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生物多様性セミナー 2006年1月

遺伝子組換え微生物の環境影響評価

岩崎 一弘(分子生態影響評価研究チーム)


 遺伝子組換え微生物の影響評価に関する重要な研究課題としては、1)環境中に 導入する組換え微生物の挙動、2)組換え遺伝子の環境中での流動、3)生態系への 影響に大別される。演者が「生物多様性研究プロジェクト」で担当する内容は、プロジェクト開始時には明確に決まっていなかったのではあるが、とりあえず1)に関 しての課題として環境中に導入した微生物のモニタリング手法について検討した。組 換え微生物を扱う上で特にその遺伝子を追跡することが重要であること、また微生物 生態の解析に分子生物学的手法が適用されつつあったこと等から、定量的PCR法に よる特定微生物の迅速検出法の開発を試みた。その結果、従来の培養法では1ヶ月以 上の培養期間と多数の検体数を必要としていた微生物を数時間、数本のマイクロ チューブで定量可能となった。さらに微生物の数だけではなく活性を評価するために、この手法を発展させて特定遺伝子にmRNAの定量法も開発することができた。

 また、プロジェクト後半では3)に関する研究課題で推進費を始めることがで き、組換え微生物の微生物多様性に及ぼす影響評価に関する研究を実施した。微生物生 態系は、高等生物・植物でのそれと比べて生態系の構成メンバーが未だ明らかには なっておらず、その検出法も十分ではなく現在開発されつつあるのが現状である。従って、まだ明確な結論は出せてはいないが、微生物生態系の詳細な遺伝子解析を行っ た結果では、組換え微生物の接種によって微生物多様性が大きく変動することは観察 されなかった。今年度で推進費は終了するが、演者は現在、組換え微生物の環境影響 評価に関する専門委員会等に関係しており、今後もこの分野での研究を進めていく必 要があると感じている。