科学技術庁振興調整費
生活・社会基盤研究のうちの生活者ニーズ対応研究
「内分泌攪乱物質による生殖への影響とその作用機構に関する研究」


1. (内分泌攪乱物質による生殖への影響)
 現代の我々の生活環境中にはきわめて多くの化学物質が存在している。そのうちのいくつかは、例えば、性ホルモンと類似の構造を持つためホルモン受容体に誤って結合し、ホルモン活性を異常に高めるなどの影響を及ぼすことが知られている。また、薬物代謝酵素の誘導や酵素活性の阻害などによる物質代謝の攪乱、免疫系の阻害、発がん作用などの影響も及ぼすことが知られている。こうした一群の物質は内分泌攪乱物質 (endocrine disruptors; 環境ホルモン) と呼ばれ、近年のヒトの女性における乳がんの発生率の上昇や男性の精子数の減少、あるいはある種の野生生物における生殖機能障害がこうした内分泌攪乱物質によって引き起こされている可能性があるとの指摘があり、内分泌攪乱物質による生殖への影響の研究の推進は重要である。

2. (内分泌攪乱物質の作用機構に関する研究の持つ意義)
 内分泌攪乱物質の環境中濃度の把握や人を含むさまざまな生物への影響に関する研究は世界的に見ても乏しく、それによる生体影響の評価を総合的に試みるに至っていない。内分泌攪乱物質を早期に見いだし、それらによる影響を評価し、その影響を未然に防ぐ上で必要な対策を講じるためには、その基礎となる多くの研究が必要不可欠である。また、内分泌系の攪乱は、生殖器官及び機能に影響を与えるばかりでなく、その根本の生体分子の反応機構において免疫系、神経系への影響や発がんのメカニズムと重なり合う部分が少なくなく、本研究において得られる知見は生命科学の他分野にも貢献することが出来るという点でも必要性がある。また、本テーマは多くの物質がかかわり、その影響が特に生物に世代を越えて及ぶことなど非常に大きな広がりをもっており、長期的な多分野にまたがる取り組みが不可欠な課題である。

3. (研究のねらい)
 本研究は、内分泌攪乱物質とその生体影響を高感度に検出できる計測手法を開発し、またその影響の発現メカニズムを分子レベルで解明することを通じて、内分泌攪乱物質が人、及び地球上に住む生物種の存続に与えるであろう影響の実態とその意味を明らかにしようとするものである。更に、社会的な関心事となりつつある内分泌攪乱問題について、求められる行政施策や対策技術上の基礎となる知見の集積を得つつ、危険の未然防止のために化学物質の評価手法を確立することを目的として総合的に研究を実施する。

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