物質の作用メカニズム評価系を確立することを目的とする。ホルモン活性として、主にエストロゲンやテストステロン活性を標的とするが、生体内免疫機能に関与している甲状腺ホルモン活性や P-450 遺伝子の活性化への内分泌攪乱物質の影響もスクリーニング可能か検討する。
ウ)乳ガン細胞系を用いて、内分泌攪乱物質と性ホルモンリセプターとの結合、結合体の転写制御メカニズム及びサイトカインの役割の解明等により、作用メカニズムを探る。
エ)生殖系、内分泌系由来の細胞マウスを用いて、性分化に関与する P-450 やその転写因子などの発現が内分泌攪乱物質によりどのように影響を受けるかをタンパク質、RNA、遺伝子レベルで調べる。また、どのようなメカニズムで標的遺伝子に内分泌攪乱物質のシグナルが伝達されるのかについて、多環芳香族受容体 (Ah) と他のホルモン受容体との相互作用を細胞生物学的に解析することにより明らかにする。
オ)ヒト・ラット・マウス由来の雄生殖器細胞を用いて、内分泌攪乱物質が関与する精子形成に関わるシグナル伝達機構とそれに伴う生殖細胞特異的な分子の発現変化を検索する。それにより、精子の発生・形成期での生殖細胞の分化・増殖に対する内分泌攪乱物質の影響メカニズムを明らかにする。
1-2. 高次系での内分泌攪乱物質の影響に対する分子レベルでの発生メカニズムの解明
厚生省国立医薬品食品衛生研究所 井上 達 (部長)
東京大学医学部 松島綱治 (教授)

内分泌系以外の系での影響及び分子レベルでの発現調節機構解明を、性分化関連分子の遺伝子発現及び化学物質との結合を指標とする内分泌攪乱物質の検出系の確立・応用、神経ネットワーク構築に対するホルモン並びに内分泌攪乱物質の影響、子宮腫瘍誘発モデルにおける内分泌攪乱物質の影響を通じて行う。
1-3. 内分泌攪乱物質による器官形成不全の解明
環境庁国立環境研究所 曽根 秀子 (主任研究員)
厚生省 国立がんセンター 中釜 斉 (部長)

生殖系・内分泌系臓器由来のヒト・ほ乳類組織を用いて、内分泌攪乱物質の性ホルモン受容体との相互作用及びがん関連遺伝子の発現変化を調べる。それにより、細胞の文化・増殖における内分泌攪乱物質の遺伝子転写制御の電子メカニズムを明らかにする。
1-4. 巻貝の性転換の機構の解明
環境庁国立環境研究所 堀口 敏宏 (主任研究員)

有機スズ化合物により特異的に巻貝類にインポセックスが引き起こされることが明らかにされており、その機構を明らかにするために巻貝類のステロイドホルモンとその代謝経路を明らかにすると共に有機スズ等の化学物質が及ぼす影響を in vivo で検討する。更に脳神経節から分泌される物質についても検討を試みる。
1-5. 海産魚における性転換機構の解明
水産庁中央水産研究所 山田 久 (部長)

マミチョグなど成熟が速く、生活史の短い魚類を用いて、受精卵から成魚に至る全生活史を通してビスフェノール A やノニルフェノール等の各種ゼノエストロゲンの暴露実験を行い、性比、成熟度 (魚体重に対する生殖腺重量の比) 、生殖腺の病理組織像などの形態的特長及び肝臓ビテロゲニン濃度や血中ステロイドホルモン濃度などの生化学的指標の変動を解明する。また、水中濃度と異常の程度との関係 (ドーズ・レスポンスの関係) を解析し、魚類成熟機構に対するゼノエストロゲンの影響を定量的に把握する。
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III. 生物界における内分泌攪乱の実態解明に関する研究
1. 野生生物等における内分泌攪乱の実態の解明
1-1. 淡水水生生物における内分泌攪乱の実態の解明
横浜市立大学理学部 井口 泰泉 (教授)

首都圏の河川及び比較的汚染の少ない河川に棲息する淡水魚類を何カ所か場所を変えて採集し、雌雄比、生殖腺の異常及び雄の血中ビテロゲニンの発現を調べる。一方、河水中の化学物質の濃度を測定し、生殖異常との関連を考察する。この調査を定期的に長期にわたって行い、国内の河川における淡水魚類への内分泌攪乱物質のモニタリングを行う。
1-2. 海産魚類における内分泌攪乱の実態の解明
水産庁中央水産研究所 山田 久 (部長)
広島大学 生物生産学部 飯島 憲章 (助教授)
九州大学 農学部 本城 凡夫 (教授)
水産庁 北海道区水産研究所 松原 孝博 (室長)

瀬戸内海のマコガレイの漁獲量、性比、生殖腺の成熟度、生殖腺の病理組織学的異常、ビテロゲニンなどバイマーカーの変動などを水産資源学的、組織化学的及び生理・生化学的に解明する。得られた結果を汚染度の異なる他水域での調査結果や魚類飼育実験結果と比較することにより内分泌攪乱物質の影響を総合的に評価する。
1-3. 巻貝等における内分泌攪乱の実態の解明
環境庁国立環境研究所 堀口 敏宏 (主任研究員)

インポセックスが観察されている種としてイボニシとバイ、また観察されていない種としてマダカアワビを対象に、その生殖巣及び附属生殖器官について解剖学的 (外部形態) 並びに病理組織学的 (性成熟の周期/季節変化など) に特長を記述する。また漁獲統計の解析を行う。これにより内分泌攪乱/個体群現象の実態の解明と把握を行う。
1-4. 長寿命生物における内分泌攪乱の実態の解明
環境庁国立環境研究所 柴田 康行 (室長)
愛媛大学 農学部 田辺 信介 (教授)
北海道大学 水産学部 小城 春雄 (教授)
(財)山階鳥類研究所 杉森 文夫 (主任研究員)
北海道立衛生研究所 神和夫 (主任研究員)

日本や発展途上国などで採集した野生生物 (は虫類、鳥類) を試料として棲息環境 (捕食者、被捕食者、気候変化など) の調査、体内の浮遊性プラスチックの有無、鉛等の重金属や内分泌攪乱物質とされる物質の体内濃度等を詳細に調査し、その現象の主因が外因性内分泌攪乱物質であるかどうかを明らかとする。
2. ヒトにおける内分泌攪乱の実態の解明
2-1. 性腺・精巣組織における内分泌攪乱の実態の解明
環境庁国立環境研究所 森田 昌敏 (統括研究官)
東京大学 医学部産婦人科 堤 治 (教授)
帝京大学 医学部泌尿器科 梅田 隆 (教授)
京都大学 医学部 森 千里 (助教授)
自治医科大学 医学部 香山 不二雄 (助教授)
産業医科大学 医学部 川本 俊弘 (教授)

ヒトの精巣組織の組織像及び機能が内分泌攪乱物質によって影響を受けているか否かについて科学的知見の集積をする。また、ヒトの女性生殖組織についても、海外等のデータを収集し、情報の集積を行う。

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